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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十四章
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2話 エリ・エリ・レマ・サバクタニ

 そろそろダークエルフの島から出発することにして、その前に新しい豪華客船を購入することにした。購入については創造神様に誑かされているような気がしてとても心配だが、どうせ買うなら美女達とのショッピングを全力で満喫したいと思います。


 ……美女達との楽しいショッピング、そんな幸せな夢を見ていました。 


 創造神様、これは創造神様の罠なのですか? この状況を見てケタケタ笑っておられるのですか?


 もし違うのであれば、この哀れな子羊をお救いください。


 ***


 最初は本当に楽しかったのです。


「ワタル、この船はどこが魅力的なの?」


「あぁ、その船はですね……」


「あら、こっちの船も素敵じゃない?」


「それもいいですね。でもそれならこっちも良いかもしれませんよ」


 こんなふうに楽しく会話をしながら、美女と一緒にそれほど大きくない船購入画面をのぞき込んで会話を交わす。


 なんといえばいいのか……お酒は入っていないが、超絶美女が代わる代わる両隣に座って密着状態で楽しくお話ができるキャバクラ、いや高級クラブ? そんな感じで幸せでした。とても幸せでした。


 もしお店だったとしたら、高いお酒をガンガンにオーダーして常連客になること間違いなしです。太客です。お大尽です。


 でも、そんな幸せな時間は長くは続きませんでした。


 僕は愚かにも何も気がつかずに崩壊の引き金を引いてしまいます。そろそろどの豪華客船を買うか絞り込みましょうと……。


 この言葉を端に発して、僕は窮地に追い込まれます。


 原因は、僕が八方美人をしていたからです。


 イネス、フェリシア、ジラソーレ、それぞれに気に入った豪華客船があり、そして、それぞれに対して僕は、素晴らしいですねとか、僕も気に入りましたとか、好意的な評価をバラまいてしまいました。そう、全員に言質を取られていたのです。


 その言質が購入する豪華客船を絞り込む段階になると足を引っ張り始めます。


 なにせ購入するのは僕ですから僕の意見は重要な訳で、そして、破局がおとずれてしまいます。


 八方美人で高評価をバラまいていたツケが回収される時間がやってきてしまったのです。


 でも、一つだけ言わせてください。


 しかたがなかった。しかたがなかったのです。


 だって両隣に密着状態で超絶美女が座っているんですよ?


 超絶美女の笑顔が急接近ですし、いい匂いがしますし、吐息だって生々しく聞こえます。柔らかい宝物がフニョンと体に当たることもあります。


 男なら、いや、漢だからこそ良い顔がしたいではないですか。


 そりゃあ世の中には純愛とか真実の愛とか、そんなことを言う人もいますよ? 僕には理解できませんけど!


 だって、モテたいじゃないですか。ハーレムだって作りたいじゃないですか。イチャイチャしながら堕落したふしだらな生活を堪能したいじゃないですか。


 日本に居た頃ならそんなことは妄想しても実現できるとは考えていませんでしたよ。でも、異世界、異世界に来ちゃったら夢を見るのもしょうがないことではありませんか?


 だから……だから……神よ……この哀れな子羊をお救いください……。


「ワタル、これだけ悩んだんだからそろそろ決まったかしら? ワタルはどの豪華客船が良いのかしら?」


 僕の祈りは届かず、アレシアさんが美しい顔に威圧感を漂わせながらゆっくりと近づいてくる。


 なぜ、なぜですか、なぜ創造神様は僕を見捨てたのですか。


 僕の救いを求める声が神界まで届かなかったとでも言うのですか? そんな訳ありませんよね?


 創造神様が知り合いが追い詰められて窮地に陥っている場面を見逃すなんて考えられないですから、絶対に見ていますよね?


 ちょっとでいいんです。降臨してください。それですべてが有耶無耶になって解決するんです。お願いします。降臨したらすぐに帰っていいですから!


「ワタル?」


 ……神は死んだ……


 ……まあ、普通に考えても、創造神様が僕を助けにくる訳なんか無いよね。だって、僕が追い詰められている方が面白そうって考えるタイプだもん。


 窮地に陥って思わず創造神様に助けを求めちゃったけど、助けを求める相手を間違えた僕が馬鹿だったんだ。


 助けを求めるなら光の神様が正解だった。でも、八方美人で陥った窮地で女神様に助けを求めるのは違うだろう。つまり、自分でなんとかするしかないってことだな。


 よかろう、僕も漢だ。この窮地、見事切り抜けてみせよう。


「……そうですね、ちょっと休憩にしましょう。どの豪華客船も魅力的なので決めきれないんです。高い買い物ですから慎重な決断が必要です。急いではいけません」  


 とりあえず時間稼ぎだ。創造神様に祈るなんて無駄な時間を費やしてしまったことに後悔がよぎるが、まだ終わったわけじゃない。


 幸い、今日中に決めないといけない訳でもないんだから、延期は可能だよね。


 畜生、僕が馬鹿だった。浮かれていたからしょうがないけど、そろそろ絞り込もうなんて考え無しのことを言わずに、あの素晴らしい時間を三日くらい続けたらよかったんだ。


「……そうね、たしかにパンを買うのとは訳が違うわよね。じゃあ、休憩にしましょうか。みんな、ワタルの意見が決まるまでワタルとの接触は禁止よ。抜け駆けして自分の意見を押し付けたりはしないように。ワタルは意見が決まるまでこの部屋から出ないようにね」


 えっ? 僕、隔離されるの?


「うふふ、抜け駆けなんか考えてもいなかったのだけど、そんな考えがすぐに思いつくなんて、アレシア、なにか企んでいたんじゃない?」


 イルマさん、アレシアさんを挑発しないで。なんか妖艶さに邪悪さが混入されて、男を破滅に追い込む魅惑の悪魔みたいになっていますよ。


「何も企んでないわよ。ただ、イルマ、あなたを警戒していただけ。なにせ、あなたが選んだ豪華客船が一番ワタルの反応が悪かったもの。なんとかしないと不利でしょう?」


 ……たしかにイルマさんが気に入った豪華客船は僕としては微妙だったな。アレシアさん、しっかり僕の反応を観察していたんだな。ちょっと大雑把な性格だと思っていたんだけど、意外と油断できないのか?


「うふふ。そんなことないわよ。だってワタルはとても嬉しそうに私が勧めた豪華客船のことを聞いてくれたもの。ねえ、ワタル、そうよね?」


「えっ? あぁ、はい、そうですね……」


「それは豪華客船に喜んだんじゃなくて、イルマの色気にヤラれただけでしょ」


 そのとおりです。


「ねえ、ご主人様。私が選んだ豪華客船を選んでくれたら、夜に沢山楽しいことをしてあげ、キャ! マリーナ、なにをするのよ!」


 沢山楽しいこと……。


「抜け駆けは駄目」


 珍しくマリーナさんがイネスを制止した。あんまり自分の意見を言うタイプの人じゃないんだけど、今回はふうちゃんと一緒に楽しそうにしていたから、結構気合が入っているようだ。困る。


「あー、もう、みんな部屋から出るわよ。ワタル、決まったら教えてちょうだい」


 場が治まらないと考えたのか、アレシアさんがみんなを押して無理矢理部屋から出ていった。


 ふー、美女達が部屋から出ていってホッとするのは初めてかもしれない。


 しかしあれだな、普段は全員が仲が良いから、こんなに意見が割れたのは初めてだな。安直な考えで豪華客船をえらんだら怖いことになりそうだから、しっかりと考えて選択しなければいけないな。


 えーっと、選択肢に出ている豪華客船は五隻だったな。全員の意見が別になって八隻の中から選ぶよりはマシだけど、できれば二隻か三隻くらいまでは意見を合わせてほしかった。満場一致なら最高だ。


「……はぁ、ぐだぐだ愚痴っていても仕方がないか。選ばないと終わらないもんな」


 楽しい船選びのはずだったのに……僕のバカ。


 えーっと、一つ目はキャッスル号の後継船。アレシアさん、イネス推し。


 キャッスル号と似たタイプだけあって、娯楽が充実していてかなり魅力的。しかも設備が進化している。


 ただ、キャッスル号と似ている部分があるだけに、キャッスル号がこちらに戻ってきた時がもったいない気がする。


 でも、かなり派手ではあるので、そういったタイプが好きなアレシアさんとイネスにはかなりの高評価。


 二つ目はご飯が美味しいらしい豪華客船。カーラさん推し。


 日本の豪華客船らしく、食事の面でかなり高評価。


 日本人の僕としてもかなり気になる豪華客船ではあるが、海外の船のような派手さはなく落ち着いた雰囲気。


 ある程度の娯楽はあるけど、みんなで遊ぶと考えるとクリス号との差別化が難しい。でも、高評価の食事はとても気になる。


 特にカーラさんが興味津々で、この豪華客船のご飯美味しいの? とクマミミをピコピコさせながら聞いてきた時は、鼻血が噴出しそうなくらいに魅力的だった。


 三つ目と四つ目はこれぞ豪華客船といったタイプ。ドロテアさん、マリーナさん、フェリシア、推し。


 どちらも豪華客船としての充実した設備が整っているが、造船した国が違っていてそれぞれに拘りがある。


 ただ、アーケードと舞台に力を入れていて、アーケードのLED天井は魅力的だけど、舞台はサポラビが主体になってしまうので惜しい。といったように一長一短があって悩ましい。


 ドロテアさんとマリーナさんは、それぞれの従魔スライムの意見に流されている。


 フェリシアはこの豪華客船が気に入ったこともあるが、どうせなら今までの豪華客船とは違うタイプが良いとの考えらしい。


 五つ目は大人の雰囲気の豪華客船。イルマさん推し。


 設備に拘り美術品も多彩な豪華客船で、蔵書が豊富。


 正直、僕としては微妙。イルマさんの一押しだけど、たぶん、蔵書の数に魅かれているだけだと思う。


 でも、この豪華客船を選んだらイルマさんに思いっきり褒めてもらえそうで魅力的ではある。


 クラレッタさんは推しがまだ決まっていない。食事とクレーンゲームの狭間でゆらゆらと揺れている。


「あー、もう、どれを選べば正解なのかがサッパリ分からん! どうしろと? 僕にどうしろと? いっそのこと全部買っちゃうか? 金ならあるぞ、たっぷりとだ!」


 美女達全員に褒められたい。美女達全員の笑顔が見たい。ならもう……。


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] そう言えば中国の空母遼寧は最初カジノ船にするとかが表向きを理由だったね、豪華客船の欄に空母遼寧がテヘペロって有ったら面白かった(笑)
[一言] きっと創造神様が笑い転げながら見ている。
[一言] サブタイ、この主人公の場合は欲望まみれの嘆きだから酷すぎるw
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