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人は誰でも騙され易い

俺のとこに詐欺メールがきたんでこんな題名にしてみた

 あれから、休日をはさんで三日後。

 俺たちはほのこの母親、一ヶ月前からここに入院している阿由紀子さんのお見舞いに、世界で三番目に高い建物でもある、ビ・ダイタル病院に来ていた。

「はあ」

俺は久しぶりに溜息を漏らす。

「何辛気臭い顔してんのよ?」

まさか、よりにもよってこいつの母親が入院してるのがこの病院だなんて……。

「……やっぱり、あれだったら無理にあってくれなくてもいいわよ」

ほのこはどうやら俺の溜息を、そういう意味にとらえてしまったらしい。俺はあわてて否定する。

「違うってそういう意味じゃないから。………ただ、高いところは苦手でな」

俺の言葉を聞いて、少しの間パチパチと瞬きしながら俺の顔を見つめていたが、すぐに腹を抱えて笑い出した。


 何度でもいうぞ?俺は高いところがだいっ嫌いだ。


「で、お前のお母さんとやらはどこにいるんだ?」

俺がそう聞き返すと、な坂ほのこは笑いを堪えるようなしぐさをして、

「三百四十階だよ」

高いところがだいっ嫌いだ

「三百四十階」

高いところ―――………


「やめよう」

「えっ?ちょ、ちょっと待って、会ってくれるって言ってたじゃん」

「すまん俺最近腹痛もちなんだ。さっきから腹が痛かったんだよお前の母ちゃんが二階とか三階とかになったら教えてくれ必ず会いに行くから」

「じゃどうせだからその腹痛も治してもらいましょうよ。ここの内科って三百三十三階にあるから」

「いいつってんだよ!!この腹痛は医者には治せないの!心の問題なの!!俺の腹ナイーブなの!!」

「精神外科だったら三百二十四階にあるよ?」

「行かないよそんなとこ!!俺が精神科にいくほど心病んでるとでも言いたいのか!?」

「………あんたそれ本気で言ってんの?」

「そこだけ本気になるのやめてもらえませんか?」


《阿 由紀子》

そうプレートに書かれた部屋の前まで来る。

「へえ、個室なんだな」

「うん、寝たきりの人は相部屋にしないんだって」

俺はほうと返し、引き戸に手を伸ばす。

ガラッとそのドアを開けた。

「お邪魔しまっす」

真っ白な部屋に、その真っ白な女の人は横たわっていた。

 長らくベットに寝たままだた所為か、本当に血が通っているのか怪しくなるぐらいに白い。

 そんな女の人が、かすかに胸を上下させ静かに眠っていた。

 俺は神秘的な光景に思えて、ただただ見つめていた。

「何見つめてんのよ、気持ち悪い」

その俺の思考はほのこの一言で取り払われる。

「いや、本当に生きているんだよな?」

「何?生きていないとでも言いたいの?」

「いや、何か綺麗だなあと思っただけだ」

「………異常性癖?」

「何でそこだけそんな反応!?」

「うるっさいわね、静かにしてよ」

「俺が悪いのか!?」


 それからほのこは、眠る母親に、語るように話していた。


 俺という変態が現れたこと。

 俺の妹のこと、佐奈のこと、おっさんのこと。

 この前の警察に捕まりそうになったこと。


 ただ、そのことを話しているほのこは一度も母親の顔を見ることはなかった。


 すべてを話し終え、ほのこは腰を上げる。

「もう良いのか?」

「うん」

ほのこは俯きながら応える。

俺たちはその病室を後にした。




 …………どうやら、二人は帰っていったようだ。

 私はそっと目を覚ます。今日で私の目が覚めて四日目。お医者様に頼んでしばらく、意識無いふりしてたけれど、ほんとによくばれないわね。

 大きな窓から見せる空は夕焼け空だった。

 山の向こうに吸い込まれていくかのような夕焼けは、とてもきれいに思えた。

 何でこんなことをしているのだろう。あのまま目が覚めたときに、あの子に会っていればそれでも良かったかもしれないのに。


 コンコン―――………

 誰かが私の病室の前に立っていた。

 誰だろう、病院関係者の足音でも、ほのこの足音でもなかったと思う。私はいつものようにベットに横になる。

 そして、ドアが開かれ、入ってきたのは―――。

「失礼します」


 ほのこが言ってた変態さんだった。



まだまだ続く

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