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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第十二章 人魚の国
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2話 招待当日

 アクアマリン王国に戻り、イネスの家族と友人をクリス号に招待することにした。招待をすることを伝えに行ったイネスが、話を聞いて張り切ったベラさんに使われて大変そうではあったけど、ベラさん達も楽しみにしていてくれているようなので結果オーライということにしておこう。イネスの自業自得だしね。


 イネスと家族を招待するために、外海にクリス号を召喚したり、部屋割りを決めたりと準備をしていると、あっという間に約束の日がやってきた。


 イネスとも話し合い、ある程度はどのように案内するかを決めたんだけど、若干の不安がある。


 イネスの話ではベラさんとフローラさんのテンションがとても高いそうだ。まあ、ベラさんとフローラさんに何かあれば、美容関連の施設に放り込めば問題ないそうだから、そこまで大きな問題はないはずだ。


 イネスのお父さんに関しては、お酒と食べ物があれば満足してくれるらしく、ダリオ君は良い子だから放っておいてもいいらしい。男の立場が低すぎるな。


 まあ、結局はイネスの家族と友人なんだし、失敗しても大した問題にはならないんだ。リラックスして僕も楽しもう。


「えーっと……おはようございます。お待たせしてしまいましたか?」


 約束の朝8時に遅れないように、少し早めに合流場所のルト号の前に移動すると、すでにベラさん達が笑顔で待機していた。まだ7時30分くらいだよね?


 約束の時間を間違えたのかとイネスを見ると、あきれたような視線で自分の家族と友人を見ている。どうやらこちらにミスはないようだ。


「うふふ。楽しみで早く来ちゃいました。ワタルさん、ごめんなさい」


 遠足前の子供の行動だ! なんだかたとっても可愛らしくてドキッとしちゃったけど、この人、イネスのお母さんで人妻なんだよね。異世界って凄い。


「もう!」


 僕が異世界の脅威に打ち震えていると、イネスが自分の家族と友人に突(つ)っかかっていった。


 恥ずかしいとか大人としての行動をとか色々と文句を言っているが、全部イネス自身にも当てはまる内容で、聞いている僕やアレシアさん達も顔を合わせてニヤニヤしてしまう。家族って似るんだね。


 イネスのお父さんとダリオ君が、申し訳なさそうに僕に頭を下げるが、これはこれで楽しいので僕的にはなんの問題もない。


「ちょっとご主人様。笑ってないで出発するわよ」


 僕達が優しく見守っていることに気がついたイネスが、顔を赤らめながら出発を促してくる。そのイネスの言葉に、ベラさんが自分のご主人様に対する態度ではないと注意をするから、てんやわんやの状態になっている。


 色々とハプニングはありそうだけど、なんだか楽しい4日間になりそうな気がするな。


 ***


「ふふん。これがご主人様の実力よ! 分かった? 私が奴隷からの解放を望まないのも当然のことなのよ。もう、お説教は受け付けないからね。私を可哀想な目で見るのも禁止よ!」


 ルト号のデッキからクリス号を見て言葉を失っているベラさん達に、ここぞとばかりにイネスが好き勝手言っている。


 僕と奴隷契約した時は、豪華客船どころかフェリーすら購入していなかったのに、よくもまあ、あそこまで強気に出られるものだ。ああいうイネスの性格って、少しだけうらやましいな。


「ワタルさん。あの船……船? ……に乗るんですか?」


 そんなイネスを完璧に無視して、ベラさんが僕に話しかけてくる。なぜ船にクエッションマークを付けるのかが疑問だけど、大きすぎて船だと理解できないのかもしれない。


 江戸時代に黒船が来訪した時にも、そんな感じで混乱があったって聞いたことがある気がする。


「はい。イネスから大きな船だって聞いていませんでしたか?」


「いえ、聞いてはいたのですが、想像よりも大きかったので……」


 呆然とした表情で再び船を見上げるベラさん。イネスもフェリシアもアレシアさん達も船の大きさにはすっかり慣れてしまって、ぜんぜん驚いてくれなくなったから、ベラさん達のこの反応は地味に嬉しい。


「じゃあ、そろそろ乗り込みましょうか」


 呆然とするベラさん達の反応をしっかり楽しんだ後、ルト号を移動させてタラップからクリス号に乗り込む。


 クリス号に驚いてもらうために、ルト号の船内もこちらの船に合わせて偽装しておいたから、また驚いてくれるはずだ。


「広い……」


 タラップからデッキに出ると、計画通りベラさん達から驚きの声が漏れる。


「何この子、可愛い!」


 クリス号の驚きに呑まれていたはずのフローラさんが、そばで待機していたサポラビに気がついて声を上げた。


 どうやらサポラビの可愛さに魅了されたのか、視線はサポラビに釘付けで手をワキワキとさせている。このサポラビが角兎の魂から出来ているって言ったら、どういう反応をするんだろう? まあ、言えないけどね。


「あら、兎かしら? 本当に可愛いわね」


 フローラさんの声に反応したベラさんも、サポラビをマジマジと観察している。キャッスル号に遊びに来る貴族の奥方やお嬢さん達にもサポラビは人気のようだし、動く巨大なぬいぐるみのような姿は、女性の琴線に触れるんだろうな。


 本当なら船内の様子にもっと驚いてほしかったけど、それは後のお楽しみにしておくか。


「この子はサポラビと言って、この船の船員です。みなさんのサポートも仕事ですから、困ったことがあったら話しかけてください。たいていのことは解決してくれますよ」


「さ、さわってもいいんですか?」


 結構ビックリするようなことを説明したはずなんだけど、フローラさんからは僕が思っていたのとは違う反応が返ってきた。船員ってところは驚くポイントじゃなかったんだろうか?


「ええ、乱暴にしなければ大丈夫です」


「……抱き着いたりしても?」


 そんなにおそるおそる質問しなければいけない内容ではないと思う。


「ええ、構いませんよ」


 僕の言葉でキャーっと声を上げてサポラビに抱き着くフローラさん。年頃のお嬢さんがデレデレにトロけた顔を晒しているんだけど、大丈夫なんだろうか? いや、これはこれで色っぽいからありなのかもしれない。少なくとも僕は好きだ。


「ふふ。フローラ。すごいでしょ。私なんか専属のサポラビも居るのよ。いつもそのサポラビ達に囲まれて、お姫様のような暮らしをしているわ」


 イネスが堂々とウソをつきながら、フローラさんに対してマウントを取っている。


 たしかにイネスにも専属のサポラビは居るけど、運んでいるのはたいていがお酒やおつまみだし、生活もお姫様と言うよりもおっさんに近い暮らしをしているよね。


 イネスってそこまで見栄にはこだわらない性格だと思っていたけど、家族や昔からの友達相手だと違うらしい。


 サポラビに抱き着きながらも、悔しそうな顔をしているフローラさんを、満面の笑みで見下ろしている。友達をなくしてしまわないかが、とても心配だ。


「ワタルさん。私もこの船に住まわせてください!」


 ……なんでそうなるんだ? いや、自慢の船だし、船内を案内してから言われるのなら納得もできるんだけど、サポラビだけでこの反応は予想外だ。それに、リムの方が断然可愛いよね。創造神様は大丈夫だって言っていたけど、サポラビにはいずれ角で刺されそうで怖い。


「いや、それは難しいですね」


 フローラさんがクリス号に住んでしまったら、送還もできなくなるし色々と面倒になるから無理だ。


「そんなー」


 そんなに悲しそうな顔をされても無理なものは無理なんだから困る。


「それに、僕はこの国にずっといる訳ではありませんから、クリス号に住むと仕事がなくなりますよ?」


「この船にお仕事はないんですか?」


 そういう返事は予想外だったな。商業ギルドでカミーユさんを引き抜いた時は、もっといろいろ大変だったけど、冒険者ギルドの受付嬢は、そんなに魅力がない仕事なのか? 


 うーん、でも、キャッスル号で仕事をしてもらうのなら、有と言えば有だな。カミーユさんも人手が足りてないって言っていたから、即戦力になりそうなフローラさんなら喜ぶだろう。


 イネスも友達と頻繁に会えるのなら、それはそれで嬉しいよね。マウントを取っていたけど。


 でも、まあ、今はサポラビに目がくらんでいるだけの状態だし、故郷を離れる選択になるんだから、そんなに簡単な話でもないか。


「フローラさん。この船にはフローラさんの仕事はありません」


 ものすごくショックを受けた顔をしている。わずか数分触れあっただけのサポラビをそんなに気にいったのか?


「ですが、サポラビと一緒に働ける職場を紹介することはできなくもありません。ただ、そうなるとアクアマリン王国からは離れることになります。この船をしっかり満喫した後、イネスから詳しく話を聞いてみてください。じっくり考えてそれでも働きたいというのであれば、紹介しますね」


「ありがとうございます。イネスから詳しく聞いてみますね」


 ショックの表情から一転、希望に満ち溢れた表情でイネスに話しかけるフローラさん。船を満喫した後にって言ったんだけど、聞いてなかったのかな? でも、先ほどまでは優越感に満ち溢れた表情のイネスが、今は困った表情になっていて、少し面白い。


 まあ、予定外のスカウトだけど、成功確率は半々って感じかな。あとはイネスがどうにかするだろう。親友を不幸にする選択はしないはずだ。


 僕としては美人が身近に増えるのは大歓迎だから、キャッスル号で働いてくれる選択を選んでくれたら嬉しいな。


「ご主人様。ダリオさん達がお困りです」


 スカウト活動にちょっと満足していると、フェリシアが話しかけてきた。


 ……なるほど、イネスと話をしているフローラさんはやる気満々だし、ベラさんはフローラさんから離れたサポラビをシレっと抱きしめて満足そうだが、イネスのお父さんとダリオ君は少し手持無沙汰のようだ。ホストとしては失格だな。


「では、そろそろ船内をご案内しますね」


 キャッスル号に比べると娯楽の面では見どころが少ないが、それでも自慢の豪華客船だ。たっぷりと満足してもらって、イネスの株を上昇させておこう。


申し訳ありません。神様達の招待イベントと、イネスの家族の招待イベント等の日程でミスが発覚しました。混乱するような内容になり申し訳ありません。


時間ができたら修正する予定ですが、今は少し余裕がないので先になると思います。


読んでくださってありがとうございます。

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