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袋のネズミ

走る。走る。走る。走る。


降ってくる矢を十字架で叩き落としながらひたすら走る。

姿は見えない。なのに矢は正確に俺目掛けて飛んできた。


どうやって感知している?

確かに俺もある程度ならばファムルスの居場所は把握できはするが、こんなにも正確には出来ない。

人を巻き込むことを恐れて、大通りを避けて路地裏を右へ左へと逃げ回っているが、それなのにピンポイントで矢が落ちてくるのだ。


「ジキル!大丈夫か!?」

「うん!」

「アイリは!?」

「へーき!」


アイリを抱えてジキルが走っている。

俺は飛んでくる矢を十字架で叩き落とすことしか出来ない。

しかしなんて威力だ。

一振りするごとに手が痺れる。


「!? 横の道に入れ!!」


風切り音がズレて聞こえ、急ブレーキを掛けて横の小道に転がり込めば、隙間なく矢の雨が降ってきて道を横の壁ごと破壊した。


「…くそっ!!」


逃げ回ることしか出来ない。


「むぅっ!あの人きらい!!」


アイリが唸ってる。


「私も。なんかイライラする」


珍しく静かに苛ついているジキル。


どうするか。

このまま逃げ回っても逃げ切れるかどうかわからない。

現にこの攻撃方法。


「何処かに追い詰められている…」


ガチャンと隣で音がする。

なんだと見ればジキルが銃を装填していた。


「何してる」

「反撃する」

「やめろ」

「なんでよ!」


納得いかないと俺を睨み付けてきた。


「考えてみろ。お前の銃は大砲並みの威力だ。それをこんなところでブッ放してみろ、周りの建物の壁が崩壊して押し潰される」

「……」


チラリと上を見て納得したジキルは銃を下げた。


「でも、これじゃあいつまでたっても。!!」


また上空から風切り音。


「とにかく俺達が戦えそうな所まで逃げるんだ!!」


後ろで建物が矢によって崩壊している。

それをアイリがじっと見詰め、ふいと視線を動かした。


視界が開ける。

噴水広場だ。


「ちっ、そうか…袋のネズミと言うことか」


俺達の出てきた通路側以外は既に破壊されている。

追い詰められた。


「ふふふ。かくれんぼは私の勝ち。ようこそ神父さん」

「!」


噴水の上にルルが立っている。

水に濡れることなく、真っ直ぐに。


「ここなら邪魔されないわ」


ファムルスの気配が薄い。

遠いのではない。これは気配を隠しているのか。


(そんなスキルがあるのか)

【あります。《気配遮断》というものが存在します。

………解析して居場所を突き止めますか?】

(頼む)

【了解しました】


ジキルがアイリを下ろし、銃を構える。


「ひとつ聞きたい」

「なーに?」


問答無用じゃないらしい。

ルルは後ろで手を組み、首を傾けた。


「なんで町を襲うんだ」


その質問にルルは意外な質問だと驚いた表情を見せ、無邪気に笑った。お腹を押さえ、おかしくてたまらないとばかりに。


「なぜ?なぜですって?ふふふ、そんなの決まってるじゃない」


ルルが言う。


「その方が手っ取り早く強くなるからよ。私は私のファムルスを一番強くして願いを叶えてもらうの。その為なら百人でも千人でも殺すわ」


狂っている。


【見付けました。五時の方向、身を低くしてアイリの心臓を狙っています】


「質問には答えたわ。さあ!遊びましょう!!」


ルルの合図と共に矢が発射された。

振り返り、アイリと矢の間に滑り込む。


矢が十字架にぶつかると同時にジキルが発砲した。


「あははは!楽しいわ!」


弾き飛ばされた矢が光る。


「しまっ──」


視界が白に染まる。

発光の魔法が付属していたのか!


「があっ!!」


肩に衝撃、次いで激痛が走る。


「神父様横に飛んで!」


アイリが背中によじ登り叫んだ。

地面に転がるとすぐそばで爆発音が聞こえてくる。


【《回復魔法》発動します】


矢を引き抜き立ち上がる。

見えないながらに走り出すと、転がっていた場所に矢が次々と突き刺さる音が聞こえた。


賢者が自発的に《回復魔法》を発動してくれたお陰で視界が戻る。またしても飛んできていた矢を十字架で叩き落とした。今度は光ではなく爆発。さっきの爆発音はこれだったのか。


突然隣の建物が吹き飛ぶ。


「あなたのその武器凄いわね!まるでファムルスみたいじゃない!」


ルルが魔法陣を発動し、そこから放たれた火炎弾が放たれ、それをジキルの弾が撃ち破って建物を破壊した。


「あの女速いっ!」


ルルは空中を跳ねるように飛び、ウルフと呼ばれたファムルスの側へと立つ。


「ジキル大丈夫か!」


煤だらけだぞ。


「怪我はないよ。だけど、あいつ、凄い結界使い。超めんどくさいよ」


ジキルが銃を機関銃へと切り替えながら言う。

怪我はなさそうだが。


「ウールフ。どう?あれ、射ち抜けそう?」

「……多分」


隙をつければ、だろう。


「だけど、まだ威力が足りない」

「そ?じゃあ集中した方が良さそうね」


ルルから流れ出た魔力がウルフに流れていく。


…まてよ、嫌な予感がする。


「これでどうかしら?」


ウルフがこちらに矢を向ける。

放たれた矢に風が巻き付き、突然急加速した。


「なっ!!??」


十字架にぶつかり、あまりの衝撃に吹っ飛ばされかけた。


「うるぁあ!!!」


このままだと押し負ける。

角度を調整し受け流すと、矢は十字架を滑って後方へ流れ、建物を破壊しながら飛んでいった。威力はジキルの銃以上。


「……嘘だろ」


十字架にヒビが入っていた。

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