「第三章 魔王様は冒険する!~異神の脅威~」予告編
「ここまで彼女らについてわかった事柄から、一つの可能性が示唆されています……」
「それって……」
キルケ・アスモダイオスは、世界への【混沌機能(=system ALAYA)】による侵食の可能性を示す。
その予想が正しくそのまま進み、万が一【秩序機能(=system LOGOS)】が混沌に凌駕されたとしたら――。
「――世界は、おそらく滅びへと向かうでしょう……」
一つの戦いが終わり、静かな侵食が続く中で、魔王・総司の、テラ・ラレース全土を巡る旅が始まる。
「ま……、魔王様……」
――その時、メイド兵リィフはその馬車を追う騎士たちに違和感を感じていた。
そしてそれは、総司もまた同じであり――。
「追うよ! リィフ!!」
「はい!!」
こうして、魔人族たちの社会に静かに浸透しつつある闇が、総司たちの前に姿を見せる。
騎士団に追われていたマリアネラ王女は、追手の騎士長に向かって叫ぶ。
「貴方の主は……、ラウル司教はなにを考えているのですか?! 女神様方を否定して異神を奉るなど!!」
「……いいえ、司教様こそが正しいのですよ……。我らは女神ども――天魔族の支配より脱却して、正しく独り立ちせねばならぬのです」
魔人族の国家バーリ王国に這い寄る異神の影に、総司たちは迫ってゆく。
「ナハシュさん? なんで貴方が?」
「ふふふ……、まお……と、ソージ様。それは当然、他国の情勢を調べていたのですよ。なにやら、怪しい新興宗教が大陸中に広がりはじめているので……」
そして――その先に現れるのは……。
「貴方は……、ラウル司教?! その腕は……」
「くくく……、これこそわたしが異神さまより授かった神の力……。今のわたしの前には、軍隊であろうが女神であろうが、塵芥と同じなのだ……」
それは――これから続く旅路の、最初にして避けられない物語。
それを切っ掛けに、総司は各地をめぐり、仲間たちとともに、魔人族に迫る闇を払う戦いに身を投じてゆく。
「き、貴様?! 何者……だ?!」
「……僕は……、僕の名は……」
――ジード・ゲーティア。現在の天魔族の王です。
◆◇◆
そこはテラ・ラレースとは明らかに景色の違う場所。世界の中央に、天を貫くほどの大樹が聳える世界。
「……あなた!!」
「下がれ、イルミ……。奴は妙な力を使ってくる!!」
幼くも見える長い耳の女性を背後にかばいながら、黒い気を纏う両刃長剣と、光輪を纏う曲刀を構えた男が、目前の修道服の女と対峙している。
その女の周辺には異形のモンスターが溢れ、世界をゆっくりと侵食し始めていた。
「いやいや……さすが、高位世界の一つ【レム・リ・アース】ですね……。なかなかに侵食しにくくて困る……」
「貴様……、ただの異神ではないな?!」
男の言葉に、修道女は嘲笑を浮かべて語り始める。
「ええ……そうですね。私は――■■■■■■■を目指すもの……。ここに来たのも、天啓によるものです……」
「ば、かな……■■■■■■■?! それがなにを意味するのかわかっているのか?!」
驚愕の表情を浮かべる、その世界【レム・リ・アース】の守護者、双剣士ダンテ・異界門の番犬と、その妻であり世界樹の巫女たる神格妖精イルミール・ノルン。
その表情の変化に満足しながら――その異神は、
――【極天のワシュキ】は、嘲笑を深くしたのである。




