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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第九章
208/619

31話 セレモニーと一区切り

 いよいよキャッスル号の開放セレモニーだ。朝から引っ切り無しに魔導船や帆船が、遠目だが港から見える位置に移動したキャッスル号に到着して、乗り込んで来る。


 チケットは商業ギルドのおっさんが乗船客の名簿を持って来て、チケットを発行するだけなので、こちらの手間はかなり少ない。おっさんも見学がてらこの船に来たそうで、次からは職員が来るそうだ。


 チケットの発行や部屋の管理はドナテッラさんの仕事なはずだったのに、ほぼおっさんに丸投げしたので、ドナテッラさんにはクルーズディレクターも兼任してもらう事にした。


 カミーユさんが前日からスパでピカピカに磨き上げた肢体と、ジュエリーショップで買ったアクセサリーで飾ったドレス姿でお客様を出迎える。元から美人だけど本気を出すと更に凄いな。


 お客様に挨拶をすると、そのお客様を部屋付きのサポラビが部屋まで案内する。初めて見るとギョッとするが女性受けの良い見た目らしく、何故か奥様方と手を繋いで案内している姿を見かける。


 部屋付きのサポラビはお客様の要求に出来るだけこたえる形だが、部屋のランクが上がる毎にサポラビの衣装がより豪華になっている。


 パーティーは夜からなので、はやめに来たお客様は時間まで部屋でくつろぐか、船内を散策するのだが、この船の情報を仕入れていた女性陣はさっそく、スパかビューティーサロンに殺到しているそうだ。


 男性陣も軽くお酒を飲んだり、食事をしたりと自由に談笑している。意外とドーナツを気に入って、食べている男性陣が多いのが面白い。この世界には甘い物が好きなのが男として、何となく恥ずかしいみたいな風潮が無いからだろう。


「ふー、これでリスト全員が来られました」


 笑顔のまま顔が固まったのか、周りから見られないように顔を解しながらカミーユさんが話しかけて来た。


「もうですか? 昼を少し過ぎた位ですけど、全員集まるなんて凄いですね」


「ふふ、そうですね。招待された方も、カリャリの街に来てみると貴族様方だけでなく王太子様までいらしていて、驚いたそうですから、何とか良い人脈を築こうと早めにいらしたみたいですね」


「まあ、そうなんですかね? この船を歩いている方達は王侯貴族に豪商ぐらいらしいですから、誰と仲良くなってもいい出会いになりそうですよね」


 僕的には性格が悪そうな人達の集まりな気がするから、避けるけど。


「ええ、特に王太子様の参加が効いてますね。マウロさんが招待を断って来た人達が、後悔するだろうと喜んでました」


 マウロさんも良い性格してるよね。息子さんもしっかりと呼び寄せてたし、抜け目がない。


「あはは、マウロさんらしいですね。それでカミーユさんはこれからどうするんですか?」


「そうですね、少し休憩する時間を頂いて、パーティーの時間までは船内の見回りと準備ですね。ワタルさんはどうされます?」


「んー、僕も船内を見て回って来ます。人が沢山なのは初めてですからね」


 神様が沢山なのは体験してるんだけどね。あんまり変わらない気もするけど……文句を言われても逆らえるからこっちの方が気楽だ。神様方だと逃げの一手だからな。


「ふふ、しっかり見回りお願いしますね」


「はは、頑張ります」


 見て回るだけのつもりだったけど、見回りに昇格してしまった。揉め事とかが起こらないと良いんだけどね。……警備のスタッフもそんなに人数がいる訳でもないから、平和にお願いします。


「ご主人様、何処から見て回るの?」


「うーん、ロイヤルプロムナードかな。たぶんあそこに人が集まってるよ」


「ワタルさん、私達を警備スタッフに任命してくれれば、分かれて見回って来るけどどうする?」


「それは助かります。ここでは目立つので、そこの部屋に入りましょうか」


 未使用の部屋に入って、ジラソーレを警備スタッフに任命する。頼りになるな。ジラソーレと別れて騒がしい船内を見て回る。


 どこに行っても興味津々でスタッフに説明を求める人がいて、貴族も商人も売り物でない物まで、購入しようとしている。特にロイヤルプロムナードのクラシックカーの周りには人だかりが出来ていた。


 魔導車じゃないよと言いたいが、そう言う訳にもいかないのが面倒だ。魔導士様の持ち物で押し通すしか無いだろうな。


 ロイヤルプロムナードのお店はどこも盛況だな。マウロさんが利益を乗せているから、どれだけ儲かるのか想像もつかない。ライジングタイドバーではしゃいでいる男性陣は見なかった事にして、次に行くか。


 ボードウォークでは見回りをしているはずのカーラさんが、ハンバーガーを食べていた……食べながらでも監視は出来るから大丈夫なんだよね? 

 

 スパの周辺は女性陣が姦しい。明日も必ず来るとか聞こえてるし、好評なんだろうな。


「一通り見て回ったしパーティーまで部屋で休もうか」


「はい、分かりました」


 部屋に戻り、まったりする。今まで一番いい部屋だったからランクが落ちた形になるんだけど、正直こっちの方が落ち着く。狭いと安心するのは悲しいな。儲ける事が出来るようになっても、性根が成長しないと駄目なのか。


「ご主人様、この部屋からの眺めも面白いわよ」


「ん? そう?」


 イネスの言葉に釣られて外を見ると下にはボードウォークが見える。意外とメリーゴーランドに人が集まっている。さっきは人がいなかったのにな。海側の部屋を利用していたから、船内が見える部屋もなかなか面白いな。



 ………………



 パーティーの時間が来たので着替えてパーティー会場に向かう。最初はこの世界に合わせてダンスホールに料理を用意しようとしたが、クルーズディレクターの知識を得たドナテッラさんがキャッスル号ならではのパーティーが良いとアイデアを出してくれた。


 僕は燕尾服、イネスとフェリシアはドレスを身にまといロイヤルプロムナードに向かう。ラフでカジュアルなパーティーが良いと言ったが、王侯貴族が参加する一発目のパーティーが、気楽な感じのパーティーだと不味いらしい。


 まあ、今回のセレモニーが終われば、キャッスル号から離れる予定だから、今回位はしっかりパーティーに参加しよう。


 ロイヤルプロムナードに到着すると、少し遅れたのか、かなりの人がお酒を飲みながら談笑している。会場は様々なネオンで昔のニューヨークの街並みが照らされ、怪しくもカッコいい雰囲気だ。


 特に天井が、様々な色に光る事に、皆食い付いている。両サイドにはこの船の総力を挙げたご馳走とお酒が並び、パーティーとか面倒だと思っていたがワクワクして来た。


 おっ、ジラソーレのメンバーだ。みんなこの船で手に入れたドレスを着ている。似合ってるな。女性のお客様は自慢のドレスで参加されているので、この船のドレスだと雰囲気が違って目立っている。


 でもドロテアさんとマリーナさんの頭の上に陣取っているふうちゃんとべにちゃんが一番目立っている……僕の頭の上にもリムがいるし、目立っているんだろうな。……今更か。


 しかし、会場に居る男性も女性もこれでもかってほど着飾っている。燕尾服なんてまったく目立たない。これならリムがいても大丈夫なはずだ。おっ、あっちには王太子様が居るな。孤児院の事は問題無いんだ。わざわざ会う必要も無い。あっちには近づかないようにしよう。


 暫くすると会場が暗くなり、周囲がざわつきだすが舞台にスポットライトが当たり、カミーユさんが照らし出される。美人だし華があるよね。


「皆さま、キャッスル号の開放セレモニーにいらしてくださりありがとうございます。この船の責任者のカミーユと申します。ささやかながら歓迎の宴をご用意致しましたので、お楽しみいただければ幸いです」


 カミーユさんの挨拶が続き、王太子様にバトンタッチして乾杯の音頭を取って貰う。王太子様が乾杯の音頭を取るのか? なんでだ? 一番偉い人が乾杯するのか? よく分からないが王太子様の乾杯の音頭と共にお酒を飲む。 


 パーティーが開始され、お客様が様々に楽しみ始める。偉い人達ばかりなので料理に直行してガツガツと食い散らかす人などいない。ワイン片手に優雅に会話をしている。


 なんか領地の話とか商売の話とか、聞いていて楽しくない話ばかりだ。女性陣も宝石と美容の話だ。関わり辛い。


 まあいい、僕はご飯を食べながら時間が過ぎるのを待とう。カーラさんの隣に座ってリム、ふうちゃん、べにちゃんと共にご馳走に舌鼓を打つ。いつも食べているご飯だけど雰囲気が変わると違う味に感じるのが不思議だ。


 暫く経つと、様々なイベントが始まった。ビンゴ大会にライブ……なんか上流階級のパーティーではやらないイベントな気がするんだけど、ドナテッラさんの作戦なのかな? 盛り上がっているんだから間違っていないんだろう。


 何でも手に入るようなお金持ちばかりだけど、意外とビンゴで商品を手に入れるのは燃えるらしい。特に、一番早くトリプルビンゴを達成した人に、地竜が丸々1匹送られる事が発表されると、熱気はさらに上がった。


 まあ、送還するために切り分けられているんだけど、1匹で白金貨の価値がある。バブルの時代のビンゴみたいだな。ドナテッラさんいわく、インパクトが大事だそうで、商品が決定された。インパクトはあるよね。


 そしてライブでは、いつの間にかジラソーレがガールズバンドな格好でJポップな歌を熱唱しだした。いつの間にかって言っても僕がスタッフ任命したんだけどね。


 ドナテッラさんって、手堅いイメージがあったんだけど無茶をするな。邦楽が気に入ったらしいし、内面はノリがいい人なのかもしれない。ちょっとポカンとしているお客様方が心配だ。


 ライブが終わり、意外と新しい音楽に寛容なハイソな皆さまが、ライブの感想を言い合っている。この世界の音楽を聞いた事が無いから分からないが、意外と受け入れられているな。


「皆さんお疲れ様でした。なかなかの評判ですよ」


「ふふ、歌詞も伝わらないからどうなるのか心配だったけど、毎日カラオケで練習した甲斐があったわ」


 満足そうにアレシアさんが答えてくれる。カラオケ……映画と違って言葉が通じなかったから、偶に僕が利用するだけだったんだけど、バンドに任命すると理解可能だという事に驚いたな。このパーティの為に普段使用していなかった施設や役職が使われて、色んな発見があった。


「言葉が通じなくても、リズムやメロディーが琴線に触れたんでしょうね」


 僕も英語とかサッパリだけど洋楽も好きだし、そんな感覚なんだろうな。暫く雑談していると、ドナテッラさんが壇上に上がり、パレードの開催を宣言する。


 乗船客がロイヤルプロムナードの両サイドに移動すると、煌びやかな衣装を着た大量のサポラビが踊りながら行進してくる。未だに苦手意識があるサポラビだが、女性陣の意見では皆が喜ぶとの事なので、実行する事にした。


 踊りながら手を振って来るサポラビに、キャーキャー言いながら手を振り返している人もいる。男性陣は興味深そうに見ている人もいるが、概ね普通に観ているだけで、女性陣との反応の違いが顕著に表れた。


 サポラビだけでなく、女性にも参加してもらうべきだったかな? 僕だったらサンバの衣装を着た踊り子さんとかがいたら、かぶりつきで見学するもん。


 キャッスル号サンバカーニバル! 良いかも。孤児院もキャッスル号も人員を増やしていくそうだから、ドナテッラさんに頼んでおけばいずれ実現するかもしれない。楽しみだ。


 しかし、サポラビの何匹かが着ぐるみを被っているのが気になるな。バラエティが豊かな方が華やかになって良いのは分かるんだが、ぬいぐるみが着ぐるみを被って活動しているようで、訳が分からなくなる。


「フェリシアの目から見て、このパレードって楽しい?」


「はい、可愛いサポラビちゃんが、一生懸命踊って手を振っている姿は愛らしいです」


「……そう、それなら良かった」


 違和感があるのは僕だけみたいだな。評判が良いのなら僕の違和感なんてどうでも良いか。パレードが終わり、カミーユさんの簡単な挨拶で後はそれぞれの自由行動になった。


 意外と引き上げる人達は少なく、談笑しながら人脈を作っているみたいだ。マウロさんが飛びまわるようにお客様達と顔を繋いでいる。イキイキしてるな。


「僕達は引き上げますが、ジラソーレの皆さんはどうします?」


 偶に音楽関連? の人達から声を掛けられているジラソーレに話しかける。


「私達も引き上げるわ。ワタルさんが居るから残っていただけだしね。私達がワタルさんの護衛だってことを忘れないでね」


 ……忘れてました。


「それじゃあ、戻りましょうか」


 ロイヤルプロムナードから自室に戻り、窮屈な服を脱ぐ。慣れない服装って着てるだけでも肩が凝ってしまうな。部屋の狭いシャワー室で汗を流し、缶ビールを飲みながらリラックスする。


「ご主人様、私にもビールをちょうだい」


「いいよ、フェリシアはどうする?」


「私もお願いします」


 倉庫船を召喚して缶ビールを取り出し2人に渡し、リムにはオレンジジュースをあげる。


「プハー、ねえご主人様、キャッスル号はカミーユさん達に任せるんでしょ? これからどうするの?」


「そうだね、何事も無ければ、もう一度孤児院に顔を出して、ダークエルフを探しに行くかな?」


「じゃあ、前の生活に戻るのね」


「うん、孤児院を作ったり、偉い人に会ったり、向かない事ばっかりだったからね、暫くのんびりするよ」


「お金を沢山使わないといけないのはどうするの?」


「それも、のんびりしながら考えるよ。孤児院は今回作ってみて向いてないのが分かったからね。大規模で一度に大金を消費できる慈善事業を考えるつもりだよ」


 今後の予定を考えながら、やり切った思いで眠りにつく。

この後、数話閑話を書いて、話の中の時間を少し飛ばす予定です。引き続き読んで頂ければ幸いです。


誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
序盤の以外と男性陣もドーナツなどの甘い物が好きなようだ、とありますが、リアルの中世欧州の菓子はどれも砂糖の塊のような甘すぎる菓子ばかりで男性には人気なかったようです。 この異世界も甘未のらぱーとり…
[気になる点] 甘いものが好きな男が恥ずかしいて 今まで生きてきて感じた事ないですけど?
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