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めざせ豪華客船!!  作者: たむたむ
第九章
206/602

29話 根回しの必要性と子供達の到着

 地価が上がる情報を商業ギルドのおっさんに話そうとすると、商人組に隅っこに連れて行かれて囲まれた。


「ワタルさん、もしかして商業ギルドに何も話していないんですか?」


「えっ? 何もって? 孤児院を作るって話はしましたよ?」


(違います、キャッスル号を停泊させる事についてです)


 カミーユさんが小声で聞いて来る。


「何も言ってません」


 商人組が頭に手を当てて悩ましい表情をしている。何かやらかしたか?


「これはワシらの手落ちだの。挨拶に来た時も、契約の時にも、いくらでも確認する機会はあった。思えばギルドマスターも妙にのんびりしておったが、知らぬのなら当然じゃ」


 マウロさんがおっさんを見ながら言う。やっぱりあのおっさんがギルドマスターなんだな。 


「ワタルさん、キャッスル号の停泊は、大陸中に広がる話になるでしょう。そこに絡めていない商業ギルドはメンツをつぶされた形になってしまいます。商業ギルドに所属していた私が言うのもなんですが、機嫌を損ねると面倒な組織ですよ」


 うーん、そんなこと考えてなかった。商人組は僕が全部話を通していると思って、行動してたんだな。


「でも、商売なんですから秘密にしていても良いのでは?」


「秘密にする事は大事ですが、今回のように街に大きな影響を与える場合は、根回しが重要なんです」


「難しいんですね。取り敢えず秘密にしておけば良いと思ってました」


 商人組がため息を吐く。なんかすみません。うーん、今からで間に合うのか?


「今からで大丈夫ですか?」


「キャッスル号を開放してからに比べるとだいぶマシです。私達で話してきますね」


「お願いします」


 商人組がカウンターに向かい、おっさんに話しかける。こんな所で話して良いのかと思うが、誰もいないから良いんだろうな。


「なんだと」とか「おいおい、もっと早く言えよ」とか聞こえて来る。おっさん、ごめんね。


「ご主人様、どうしたの?」


「うん、キャッスル号の停泊って大事だから、根回ししておくべきだったみたいなんだ」


「でも、孤児院が出来るまで、どうなるのか分からないわよね?」


「うん、たぶんだけど、孤児院を発注した時辺りに言っておくべきだったんだと思う」


 ジラソーレもフェリシアもへーって顔で聞いてるから、商人のルールなんだろうな。


「ご主人様、カミーユさんが呼んでいます」


「ん? ああ、ありがとうフェリシア」


 なんか行きたくないけど、行かない訳にもいかないだろう。


「おう、商人の勉強をしておけよ。周りに聞く事も大事だからな」


 言葉も無いな。


「はい。ご迷惑をお掛けしました」


 でも、商売に手を出すとしたら胡椒だけにしよう。胡椒の貿易は僕の方が立場が強いから楽だ。商人組はもう少し話を詰めて行くそうなので、僕達は孤児院に行く。


 孤児院に到着して声を掛けると門番が重い鉄の扉を開いて出迎えてくれる。門番なんだから門の前に待機しておくべきなんだけど、暇すぎるらしいので農作業に加わって貰っている。


 子供達が来たら警備を含めて門に立ってもらうか。ただでさえ街に人が少なく、更に孤児院に訪ねて来る人は少ないけど、キャッスル号が停泊したら、人が来そうだからな。


「エルモさん、何か不都合はありませんか?」


「ご主人様、奴隷に敬語は不自然です」


 ああ、そうだったな。でもこう真面目そうなおじさん相手に、敬語を使わないのも違和感が半端無いんだよな。ジラソーレに敬語を使わないのもいまだに出来ないし、難しい。


「分かった。あとせめてワタル様にしてって言ったよね」


「申し訳ありません」


 女性にご主人様と呼ばれたら喜ぶ性癖だけど、男にご主人様と言われて喜ぶ性癖は持っていない。頑張って様付けが許容範囲内だ、さん付けが良かったけど、奴隷としての示しがつかないらしい。


「それでエルモ、何か不都合はなかった?」


「はい、何も問題は御座いません」


「そうなんだ、分かったありがとう。僕は中を見て回るから作業をお願いね」


「畏まりました」


 なんか商業ギルドのおっさんみたいなタイプの方が接しやすいな。畏まられると疲れる。まあ、立場を考えるとそんなに気軽に接する事は出来ないんだろうな。


 孤児院の中を見て回ると、箪笥の上に大量のぬいぐるみが並べてある。ここまであると夜とか怖そうだ。


 なんとかぬいぐるみや内装で武骨な雰囲気を中和出来た気がする。外に出て作業を手伝おうとしたが、物凄く気を使われたので早めに退散する。


 なんか、仲良くなれそうな雰囲気は無いな。イネスやフェリシアは元々護衛と、Hな関係も狙ってたから、話しやすかったけど、今回は人数が多くて僕との関係は主と奴隷って明確に線が引かれている感じだ。


 ルト号に戻っていると、おっさんが走って来た。カミーユさん達に何かあったか?


「おお、見つかって良かった。今、王太子様の使者がお前に会いに商業ギルドに来ているから来い」


 王太子様の使者か、そう言えば侯爵様がそんな事を言ってたよね。侯爵様を案内してからそんなに時間が経っていないのにもう来たのか?


 考えていてもしょうがないので、おっさんと一緒に商業ギルドに向かう。しかし、ギルドマスターが走って迎えに来るってどうなんだ? 役職の重みとか丸っと無視してるな。


 速足のおっさんに合わせて急ぐ。商業ギルドの中に入り、応接室に通される。


「お待たせ致しました。こちらが、ワタルでございます」


「お待たせいたしました。ワタルでございます」


「いやいや、船までお伺いしようと場所を聞いたのですが、街にいらっしゃると聞いて、お会いしたいとワガママを言いました。お騒がせして申し訳ない」


 なんだ、どう対応したら良いんだ? 王太子様の使者なんだし無礼は駄目だよな。でもへりくだるのは違う。難しい。


「いえ、お会いできて光栄です」


「王太子から手紙をお預かりしています。ご覧ください」


 うわ、どうする。出来るだけ丁寧に手紙を受け取る。なんか卒業証書を受け取るみたいになってしまった。 


「申し訳ないですが、儀礼を知りません。ここでこのまま開いても大丈夫ですか?」


「問題ありません。ジラソーレの皆様に魔導士様を紹介して下さったワタル殿は国の恩人です。多少の事はお気になさらずに」


 ……なに? 国の恩人? なんか囲い込もうとしてない? 用心しないと面倒な事になりそうだ。


「はぁ、ありがとうございます」


 手紙を要約すると、侯爵から話を聞いたよ。船の停泊の見返りに孤児院を海軍が警備するのは、魔導士殿に受けた恩を考えれば問題は無い。しかし、孤児院と停泊させる船を使者に視察させてね。ちゃんと国益になると確認しないと煩いのが文句言って来るからね。


 たぶんこんな感じだ。難しい言い回しで間違っている可能性もあるから、カミーユさんに確認してもらおう。


「拝見致しました。使者様の視察も大丈夫だと思いますが何時になさいますか?」 


 うーん、魔導士様なら横柄でも良い気がするんだけど、魔導士様の友人ポジションはどんな態度がベターなんだ? 身分的にはFランク商人なんだから言葉に甘えて調子に乗ったら面倒な事になるよね。マジで面倒臭い。


「感謝します。急な事ですが明日お願い出来ますか? 私と従者を合わせて5人です。それと、私共も船の中で買い物は可能でしょうか? 侯爵から送られた船の品物を王太子夫妻ともども大変気に入られて、購入できるのなら購入してくるように申し付けられたのです」


 うわー、素早い対応だと思ったけど、目的はそっちか。酒か? 美容関係か? 夫妻って事は両方な気がするな。開放してからなら僕はノータッチなのに、今から来ないで欲しい。


「魔導士様が決められたルールがありますので、その範囲内でしたら問題ないと思われます。こちらのカミーユが船の責任者ですので、交代しますね」


 丁度いいのでカミーユさんに押し付ける。ちょっと恨みがましい目で見られたけど気が付かなかった事にしよう。最近、視察ばっかりで嫌になるな。もう完全にカミーユさんに丸投げしよう。


 孤児達がもうすぐ来るから僕は港で待機しておかないといけない。だって僕は孤児院の院長なんだから。


 使者様とカミーユさんの話し合いが終わり、ルト号に戻る。


「ワタルさん、明日の案内はどうしますか?」


「そうですね。カミーユさん達にお任せします。僕は孤児達が来るかもしれないので、港で待機しています」


「面倒だから丸投げしようと思ってませんか?」


「あはは、まあ、思ってます。でも、聞いてください。僕はああいう人達との関わり合いが面倒で、カミーユさん達に来て頂いたんです。お願いします」


 ウソをついてもバレるので正直な気持ちを言ってみた。


「はぁ……分かりました。明日の案内は私達がします。ですが、キャッスル号の開放セレモニーは出席してくださいね」


「……? 開放セレモニーって何ですか? 聞いてませんよ?」


「ああ、すみません。まだ許可を頂いていませんでした。ワタルさんが孤児院に行っている間にギルドマスターから要請がありました。キャッスル号を開放される時に、海軍の偉い方達と、周辺の貴族様を商業ギルドからの要請で招いた事にして欲しいそうです」


「うん? 商業ギルドにそこまで気を使わないといけませんか? 関係が深くなると面倒だと思うんですが」


「この船のアドバンテージがあれば、周りに気を使う必要も無いです。ですが商業ギルドを窓口にすれば面倒な相手が商業ギルドに流れて、孤児院やキャッスル号に面倒が持ち込まれなくなります。チケットも商業ギルドが選別すれば私達に恨みは向きません。こちらの方が立場が強いので要求も通せます。商業ギルドを利用する方が便利だと思うのですが、いかがですか?」


 あぁ、カミーユさんも面倒な事を商業ギルドに丸投げする気なのか。商業ギルドも影響力が増せてお互いに万々歳って事だな。


「そういう事なら、構いません。面倒を商業ギルドが引き受けてくれるのなら、セレモニーぐらいは許容範囲です」  


「ありがとうございます」 


 キャッスル号に戻り今日はピザ屋さんで夕食を取り、リム、ふうちゃん、べにちゃんのお裾分け行脚を堪能する。最近リム達と遊んでないな。今度時間が出来たらキッズコーナーで一緒に遊ぼう。



 ………………



 朝、使者様達を迎えに行って、キャッスル号に送り届ける。カミーユさん達とアレシアさんイルマさんカーラさんも使者様の案内の手伝いだ。また港に戻り孤児達が来るかもしれないので待機する。


 一日待機になる可能性が高いので、ドロテアさん、マリーナさんにはこちらについて貰った。キッズコーナーには行けないが今日はリム達と戯れよう。クラレッタさんは孤児達が来た時に助けて貰う為だ。経験者って大事だよね。


 僕とドロテアさんマリーナさんでリム、ふうちゃん、べにちゃんとひたすら戯れる。宝探しにキャッチボール、かくれんぼ、なかなか楽しい時間だ。ちなみにリム達は普通のキャッチボールも可能だが、自分を投げて貰う方を好む。


「ご主人様、子供達を連れた商人が歩いて来ます。孤児達では?」


 本当に今日来るとは。使者様の案内をサボる口実だったんだけどな。 


「分かった、出迎えようか」


 外に出てこちらに向かってくる商人と子供達を待つ。


「ワタルさんでよろしいですか?」


「はい、孤児達を連れて来て下さった商人さんですか?」


「はい、こちらの子供達です」


 子供達を見ると、暗い表情の子供達が多い。戦争の傷跡なのか? そういう難しそうなのは遠慮したいんだが、戦争があった国で孤児院を作ったらこうなるよね。


「ありがとうございます」


 お礼を言って依頼表にサインして別れる。子供達を見るとビクっと体を震わせる。挫けそうだ。


「えーっと、僕が君達が入る孤児院の院長のワタルだよ。なんて言えば良いのかな? 取り合えず今から行く所は、安全で毎日お腹いっぱい食べる事が出来るのは約束するよ。お勉強も出来る。沢山遊べる。皆で楽しく暮らせるように頑張ろうね」


 取り合えず僕は頑張った。だけど僕には子供心をグッと掴むのは無理なようだ。切ない。クラレッタさんに助けを求める。


「みんな、怖がらなくて大丈夫よ。一緒に行きましょうね」


 僕が頑張って話して反応が無かったのに、クラレッタさんが笑顔で接すると、おずおずと近づいて行く。笑顔が大事なのか?


 ニコッと笑いかけてみると、ビクッっとして目を逸らされた。切ないな。まあ、僕は殆ど孤児院にいないんだ。怖がられていても大丈夫だ。遠くから幸せを祈っているポジションで満足しておこう。しかし10人いるんだから、一人位懐いてくれても良いと思うのは贅沢なんだろうか? 

誤字脱字、文面におかしな所があればアドバイスを頂ければ大変助かります。

読んで頂いてありがとうございます。

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― 新着の感想 ―
商業ギルドのおっさん本当に大人だしいい人だよね。 マウロさんも言ってたが、特にカミーユさんは航さんのダメ商人っぷりを分かっている。 商業ギルドのマスターと何度もあっているのに何のリアクションが無い。 …
[一言] 元大学生のくせにある程度の常識も知らない主人公でイライラする。周りが頑張ってるのに頑張ろうとしないのもムカつくし、めんどくさいのは他人に投げ出して逃げれば良いって考えもそろそろ治せよ!
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