さあ、深呼吸して
銃を渡したあと、フェディオさんはあっさり帰っていった。
フェディオさんからはなかなか良い情報を手に入れることが出来た。何を隠そう、ルヴェイトの情報である。
現在、ルヴェイトは聖獣に会う為にスレイア神国に居るらしい。スレイア神国では聖獣を奉っているため、神出鬼没な聖獣と最も会える可能性が高い場所だ。そこに向かうだろうとは思っていた。けど、早すぎだろ…。
一体この国からスレイア神国までどれくらいの距離があると思っているんだ。チートである奴のことはともかく、同行人のことが心配だ。
杞憂に終わったんだけどね。
同行人は、“世界を巡る者”リーディン=アレーストという人だった。フルネームを聞いてもピンと来なかったのだけれど、リードという愛称を聞いて思い出せた。
茶色の髪に、海のような真っ青な瞳。元傭兵という肩書きにふさわしくたくましい体つき。だけどおおらかで豪快で、私にも凄くよくしてくれた人。
リードさんはルヴェイトの数少ない友人だ。あの人ならルヴェイトのペースだって十分ついて行けるだろう。獣人だから体力有り余ってるだろうし。
そんな訳で、彼らの旅は順調らしい。
「私も、頑張らなくちゃね」
「どうかしましたか?」
不意に立ち上がった私に、お茶を片付けていたルーエが振り向いた。その顔はいつも通りで、まさか私がここを出るつもりなんて考えてもいないだろう。
私は出来る限り安心させるように、笑って言った。
「ここ出て、旅に出ようと思って」
ぱちくり、とルーエは瞬きを返しただけだ。
「自分でも何が出来るか分かんないけどさ。それでも、ここに居たって私は何も出来ないから」
気を抜くと強ばってしまいそうになる顔を出来る限り笑みにする。
…緊張するなぁ。本番はまだ控えてるのに。
「だから、私は離宮を出る。…っていうのをアレージュノ様に言ってくるね」
「……そうですか」
ルーエは眼を細めて、笑った。
「では、いってらっしゃい」
そう言って、茶器を持っていた手をさよならをするように横に振った。
「……それだけ?」
私が訝しげになってしまっても、ルーエは柔らかな笑みを浮かべたままだった。ルーエはやっぱり、私の第三のお母さんだ。
「あ、じゃあ一つだけ。絶対無事に帰ってきてくださいね」
「…もちろん!」
当たり前だ。私は旅先で死ぬつもりなんてない。だからこそ準備は万端にしておきたい。そう言うと、ルーエは動きやすい服装と旅に必要な物を用意してくれると言う。その驚くほど協力的な姿勢に私が戸惑っていても、ルーエはただ笑うだけだった。
かなり気になったけれど、私にはまだやることが残っている。
「じゃあ、行ってくるね」
「はい。……頑張ってくださいね」
「うん、頑張る」
真剣な顔で応援してくれたルーエに、私は笑って手を振り返した。
その足で離宮を出て、向かう先は王宮。アレージュノ様がいる最上階へと向かうのだ。
さて、本番だ。




