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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十三章 ダークエルフの島の発展
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12話 因果応報

申し訳ありません。更新が遅れました。

 カリャリの港で手間取ったものの、無事にキャッスル号に乗船してカミーユさんとの話し合いも終了した。しかし、軍港なのに臨時の港を設けるほど人気になるとは……豪華客船って改めて凄いなって思う。まあ、その凄い豪華客船の被害者? が目の前に居るんだけど……。


「アレシア、そんなに食べて大丈夫ですか?」


 おぉ、僕が怖くてツッコメなかったところにフェリシアが切り込んだ。


 ヤケ食いなのは分かっているけど、さすがに連続でドーナツを食べまくられたら心配になるよね。もうすぐ二桁突破の勢いだもん。


 見ているだけで口の中が甘ったるい。


「これくらい大丈夫よ。でも、悔しいわ。あのイネスの勝ち誇った目……ワタル! あの子、調子に乗っているわよ。ご主人様なんだから懲らしめてあげなさい」


 ……甘いものをヤケ食いして放心状態からは抜け出したようだけど、今度は怒りが湧いてきたらしい。


 懲らしめてあげなさいって、どこのご老公ですか?


「えーっと……懲らしめるって、イネスが何か失礼なことを?」


 たしかにイネスは奴隷の身分だけど、アレシアさんはそんなこと気にせずに付き合っていたはずだ。


 そのアレシアさんの許容範囲を超えるくらいの失礼をイネスがしたってこと? イネスはあんな性格でも要領は良いから、そこまで酷いことをするとは思えないんだけど……。


「イネスは言ったのよ! Aランク(笑)って! カッコ笑いって何よ。意味が分からないけど、言った時の顔も合わせてものすごくムカついたわ!」


 あー、うん、想像以上にくだらなかったな。


 イネスって僕と一緒に日本のサブカルチャーに浸っているから、妙な言葉も学習しちゃっている。それが悪い方向に出てしまったようだ。


 (笑)って、日本だと結構古い使い方な気がするけど、こっちだと最先端の煽りになるのか? そもそも(笑)って煽り文句だったっけ?


「……えーっと……イネスにはよく言っておきます?」


「お願いね!」


 そう言ったアレシアさんが再びヤケ食いを始めた。文句を言って少しスッキリした顔はしているけど、食べるのは止めないんだな。


 しかしなんて言おう? 叱る程のことでもないし……アレシアさんのプライドを傷つけちゃっているから、謝るように言えばいいのか?


 これくらいで謝るように言うのは違う気もするけど、くだらないことを引きずって船内がギスギスするのも困るもんな。


 まあ、イネスもカジノで大勝しているみたいだし、勝者の余裕で上手に謝ってくれると信じよう。


 おっ、ドロテアさん発見! べにちゃんにお菓子を与えながら楽しそうに歩いている。美女とスライムのデート……悪くないな。


 でもごめんなさい。邪魔します。


 手を振ってドロテアさんにアピールすると、こちらに気がついて近づいて来てくれた。


「ワタル。もうカミーユとの話し合いは終わったんですか?」


「はい、終わりました。泊まる部屋も用意してくれましたので、後でご案内しますね」


「分かりました。それで、アレシアはどうしたんですか?」


 アレシアさん? なるほど、自分達のリーダーがブツブツ文句を言いながらドーナツを次々と口に詰め込んでいたら気になるのは当然だよね。


「あぁ、ヤケ食い中みたいです」 


 アレシアさんが不機嫌な理由をかくかくしかじかと説明し、慰めてあげるようにお願いした……んだけど、ドロテアさんの顔の表情が消えていくにつれて、失敗したことを悟る。


 これは間違いなく怒っている。なるほど、よく考えなくても自分達のリーダーがカジノでボロ負けしてヤケ食いしていたら、ちょっと嫌だよね。


 しかも、戦争の時に僕に依頼するために全財産を差し出して、公爵城の財宝で一息ついたところだから、無駄遣いには文句も言いたくなるだろう。


 ぬかった。このワタルの目(節穴)をもってしても、この展開は見抜けなかった。


「えーっとドロテア、財宝を換金しおわったらすぐに問題はなくなるんですし、そんなに怒らなくてもいいと思います」


 慌てて、ドロテアさんの様子に気がついてガクブルなアレシアさんのフォローをする。このままだと、先生にチクったみたいでアレシアさんからの好感度が下がってしまう。


「それとこれとは話が別です。ワタル、少しアレシアと二人にしてもらえますか? べにちゃんをよろしくお願いします」


「あっ、はい。では、失礼します」


 反射的にべにちゃんを受け取って席を立つ。べにちゃんを僕に任せる時点でドロテアさんの本気を感じるな。


 アレシアさんがすがりつくような目で僕を見ているけど、気がつかなかったふりをする。すみませんアレシアさん。僕は無力なんです。


「フェリシア。リムとペントをお願いしているし、次はカーラさんを探そうか」


「そうですね。それが良いと思います」


 べにちゃんのモチモチプルプルを堪能しながら、フェリシアと頷きあって足早に危険地帯を脱出する。


 ***


 カーラさんはメインダイニングでクラレッタさんと一緒のところを発見できた。久しぶりのキャッスル号の料理を堪能出来てご機嫌な様子だけど、あれだね、リムはともかくペントを連れてきたのは不味かったかもしれない。周囲のお客さんから距離を取られてしまっている。


 ペントも慣れると可愛いんだけど、慣れていないと巨大な蛇に見えるもんね。まだ、赤ちゃんなのに……。


 今はまだなんとか連れて移動できるけど、大きくなったらどうするのかも考えておかないといけないだろう。


 船に泳いでついてくる……いくらシーサーペントといえども、外海には沢山の魔物が居るし、集団で襲われたら怪我とかしちゃいそうだよね。


 ペントはアンネマリー王女や人魚達にも懐いているし、大きくなったら人魚の拠点に家を作るか?


 ……まあ、追々考えることにしよう。なんとなくだけど、僕達と一緒に居たら外海でも無敵になりそうだよね。


「カーラ、クラレッタ。リムとペントを預かってもらってありがとうございます。問題はありませんでしたか?」


「リムちゃんとペントちゃん、とっても良い子でしたからなんの問題もありませんでしたよ。ちょっとだけ周囲を驚かせてしまいましたが」


「一緒にご飯食べるの、楽しい」


 クラレッタさんは周囲の状況もきちんと把握しているみたいだな。料理を食べているテーブルも隅っこを選択しているし、色々と気を使ってもらったようだ。


 カーラさんはアレだな。気がついていない訳じゃないだろうが、周囲の視線よりもご飯の方が重要って感じだな。




「では、僕達は船内を散歩しながらマリーナとイルマを探してきます。カーラとクラレッタはどうします?」


 軽く料理をつまみながら、簡単にカミーユさんとの話し合いの内容や今日の泊まる場所を伝えたあと、次の行動を聞いてみる。


 美女二人を加えて、ハーレム状態でキャッスル号を練り歩きたいなんて下心は微塵もないよ?


「次はデザートを食べる」


 キッパリと断言するカーラさん。それを見て苦笑いしながら頷くクラレッタさん。下心は微塵もなかったけど、一緒に練り歩くことはできないようだ。


「そうですか。ではまた後で。リム、ペント、行くよ」


『……でざーとたべる……』


 リムからのまさかの回答。


 自分の意志をしっかり持ち、アクティブに動き回るようになったリムの成長はとても嬉しいんだけど、断られるととても悲しい。


 普段からカーラさんと一緒に食べ歩きをよくしているからその延長なんだろうけど、今までは行くよって言ったらついて来てくれていた。


 ……リム……親離れが早くない?


「あはは……リムちゃんとペントちゃんが満足したら、合流しますね。べにちゃんも任せてください」


 僕が固まってしまったことで状況を理解したのか、クラレッタさんがリムとペント、べにちゃんの面倒を請け負ってくれた。


「……ありがとうございます」


 クラレッタさんの心遣いに、なんとか笑顔でお礼を言ってメインダイニングを出る。


「……フェリシア。これからもっとリムを甘やかそうと思う。もっと一緒にご飯を食べて、もっと一緒にお菓子を食べて、一緒に寝て、もっともっと、リムと一緒に居ようと思う」


 こんなに早いリムの親離れとか冗談じゃないよ。断固阻止だ!


「……ご主人様、構い過ぎると嫌われてしまいますよ?」


 うっ……たしかに猫とか構い過ぎると嫌がるって聞くけど、リムもそうなの? 嫌われちゃうの?


「じゃあ、どうすればいいの?」


「優しく見守ってあげるのが一番です。リムちゃんはご主人様のことが大好きですから」


 デザートに負けちゃったけどね。……でも、フェリシアの言うことも一理ある。


 心で泣こうとも表面上は大人な対応をして、リムから嫌われることを回避しよう。でも、おやつを増量するくらいは構わないよね?


 心の中で固い決意をした後、マリーナさんとイルマさんを探しに……あの二人、どこに居るんだろう? ちょっと想像がつかない。まあ、船内の施設を歩き回っていればいずれ出会うか。


 キャッスル号は大きな船だけど、それでも施設の数は限られているから大丈夫だろう。


 ***


「ねえ、フェリシア。あれ、どう思う?」


 マリーナさんとイルマさんには比較的アッサリと出会えた。マリーナさんはふうちゃんとジップラインを楽しんでいて、イルマさんはネイルサロンでまったりしていた。


「……そうですね。敗残兵と言ったところでしょうか?」


 それで、二人に必要事項を伝えてカジノにイネスの様子を見に来たんだけど……なんだかとってもデジャブ。


 カジノ近くのソファーでイネスが放心した様子で寝っ転がっている。


「えーっと、フェリシア。悪いけど、急いでアレシアを呼んできてくれる?」


「ご主人様……」


 フェリシアがそれはどうなのって目で僕を見るけど、これが一番手っ取り早いんだよ。今ならお互い様ってことにできるでしょ?


「お願い」


「分かりました」


 しばらくするとフェリシアに呼ばれたアレシアさんが笑顔で飛んできた。


 そして、呆けているイネスに向かって、(笑)をフル活用して話しかけるアレシアさん。笑顔がとても素敵です。


 あっ、イネスがキレて掴みかかった。警備スタッフに任命されていなかったら海に放りだされているところだな。


 でもまあなんでだろう? イネスがギャンブルで大勝しているよりも、負けて凹んでいる姿の方が落ち着く気がする。 


読んでくださってありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
[一言] >「では、僕達は船内を散歩しながらマリーナさんとイルマさんを探してきます。カーラさんとクラレッタさんはどうします?」 ここに訂正させる突っ込みはないのね
[一言] 丸く収まったね。 カミーユを連れ出していろいろと仲良くなりたいものだ。
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