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22.異世界の婚約者披露

シャルロッテさんとお友達になれた事で、私には楽しみが増えた。


以前、さほど忙しく無いと言っていた通り、シャルロッテさんはそんなに忙しく無い様で、数日と開けずに我が家にやってきては、小説の感想を話し合ったり、流行のお菓子やドレスの話に、かと思えば王子様との惚気話やら、ダイキさんが小憎たらしいって話をしてくれる。


それは、聞いているだけでも凄く楽しくて、私はシャルロッテさんが遊びに来るのを心待ちにする様になっていた。


・・・ノルムさんは、そんな私とシャルロッテさんが女子トークで盛り上がっている横で、淡々と図鑑の・・・今は表紙と目次の作成に夢中だ。表紙は金色の飾り文字で書くつもりらしく、ここ数日は飾り文字の練習に励んでいる。


「そう言えばチサ、今度、私とウィリアム殿下の婚約披露パーティーがありますのよ!是非、いらして?」


「え?・・・良いんですか?」


「勿論よ!チサに来て欲しいの!・・・あ・・・でも、チサは『落ち人』だから、パーティー嫌いのノルムの同伴が必須だけど・・・。殿下の他にも『終末の魔道士』が来るから、自分の『終末の魔道士』が一緒じゃないと、大変な事になるのよね・・・。前もそんな事があったし・・・。」


シャルロッテさんはそう言うと顔を顰める。


「・・・え、そうなんですか?」


他の『終末の魔道士』の魔力に中てられる事は、王子様に前回会った事で経験したが・・・ノルムさんがいないと、そんなに大変な事になるものなの?


「ええ。・・・以前、ダイキがウィリアム殿下が体調を崩された時に、こっそりと代理で出席して、大変な事になったのよ。他の『終末の魔道士』の余剰魔力がかなり流れてしまったらしくて・・・1ヶ月位は起き上がる事も出来なかったわ。それ以来、ますますウィリアム殿下はダイキに過保護になってしまって・・・。気持ちも分かるのだけど、ダイキにはこの世界を座学だけでなく、自分の目でもっと知ってもらいたいのよね・・・。ほら、いろいろな経験をするって、大切でしょう?囲い込む事だけが、ダイキの為じゃないと思うのよ・・・。」


何だかんだ言っても、シャルロッテさんはダイキさんのお姉さん役なのだろう。・・・普段は悪口ばかりなのに、こうしてポロポロとダイキさんを本気で気遣う発言が出てくるのが、本当の姉弟みたいだ。


何となくそんな二人の関係が微笑ましく、笑みを浮かべていると、先程まで飾り文字に集中していたノルムさんが顔を上げる。


「チサ、婚約者披露パーティーは私も参加したいから、一緒に出よう。」


「・・・もちろんノルムも招待するつもりではいたけど、自分からパーティーに参加したいなんて、珍しいわね?」


シャルロッテさんが驚いた様に言う。


「・・・まあ、お前とウィリアムとは幼馴染だしな・・・。それに、次は私が開かねばならないだろう?だから参考にしたいのだ。」


・・・?


「ノルム、何を開くの???」


「シャルロッテ、決まっているだろう。私とチサの婚約披露パーティーだ。・・・紙面では婚約者だが、ほとんど認知されてないしな。チサには公爵家の苦労などさせる気は無かったが・・・気が変わった。」


・・・!


そ、そうだ。私・・・一応まだ、ノルムさんの婚約者でした!!!


「・・・確かに、それは知っているけど・・・。でも、貴方たち、そんなに親密そうには見えなくてよ?政略結婚ならいざ知らず・・・『落ち人』と『終末の魔道士』なのに、同性の殿下とダイキの方がよっぽどイチャついてるわ。・・・ねぇ、チサは本当にノルムと結婚するつもりなの?」


シャルロッテさんは・・・姉御肌って奴なんだと思う。

私を庇うようにして、ノルムさんとの間に入り、私に確認する。私は緩く頭を横に振って結婚するつもりが無い事を伝えた。


「シャルロッテ、余計な事は言うな。チサはまだ悩んでいるだけだ。・・・サイモンの奴がな、チサに言い寄るからだ。あいつは、私を差し置いてチサと仲良くしようとする。・・・困っているんだよ。だから、あえての婚約披露パーティーだ。」


「・・・サイモン???・・・ああ、サイモン・アダマール!アダマール伯爵家のご次男でしたっけ?ノルムと回復薬の研究をしていた方よね?・・・サイモン様って、こんな癖の強いノルムと共同研究するくらいだもの、人徳者なんだろうって噂されてたのよね。・・・まあ、確かに・・・生涯のパートナーにするには、性格も重要かしらね・・・。」


シャルロッテさんは頷きながらそう話すと、キラキラした目で私を見つめる。・・・完全に、友達から恋バナを聞き出してやるぞって顔だ。


「サイモンさんとは、そういった関係では・・・。」


確かに気になってるとは言われたし、手も繋いだりはしたけど・・・。でも、サイモンさんとは、まだお付き合いはしていない。


てか、依然として私はまだノルムさんの婚約者だし・・・。

サイモンさんとの恋はさておき、ノルムさんとの婚約は、なんとか解消したいとは思ってるんだけど・・・。


「だが、あいつはチサをデートに誘ったではないか!・・・私が注意しても、あいつはな、私は男性としてチサには選ばれた訳ではない、婚約もチサを騙しているようなものだと、文句ばかり言って、態度を改めないんだ!」


「・・・騙してるは言い過ぎだけど、異世界で保護者になってくれた方だもの、チサが拒み辛いのも確かよね・・・。うーん・・・。あっ!・・・ノルム・・・幼馴染のよしみで、アドバイスしてあげる。」


シャルロッテさんは、ノルムさんを見つめて、ニッコリと笑う。


「なんだ・・・?」


「これ、読むと良いわ。この本のヒーローみたいになれば、チサも振り向いてくれるかもね?」


シャルロッテさんは、鞄の中から本を1冊抜き出すと、ノルムさんの目の前にポンと置いた。


タイトルは『公爵様はスーパーダーリン!〜完璧な公爵さまの溺愛レッスン〜』と書かれていた。


・・・な、なにこれ?!ロマンス小説?!


「・・・シャルロッテさん?!」


私は嫌な予感しかせず、急いでその本に手を伸ばす。


・・・ノルムさんは、言われたら言われた通りに実戦してしまうタイプだ。それはサイモンさんに指摘された『顔を見てない』事件でも、すでに経験済みな訳で・・・。こんな本を渡したら、その通りに実践してしまうだろう!


私がその小説の端に手をかけると、ノルムさんは私の手を軽くパチンと叩く。驚いて手を引くと、ノルムさんは本を抱え込んだ。


「チサ、これは私の教本だ。お前には、そちらにシャルロッテが大量に貸した本があるだろう?・・・まず、そちらを読みなさい。・・・シャルロッテ、ありがとう。是非とも参考にさせてもらうよ。」


・・・私が青ざめてシャルロッテさんを見つめると、シャルロッテさんは小声で『私、なんだかんだ言っても、幼馴染だしノルム推進派なのよ?こんなでもイイとこあるの。溺愛されてね?』と嬉しそうに呟いた。


え・・・どうしよう。





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