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転生先は異世界でした。  作者: U1
第二章 二人が旅をする話
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神を管理する者

部屋に入ると上物の神官服を着た老人が静かに礼をした。その神官服は豪奢とはいえない程度の装飾が付いていて、本人の品のよさがうかがえる。


「ようこそお越しくださいましたな、ルヴェイト様。お久しぶりでございますのう」

「久しぶりです。お変わりないようで何より」

久しぶりといわれたら確かにそうだ。スレイア神国はよほど重要な召集にしか出席しない。その国に仕える神官たちの長となればなおさらだ。前に会ったのは俺が16のときだった。あの時は王の意向を伝える為に赴いたが、今日こんにちはあちらの意思と希望を聞きにきたのか。

神官長は記憶の中と変わらず、好々爺然とした面に笑みを浮かべている。

「ほっほっほっほ。あなたも昔とお変わりない。否、以前お会いしたときよりもやつれておいでかな?」

たとえ見た目がそこらにいる老人でも、この男は長く長く国の頂点に君臨していた男だ。白く伸びた眉毛に隠れた彼の青の目は鷹のような目つきをしている。

「そうでしょうか。自分に覚えはありませんが」

自国に上級魔獣が襲ってきたことをこの老人は知っている。そのことを暗に問うたのは自分の力を貸すことを切り出すつもりだったからだろう。その申し出に俺が頷けば、ユーギストンに不利な条件をつきつけられる。

「そうかそうか…。それでは、お国の状況はそれほど危険ではないということですかの。それは良かった」

「ええ。あなたが心配されることは何もありませんよ」


神官長は笑みを浮かべたまま本題を切り出した。


「では、あなた様は何故こそこそと隠れてこの国に?」


見た目だけは好々爺の神官長クソジジイは口を閉じずに続ける。俺は言葉をかぶせることはせずに話をすべて聞く。

「ルヴェイト様は今まさに選定の儀の真っ最中でしょう。わしの記憶違いでなければあなたはそれを終了させあなたの父君と民を認めさせない限り、次の王にはなれないはずでは?儀式を放棄してまであなたはこの国におこしになったのか。…違いますな?ルヴェイト様」

「ええ」

「貴方様は、儀式を終了させるために我が国に参られた。スレイア様のお力を借りるために」

「そうです」

嘘偽りなく頷くと、神官長は落ち着いた姿勢を崩すことなく笑みを深めた。

「ルヴェイト様は秘密主義でございましたか。スレイア様に仕える私たちに隠れて霊山に向かおうとするとは。その行動にどんな意味を込めているか、深読みしてもよろしいんですかな」

「深く読む必要もない、単純な理由ですよ。俺は自分の儀式に誰かの手を借りたくなかっただけです」

他国の力を借りればそれだけ面倒な事態を起こす。今は良い影響も悪い影響もいらない。まあ実際はいろいろな人間の力を借りているが。

いや、おもに借りているのは馬鹿狼の前足か。


「スレイア様は別扱いですかのう?」

「神に助けを願うのは、別扱いです」

「そう、そうなのじゃ。スレイア様は聖獣でありこの国の神でおられる尊い存在でございます。それに仕える私どもは、スレイア様の安息を守る役目も引き受けております。その私どもを無視したのは、そのような理由なのですね?」

「ええ。私は儀式を終了させるため、魔族領の道を得るため、神に手に伸ばしに参りました。ですが神に仕えるあなた方を無視した、というのは少々語弊を含んでいます」

「ほう」

面白がるように青い目が光った気がした。俺はわざとゆっくりと、用意された茶を含む。王族に出されたものを毒見も無しに食するのは愚かだといわれているが、今更毒を盛る意味はないだろう。

そういえば、何故俺たちには毒見が必要なのだろう。父は必要だ。まだ妹は理解できるが、俺や母にも必要なのだ。魔族の身体は人間よりも強固にできているが、なぜか毒は人並みに効いてしまう。その代わりに薬も効果を発揮するためあまり文句は言えない。


俺が下した茶器には聖獣を模した文様が入っている。神はこうして好かれ崇められる存在であり、管理される存在ではない。

「そもそも、神に力を望むとき神官を通す必要はないはずです。それに今、この国の神官たちは貴方が思うほどの余裕はありませんよ」

この国は城壁らしき城壁が存在しない。だが何十人もの神官が協力して作った結界が魔獣の侵入を阻んでいる。どういう魔法なのか詳しくは知らないが、その効果は大体分かった。

酒場で大量にやってきた魔獣達。あの時、この国の人間は驚きに満ちた顔をしていた。中級魔獣があの量で現れるのは異常な状況で、つまりは神官たちが異常な事態に陥っているということである。

謀ったように現れた魔獣は、恐らくレヴィアに向けられた理性無き刺客。そして結界をコントロールできるのは多くの神官の上に立つ人間。

神官長は聖なる血を受け継ぐ一族の中でもっとも力ある人間といっていい。その人間の前に聖獣の血を半分も持つ少女が現れたら、その子を邪魔に思って当然だ。聖なる獣の血を継いでいると民にばれては困るので、わざわざ国外の者を使った。


神官長は暫くの間沈黙していた。反応をうかがう俺に対してわざとなのか、おおげさに笑い声をあげた。


「ほっほっほっほっほ!! そこまで分かっておられるのに、何故あの少女を連れてきたのです。他を排するあまり人手が少ないのも考えものですな!」

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