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ガドネア歴九九八年 七月二〇日 ラミア・スナー
私はお父さんからみっちりしごかれ、スナー流も、そして人龍としての基本的な飛行術や翼の収納方法など、一連のことを学んだ。スナー流は奥伝までだけど、一週間でここまでに至ったのは驚異的な速さ、らしい。けどホリーはその上で、皆伝に近いところにまで至っている。
まあ、ホリー自身すごい努力家だし、私の見えないところで結構練習もしているっぽい。最近恋人ができたこともあって、それまで以上に張り切っているらしい。無理して体を壊さなきゃ良いのだけどね。
聖霊剣に関して、重要な情報を得た。
先日ホリーが聖龍島に飛んで、祠を確認しに行ったのだけど、聖霊剣らしい魔力の残滓が残っていた、とのこと。これであの文献は全て嘘であることが分かったし、小説に書かれていることの方が正しいと、結果的に証明された。
その小説のうち一冊に、ユニス建国の後ろ盾となったデニアス王国に、そのお礼として風の聖霊剣を献上したって書かれていた。これも事実であれば、もしかしたらデニアス王城の宝物庫に保存されている可能性がある。
毎年八月に開催される武闘大会、その優勝者には宝物庫収蔵の一品が贈られることになっているのだけど、そのときに宝物庫の中を見学できるらしい。さすがに国宝は無理でも、それに準じた宝物がいただけるのだ。……私自身は宝石類には興味ないけれど、小説通りに聖霊剣が献上されていれば、もしかしたらこの目で確認できるかもしれない。できれば、手に入れたいところだけどね。
それともう一つ。
メルから色々と話を聞くことができた。その内容は、メルの両親の話。
お父さんがアレクサンドル、愛称サーシャさん。お母さんがウロフカーニャ、愛称ウーニャさん。
サーシャさんは、もともとはデニアス王都近郊のノリヴァフスク出身だったそう。ウーニャさんのフルネームは、ウロフカーニャ・アントノーヴナ・カル=アストローヴァ。その名字の通り、カル=アストロフ出身。ミリア王妃とウーニャさんは、黒龍同士で昔から親交もあり、親友とも呼べる間柄だったそう。
ある日、一人の黒龍が禁忌を犯し、それを追ってウーニャさんとミリア王妃……当時は王妃ではないのでミリアさん、が仲間と共に追跡したけれど、ガドネアの地で返り討ちに遭い、ミリアさんはアクエイスで、ウーニャさんはノリヴァフスク近郊にて力尽きたという。ミリアさんは当時旅をしていた私のお父さんとファーネル王……当時は王子と、まだ旅には参加していなかったお母さんに救助され、ウーニャさんもサーシャさんに救助され、それぞれ一命を取り留めた。私の両親とアルちゃんの両親が二人と合流して、その禁忌を犯した黒龍をデニアス近郊の森に封印に至った、という。
驚いたのは、アルちゃんとメル、そして私たちの縁はこんな所で繋がってたんだなって事。
一つ気になるのは、封印された黒龍の話。ウーニャさんが四大精霊封印術を使用しての封印だったことである。術者が亡くなれば、術も解ける。ウーニャさんは、カル=アストロフ襲撃の際に命を落としているので、この時に封印術も解けてしまったはずだが、それから数年経過した現在、デニアスでは何ら事件が起きたという話は聞いていない。
単なる杞憂で済めば良いが、……旅立ちの前に、妙な胸騒ぎを覚えるに至った。




