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続く毎日

「なに」

「あれじゃないか、ほらポケットの」

 何か所目かで、ガラスケースがあり、その中にポケットのなかのものとそっくりなものが陳列されていた。

 目を見開いて、小刻みに頷く。

 目配せで舞衣に応援を頼んだ俊矢の機転と、藤沢も気付いてくれて、二人で一緒に住岡さんの方に加勢に行ってくれた。

 俊矢と小さく頷きあって、僕を背中で隠すようにしながら付いてきた。

 僕はポケットからハンカチを取り出すと、ケースの近くの床にそっと置いてからハンカチだけ戻した。もう一つも同じように別のポケットから取り出して置く。とても一緒のポケットに入れておけなかった。

「あれ、これは何ですか?」

 俊矢が大きな声を出した。

 僕はただ下を向いてブツを見ているだけでいい。

 住岡さんが何だろうと近づいてくる。みんなの目がちらちらと僕と俊矢を行きかう。けれど、今はじっと目配せなどはせずに、不思議そうにブツを見ているのがいい。

「これです、このケースに入ってるものと同じみたいに見えますけど、落ちてていいんですか?」

 俊矢が明るく聞いて、住岡さんをうながす。

「これは……、これ!」

 クマのような巨体が、屈みこんでいた姿勢から天を仰ぐようになった。

「向田教授、見つかりましたよ!」

 二つを手につかむと、高校生のことは忘れたように部屋から駆けていく。部屋には鍵はあるが、こうもセキュリティーが甘ければ、誰でも持って行けそうだ。

「でも、これはもう武器にはならない」

「使えない爆弾だからなぁ」

 このエネルギーは、別の使い道がたくさんあるだろう。

「君たち、本当にありがとう、探してたんだ。なくなったら大変だったんだよ。向田教授が、もっとセキュリティーを強くしなきゃって言ってる側から、消えてなくなってたから。本当はもう一つあったんだけど、あれはできそこないだったから、大事にはならないと思うけど、でも、危ないんだけどね。すごく探してたんだ」

「きっと役に立つんでしょうね」

「うん、代打エネルギーにしたくてね」

 住岡さんがなぜこの研究室に所属しているのか、何を目指しているのかを知る。夢を抱いて、目標を持って進学する学校を選んだんだとわかった。

 俊矢が礼儀正しく挨拶をした。

「今日はありがとうございました。十分見学させてもらえたので、もう帰ろうと思います」

「もうこんな時間か、ぜひうちの研究室に来てくれよ」

 住岡さんは、未来の住岡さんよりずっと活き活きしている気がした。

 気軽に来て欲しいと言われたけれど、帝都大学に合格するのが前提なんだよな、と心の中で付け加える。

 藤沢や舞衣、優奈も集まってきて、礼をした。

「気を付けて帰れよ」

「勉強になりました、がんばります」

 市川が最後に妙に力の入った言葉を伝えると、住岡さんも、挨拶に出てきた向田教授も笑顔を見せてくれた。

 夕方に近づくと、寒さがぐっと増して来た。大学の構内も人がまばらになってきている。最寄りの駅に近づくと、人が多くなってきた。帰宅ラッシュに巻き込まれる前の時間帯だ。

 改札に入り、電車に乗り込むまで、みんなは黙り込んでいた。

 電車の温かさに慣れた頃に、優奈が息をついた。

「これで事件は解決だよね」

 藤沢がふっと鼻に抜けるような笑いをもらして、つられて俊矢も僕も、舞衣も、市川も笑いだした。声に出すような笑いではなく、腹からの力が抜けた笑いだった。

 電車の中で他愛もない会話をして、進路のこととか、クリスマスや正月にむけた話をしたり、なごやかな時間が過ぎていく。

「私ここだわ、また学校でね。今日は楽しかった」

 市川が途中下車して、舞衣がまた途中で降り、藤沢がにっこりと笑って下車していった。

「藤沢ってさ、けっこうモテそうだけどな」

 俊矢が何気なく言う。

「湊くんは、地味に見えるけど人気はあるんだよ。ミステリ、謎解きばっかり追いかけてて、ホームズみたいだけど」

 だんだん空いてくる車内で、僕は座席に座った。もう少しで着くけれど、立ちっぱなしも疲れてしまう。

「お、海だ」

 夕日に彩られる海と、秋の雲が浮かぶ空には、かすかに星が見え始めている。陽が落ちるのがはやい。まだ夏の感覚が残っていて、僕はつかのまの違和感を修正する。

「明日は部活に参加だな、なんか久しぶりだ」

「オリオン座流星群はもう終わったかな、見たかったな」

「終わったなぁ」

 終着駅に近い地元の駅に着くと、三人で降りた。

「じゃ、また明日な」

 俊矢は駐輪場から出ると、自転車にまたがってさっそうと帰っていった。

「私、バスで帰るよ。疲れたよね」

 ロータリーにまで同行して、バス停でしばらく一緒にバスを待った。

「今度の日曜日さ、映画でも行こうか」

「うん、何を見ようか~」

「何かいいのがあったら、携帯で教えて」

 バスが来てしまった。もう少し一緒にいたかったなと、名残惜しくも手を振る。嬉しそうな照れ笑いの優奈が手を振り返して来た。

「わかった、じゃあまた明日ね」

 バスに乗っていく姿を見送り、席について手を振ってきたのに応えてから、自転車に乗って走り出した。



                                         終



毎日更新で上げてみました。

楽しんでいただけたら、望外のしあわせです。


所々、突っ込みどころがあると思いますが・・・。

ご寛恕いただけたら有難いです。


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