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13.異世界の最優先事項

「・・・何を言っているのですか?ノルムさん?」


好きだと言われても、まるで実感が湧かない。


そのそも一目ぼれされる容姿でも無いし・・・嫌われるほど険悪ではないが、好きになって貰えるほど、良い関係とは言い難かった。・・・そんななのにノルムさんが、私を好き???


言っておくが、私にだって多少の恋愛経験はある訳で・・・。

そこまで鈍いタイプでは無いし、好意を寄せられていたら、少しは気付くと思うのだが・・・?


「・・・いや。『運命』だから、そういう物・・・だろう?」


・・・意味が分からない。

何でも『運命』でひとくくりにしないで欲しい。


「たから、私には『運命』なんて分から無いです!・・・ノルムさんを救った事が結果的に『運命』だったとしても、私には・・・偶然が重なっただけとしか、思えていません。・・・そもそも、ノルムさんからは、特に好意を感じた事も無いのですが・・・。」


「い・・・いや。その、私は・・・。研究に戻れた事が嬉しくて、ついのめり込んでしまっていた。・・・だから、チサとの時間を持てずにいただけで、これから『運命』とやらは感じるのでは無いかと思っていた。私はチサが多分、好き・・・いや、好きになるのではないか?・・・現時点で、お前を嫌いではないし。そ、それにだ。・・・仕事は、1年間の休暇を貰ってきた。」


・・・は?


「え?・・・休暇???」


「そうだ。・・・チサに『眠らせてくれ』と言われて、私の優先すべき事項が、研究からチサへ移ったんだ。・・・お前との時間は1年しか無いからな・・・。今後は最優先だ。・・・夕食で、その話をしようと思っていたが、お前がワインを飲み始めてしまうから、言いそびれた・・・。」


・・・人のせいにしないで欲しい。

それなら、最初に話を始めれば良かったじゃない・・・。


「・・・最優先って、何をどうするつもりですか?運命って、どうやって感じるんでしょうか?」


「・・・そんなの、分かる訳が無いだろ?チサは知っているのか?」


・・・。

知らない。


・・・運命を感じる方法か・・・。

漫画や小説だと、出会った途端にビビッとくるらしいけど・・・?


うーん・・・。


でも、とても仲の良いカップルやご夫婦がすべてそうかって言われると、違ったりもする訳で・・・。確かに、出会ってすぐは気付かなかったけど、運命だったってのもあるよね???


「よく・・・分かりません。」


「だろう?!・・・チサも知らないのだ。だから運命かどうかが分からないだけなのではないか?」


え・・・そ、そうなの、かなぁ???


確かに、ビビッとくるって言われても、それがどんな感覚はよく分からないし、そもそも本当にくるのかもよく分からない。


私はうーんと首を傾げる。

酔っていて、よく頭が回らない・・・。


「チサ、そういう場合、1番初めにすべき事は『調査』だ。どんな研究も、調査や下調べをして、とっかかりを見つける事が重要になってくる。・・・閃きもあるが、閃かない時はそうするのが大切なんだ。過去の文献を読みあさったり、最新のデータを読み解いたり・・・そうやって、新たな道を模索して行くんだ。」


「は・・・はぁ。」


「私は長年の研究生活で、その辺については非常に明るい。」


・・・研究における閃きと、恋愛的な運命の閃きは・・・全く違う気もするのだが。


「えーっと・・・。それでどうするのでしょう?」


「過去のサンプル・・・お前の他にも何名も落ちてきた『落ち人』がいるんだ。それを調査する。」


・・・私の他の『落ち人』・・・?


そ、そうだ。


そう言えば、『落ち人』はそう珍しく無いと騎士たちが言っていた。・・・つまり、他にも『落ち人』はいる訳で・・・。


「あ、会いたいです!その方たちに!」


「・・・だが、そう簡単にはいかない。」


「ど、どうしてですか?」


『落ち人』がどこから来るのかはわからない。

だが、同じ地球から来ている可能性は高いのでは無いだろうか?

王妃の庭だったという、あの庭は、極めて地球にあるっぽい植物ばかりだったし、異界人が風呂好きと言うのは・・・日本人ぽさを感じる。


同じ立場で同郷の人がいたら、ぜひお会いして、お話したいのだけど・・・?何か問題があるのだろうか???


ノルムさんは私の顔を見つめ、落ち着いた声で話す。


「チサ。・・・君は、他の『落ち人』に是非とも会いたいと思っただろう?・・・みんな、そうなんだ。だから、『終末の魔道士』たちは、『落ち人』同士を会わせたがらない。・・・会った時は良い。だが、その後で極めて不安定になる事が多いんだ。・・・帰りたくなってしまうらしい。」


ああ・・・。それは、そう・・・かも。


「だから、『落ち人』持ちの『終末の魔道士』たちに連絡をとったが、会わせてくれると言ってくれたのは、1人しかいなかった。」


「・・・1人・・・。」


「・・・とは言え、多分だが、その『落ち人』はチサと同郷だと思う。・・・お前みたいな、真っ直ぐの黒髪に黒目だ。・・・彼は5年前にこちらに落ちて来たばかりなのだが、かなり落ち着いて、馴染んでいるんだ。普通は、何10年経っても、不安定な所があるらしく、大概の『終末の魔道士』は『落ち人』を抱え込んでいる。大切な存在だから、絶対に傷付けたくないそうだよ・・・。」


なる程・・・。


てか、私はノルムさんの頻繁な溜息に傷つきまくりましたけどね?

・・・ま、いいけど。


でも、本当に同郷かなぁ???

ノルムさんにアジア人の区別なんかつかないだろう。

その人が日本人とは限らないのでは・・・?


でも・・・それでも、やっぱり会ってみたい!


「その方になら、お会いできるのですね?」


「ああ。『終末の魔道士』の方もよく知った奴だからな。・・・あ、あれだ。シャルロッテの婚約者の、ウィリアムと言えば、覚えているか?」


・・・。

シャルロッテさんの婚約者・・・?


「そ、それって、王子様、ですよね?」


私が驚いてノルムさんを見つめると、ノルムさんは片眉を上げて私を見つめる。


「・・・当たり前だろう?・・・『終末の魔道士』は王家の呪いだ。王族近辺にしか、この呪いは発現しない。」


そ、そう言えば、そうでしたね。





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