おまけの話ー野獣ハンター
今回りおは女性です。なのでBLとかないです。
某狩ゲーの世界観を参考にしています。
最後まで読んで頂けると嬉しいです(*^-^*)
私こと村中りお37歳は最近、寝不足である。
家事・育児・パート勤務で疲れ、やっと寝れたと思い瞼を閉じるとすぐに朝がくる。熟睡しているので体的には大丈夫なのだろうけど、前までよく見ていた夢を全く見なくなった。
そんなある日、パートが休みで家の片づけをして一人お昼ご飯を食べた後、急激に睡魔が襲って来た。三男 翔の保育園のお迎え時間に余裕はあるが買い物に行かないといけないので、ほんの少しソファで横になって仮眠をとる事にしたのだが……
ふわふわ
真っ白な世界に体が浮いている
こ…… これはもしや……
『りお、やっと夢を見てくれましたね』
紫色の光玉がふわふわと私の目の前に降りてきた。もうこの紫色の光玉スナレティムとは2年の付き合いだ。
「スナレティム…… 前に会ったのはいつだっけ?」
『たしか7か月前のオカマになった時かと』
ふ、その夢はまたいつもに増してクレイジーな夢だった事を私は思い出し苦笑いをする。思い出すだけでもゾッとする夢だった…… 夢に囚われた人がオカマで親に本当の自分が言えなくて夢に囚われている的な。私も男の体になってて何故かオカマバーで働いてナンバーワン売れっ子オカマになって、その夢に囚われていたオカマちゃんと一緒に親に会いに行って修羅場を乗り越え和解させるという話。
『りおは最近、夢を見ないみたいですね』
「そうなんだよー疲れているんだよぉー」
ワザとらしくグッタリ疲れた顔をするが紫色の光玉は私の周りをくるくるとまわり少し楽しそうだ。
『もう少し時間に余裕があると沢山夢をみれるのですが、お忙しいみたいなので早速……』
「……さっそくって、やっぱり?」
『はい。いってらっしゃーい』
その軽いノリで夢の世界に送り込むスナレティムもどうかと思うのだが、私ももう慣れたので諦めた表情を浮かべて軽く手を振ると自分の体と真っ白な世界がグニャリと歪み、どこかの誰かの夢の世界に落とされる。
願わくば年相応の女性の体でお願いします!
雲一つない蒼い空、体が落ちて行く感覚がして「よっと」頭をグイッと起こし地面があるであろう方向に足を向けて着地の振動に備える。
バッシャーン!!
ぶくぶく……み、水ですか!?
わ、私泳ぐの苦手なんだけどーーーー!
足をバタバタしてもがくように水面に顔を出すとどこまでも広がる水面に波、そういえば落ちるとき磯臭い匂いがしてた気がする…… 海だ。
私は焦って周りをぐるりと見回すと岸が見えたのでとりあえず安心して、岸の方に泳ぎ出した。泳ぎ出したのだが……ぜんぜん前に進まない(泣)
平泳ぎのつもりだけど、とにかく泳ぐのが下手くそなので波に負けて進まない。そうこうしていると体力がどんどんと無くなり精神的にかなり焦って下手くそなりに必死になって泳いだ。このままでは溺れてしまう…… 夢の中とはいえ溺れるの嫌です……
「大丈夫か!?」
岸から一人の青年が溺れかけてる私に大きな声で問いかけて来た。その青年の周りに黒いオーラが纏っている。一目でこの青年が夢に囚われた者だとわかったが、ぶっちゃけ私は今それどころではない。マジで溺れかかってる…… するとその青年が海に飛び込み私の元に泳いできて私の首根っこ部分の服をグイッと掴み岸まで運んでくれた。
た、助かった……
「げほげほ、あ、ありがとう……」
「自殺でもしようとしてたのか?なんだってあんな所で溺れかけてるんだよ」
自殺なんてそんなつもりはない。ただ、あのアホスナレティムの夢の落とし場所が適当すぎなだけだ!今度会ったら文句言ってやる!
青年が心配そうに私を見つめていると遠くで青年を呼ぶ声がした。
「おい!ケイゴ!!なに、そんな所でサボってやがるんだ!!」
ガタイが良く、鎧やらなんやら装備した男3人が歩み寄って来る。その態度は威圧的な態度でまるで青年を蔑んでいる目だった。
「すみません。溺れかけてる人がいたので」
「あぁ?死にたい奴は死なせとけ!それよりもお前、ちゃんと鉱石を採取したんだろうな?」
3人のうちの一人で真っ赤な髪を一つに束ねた一番強面の人がジロリと睨む。
「いえ、まだ…… あと少し」
青年の言葉が終わる前にドカッとケリを入れて青年が後ろに倒れ込む。私はなんてひどい事をするんだ!と真っ赤な髪の男を睨んだ。
「ぉ、おい…… こいつ女だぜ」
「え?マジで?」
短い黒髪をツンツンと立てている三人の中では細マッチョの男が目を丸くして珍獣でも見る目で私を見回す。私はその視線が気持ち悪くて顔を歪めて、まだ自分でも確認していなかった自分の体に視線を向けた。
確かに、胸のふくらみもあるし肌もそこそこぴちぴちしていて水滴をはじいている。恰好はだぼだぼのシャツに短パンといった感じ?かな。あまり綺麗な格好ではないのが残念…… いつも髪が濡れたら首元にまとわりついている髪がなく首元がスース―するからきっとショートカットなのだろう。
「珍しいなぁー女がコノ島にいるなんて。どこかの貿易船でも転覆して流れついたのか?」
「なんにしても、運が悪かったなーここには餓えた狼しかいないんでなぁ」
長い黒髪をぼさぼさに下ろした一番体のゴツイ男が私に手をのばす。その眼は本当に餓えた野獣の様で私は身の危険を感じて急いで立ち上がり逃げようとしたが、その方向にはあの青年が立っていた。
青年は苦しい表情を浮かべて少し俯いて私の行く手を阻もうと手を広げる。が、私はお構いなしに命を助けてくれた青年にラリアートをかまして倒し、走って逃げた。
「ごめん!!」
ゴツイ男たちは鎧だのなんだの体中に着けていたので身軽な私の方が足が速く、遠くで「待て!!」と言っているがとりあえず無視して無我夢中で逃げる。
あー私の夢って逃げるシーンが多い気がする……
どうやら逃げ切れたみたいで森の中に入り身を潜めて呼吸を整えた。この夢の世界観は女の私にとっては不利なようだな…… あんなゴツイ男ばかりしかいない世界だったらどうしよう(泣)
しばらくして、ここにいてもしょうがないと思い重たい腰を上げてさっきの海岸を覗きに行く。人が来たという事はもしかしたら街に繋がる道があるかもしれないし、どっちにしてもあの夢に囚われた青年をどうにかしないと私は戻れない。海岸にはもう誰もいなくなっていたので、ガタイのいい男たちが来た方向に歩いて行くと予想通り小さな小道があったのでそこを進む事にした。
海岸から森を抜け高原に出て街らしい建物が見えてきた時、マジで嬉しかった。しかし、ただ喜んでばかりもいられず、あんな男たちばかりいるような場所なら身の危険大である。私はコソコソと身を隠しながら街に入り込んだ。
さほど大きな街ではなく、数件の建物と露店と屋台と民家があるだけで一時間もあれば全部見て回れる程度の大きさだ。そこの住民は確かにマッチョ系が多く、女性はほんの数人しか見当たらず、その女性も恰幅のいいかなり強そうな女性だ。こりゃ、私のような普通体系の女が入れば浮くな…… これから、どうしようか家と家の間の路地裏で座って大きくため息をついていると背後にあった扉が急に開く。
「わ!?なんだい、あんた!」
「あ!スミマセン。ちょっと休憩してただけで……」
「あら?あんた女の子かい?」
恰幅のいい女将さん風の女性が私をじろじろ見て微笑んだ。その微笑みがとても感じがいい笑い方で私もつられて微笑んだ。
「はぁ、ちょっと諸事情でここにたどり着いて」
「一人じゃ危ないよ!行くところないんだったらウチきな!さ、おいで!」
半ば強引に部屋の中に招き入れられると、そこは調理場の様で簡単なテーブルとイスがあったのでそこに座るように言われた。女将さんが粗茶を入れて私に差し出すと
「私はここで食堂をしているマリガーナて言うんだけど、あんたそんな恰好でうろついてたら襲われるよ?」
「そのようで…… さっき襲われかけましたよ。あ、私は『りお』と言います」
「あはははは!もう経験済みって?」
「いや、未遂でしたがね…… ここで私が生きて行くのは難しいようですね」
まぁ夢だからなんとかなるんだろうけど…… 出来れば爽やかな綺麗な夢で終わりたいです。
「じゃぁ、うちで暫く過ごしたらいいわよ!食堂手伝ってくれたら、お給料だってあげるわよ!」
「本当ですか!?あ、ありがとうございます!」
こうして私はマリガーナさんの食堂でお世話になる事になった。寝る所があるだけでも助かるし、この街やあの夢に囚われた青年の事も調べることが出来る。
マリガーナさんは旦那さん(恐ろしくマッチョ)と二人で食堂を切り盛りしているらしく、丁度手伝いが欲しかったのだという。私は二階の物置部屋を借りれる事となった。
次の日、早速食堂の朝の準備を手伝ってお小遣い程度の賃金を貰う。私の恰好はとてもみすぼらしくその恰好で外を歩いてはいけないとマリガーナさんに怒られ、マリガーナさんと新しく服を買いに行くことになった。街を行き来する人たちは商人風の人かゴツくマッチョな冒険者?風の人の2パターンに大体分かれている。売っているモノも装備や武器や物騒なモノが多く私が着れるような普通な服はほとんどなかった。
お店のガラス越しに自分の姿をみると、ちょっと細身のショートカットの女性?といった感じだった。なんとかマリガーナさんと服を買って食堂に帰る時もゴツイ男たちの視線が痛かった…… 余程ほどよい女性がいない街なのだろう。
その後、お昼時になりいつも以上の客入りにマリガーナさんは喜び「やっぱ皆りお狙いかねー、悪いね、宣伝につかっちゃって」そう正直に話すマリガーナさんに私は家に泊めてもらっているのだからこのくらいとお安い御用と言って食堂のウエイトレスを手伝った。そんな私の噂は一日で町中に広がり、なんと隣町からも客がくる始末にちょっと引いた。
そ、そんなに年頃の女子はいないのか!?
食堂の後片付けをしているとお店の外でマリガーナの怒鳴り声が響き渡る。
「さぁー帰った帰った!!りおは誰とも会わせないよ!!」
ははっと乾いた笑いを浮かべ大量に溜まった食器を洗い片付ける。マリガーナさんが店に戻ってきたので私は「すみません」というとマリガーナさんは大きな声で笑い「あんたが謝る事なんて何もないよ!ありがとね!」と言って一緒に片づけをしてくれた。
「あ、マリガーナさん。ちょっと聞きたい事があるのですが」
「なんだい?なんでも聞いて」
「なんで皆さんあんなに武装してるのですか?戦争かなにか?」
「あんた、そんな事も知らないの?どこのお嬢様かい?野獣との闘いだろ?」
「野獣……」
「ここいら一帯で繁殖している大型野獣を討伐してお金にしてるのさ」
「あーなるほど……」
いつか、やったことがあるゲームの世界観に似ていると思った。
「あの、私よりも少し大きくて細身の青年見覚えないですか?赤髪の人と一緒にいた……」
「細身の?あーガロンん所のケイゴかな?最近見るようになった青年だろ」
「そうそう!確か、ケイゴさんです!」
「なんだい?りおはあんな感じの子が好みなの?」
マリガーナがニヤリと笑うと私は全力で首を横にふり顔を引き攣らせる。
「違いますよ!溺れかけた所を助けてもらったのです」
「溺れかけてた?海で?」
「はい。」
「……よく海獣に食べられなかったわね」
「え…」
どうやら海には海の大型野獣がいるらしく、海で泳ごうものならバクリと食べられてしまうらしい。そんな危険を冒してでも助けに来てくれたケイゴさんは……やっぱりいい人なのかもしれない。私はそんないい人かもしれないケイゴさんをこき使っていた獣の様な目をした三人になんで従っているのか疑問に思った。
次の日の昼、食堂にガロンたち三人とケイゴさんがやって来た。ケイゴさんの顔にはいくつか痣が出来ており、おそらく殴られたのだろう。その理由が私を逃がしてしまった事かもしれないと思うと、心が痛い。
「よぉ、ねーちゃん。また会ったな」
私が注文された定食を届けると赤髪の男が私の腰に手を伸ばす。私は顔をひくっと引き攣らせて大人な対応をしてテーブルに定食を並べる。その時ちらりとケイゴさんの顔を見たが少し困った顔をして俯いていた。
「なぁ、今晩俺達と飲みに行かないか?奢るぜ?」
「結構です」
「良いじゃないか、一晩ぐらい。なぁケイゴ?お前はこいつの命の恩人だよな?」
「……ぁぁ」
ガロンが触っていた手が腰から下にさがる感触がして私は顔を歪めると台所から包丁が飛んできてガロンのすぐ横をかすめて壁に突き刺さる。
さっきまでガヤガヤしていた食堂はシーンと静まり返り包丁が飛んできた方向を見ると鬼の形相のマリガーナが仁王立ちしていた。
「ガロン、うちのりおに手を出すっていうんなら帰んな!!!」
こ、、、、こわ。
流石のガロンも渋々と手を私から離し、黙って定食を食べ出した。マリガーナさんは絶対怒らせてはいけない人だな。
食堂の手伝いをしながらケイゴさんを観察しているとやっぱりガロン達の言いなりになっているようで、服装もガロン達は超武装しているがケイゴさんは貧相な格好をしている。私は不思議に思ってマリガーナさんに聞いてみた。
「あーたぶん下僕的な扱いじゃないかい?ここじゃ力が強くないと野獣は倒せないから、弱い者は強い者の力を借りて生きて行くしかないんだよ……」
夢の中で下僕って…… そりゃ夢に囚われるな。自分でどうにかすればいいのにっと簡単に私は考えるけど、それが出来ない何かがあるのだろう。私はその何かを聞き出して解決しなくてはならないのでケイゴさんに近づく事にした。
マリガーナさん情報によればガロン達はこの街の隅の家に今は拠点を置いているらしく、夜もそこで寝泊りしているらしい。私は夜中こっそりとその家に忍び込みケイゴさんの寝床を訪ねる事にした。勿論、ガロン達にバレない様に……
家の外で中の様子を伺うとガロン達が酒を飲んで騒いでいて、その奥でケイゴさんが色々家の事をしている。寝る部屋はおそらく一番狭い所だろうから物置か地下って所かな?コソコソと家の裏に周り二階に上がれそうな所を探す。そうこうしていると、ガロン達が酒に酔いつぶれて来たのでケイゴさんが部屋に戻る様子が窓から見えた。私は家全体を観察してどこの部屋の明かりが点くか確認していると二階の更に上にある小窓から小さな灯が漏れる。
あそこかーちょっと高い位置だな……
とりあえず、さっき見つけた二階に上がれそうな配管がある所から二階に上がり窓からコッソリと侵入して更に上の階を目指す。もうこんな泥棒みたいな事が普通に出来るのはやっぱりこれが夢だとわかっているからであって現実では絶対無理だな…… 私の予想通り、物置の様な屋根裏部屋がケイゴさんの部屋だった。
今にも壊れそうな梯子をのぼりヒョッコり顔を出すと小さな蝋燭の明かりが一つ灯されており、その横に布が敷かれた布団?のようなモノの上にケイゴが横になって何か本を読んでいた。
「夜分恐れ入ります~」
「……な!?」
私は小声で挨拶をするとケイゴさんは驚き大きな声を上げようとしたので急いで上がって口の前でシーっと右手の人差し指を立てる。
「すみません。ちょっとお話がしたくって」
「ぇーっと」
私がヘコヘコと頭を下げるとケイゴさんはまた困った顔をして入り口に薄い板をかぶせた。おそらく、これが扉的な役割らしい。
「な、何か?」
「まず、改めてお礼を。溺れかけている所を助けて頂きありがとうございます。本当に死ぬかと思いました」
「あぁ別にいいよ」
「実はここからが本題で、ケイゴさんあなた夢に囚われていますよね?なんでですか?」
もうこんな深夜に男の人の部屋に侵入している私は変な誤解を避けるためド直球で聞いてみる事にした。
「……囚われてる?俺が?」
「はい。夢から出たくない、もしくは夢に留まっていたい何かがあるはずです」
「……夢?この世界が?あぁそうか、そうだよね……じゃないとこんな居心地がいい訳ない」
居心地がいい?あんなひどい扱いされているのに??私は不思議に思って少し首を傾げるとケイゴさんはフッと悲しい笑顔を見せた。
「俺は倒したい野獣が居るんだ。世話になった人をケジュン(そいつ)に殺された。だが、俺だけの力じゃとても敵う野獣じゃなくて……ガロン達にくっついていればチャンスがいつかあるかと思ってね。あぁ見えてもこの街一番の冒険者なんだ」
なるほど、そのケジュンって野獣を倒したら夢から解放されると…… と、なると私もそれに協力しなくてはいけないって事になるな。
「それよりもこんな所にいたら危ない。早く帰った方が」
「おーい!ケイゴ!!」
遠くからケイゴさんを呼ぶ声が聞こえ足音が屋根裏部屋に近づいて来る。私とケイゴさんはヤバいっと目を合わせて私は急いでケイゴさんの部屋の隅にある荷物に隠れその上からケイゴさんが布をかけてくれた。
ぎしぎしと梯子を上がる音がして置いていた薄い板を乱暴に跳ね除ける。
「うぃっく。ケイゴ、寝てたのかぁ?誰がもう寝て良いって言ったかぁ?うぃっく」
その喋り方からかなり酔っぱらっているようだ。
「すみません。お酒がきれてしまいましたか?買ってきましょうか?」
「あぁ?酒はまだまだあるぞぉーほら、お前も飲め!!」
私は布の隙間から二人のやり取りを覗いていると、どうやら上がってきたのは黒髪ツンツン大男のようだ。ケイゴさんに持っていた一升瓶の口をぐいぐいと顔に押し付けて飲ませようとしている。
「お、俺酒飲めなんですって」
「なんだとぉー?俺の酒が、ういっく、飲めないだとぉー!?」
黒髪ツンツン大男は一升瓶を横に振りかぶりケイゴさんの顔を瓶で殴りつけ、ケイゴさんは狭い屋根裏部屋の壁に体を打ち付けた。
うわぁ、痛そう…… なんて奴だこいつ……
私は怒りをなんとか抑え、息を潜めて睨んだ。
「お前ただでさえ役に立たないんだからなぁー俺らの言う事きいてりゃいいんだよぉ!!あーそうだ!食堂の娘連れて来いや?お前なら何も出来なさそうだからホイホイついて来るんじゃねぇーか?俺たちが可愛がってやるからよぉー」
……ムカつく。今年一番のムカつきを感じ私の怒りはかなりピークになりつつあった。でも、ここで出てこのバカクソ大男を罵った所で自分の身が危険になるとわかっている。それでも殴りたい!!蹴飛ばしたい!!
ワラワラと怒りが湧きあがって来る。
「そうですね。でも食堂のマリガーナさんが黙ってないかと…… 今度誘うだけ誘ってみます」
マリガーナという言葉を聞いて大男は一瞬顔をヒクっと引き攣らせる。よほどこの街ではマリガーナさんは最強らしい。「あぁ、そうしろ」とテンションが下がった大男が酒が切れたから戻ると言って渋々と狭い屋根裏部屋を出て行った。足音が完全になくなるまで待って私はゴソゴソと布を外すと左頬を赤く腫らしたケイゴさんが小さく微笑む。
「聞いただろ?俺は君を誘ってあいつらの餌食にしないといけないんだ。俺にかかわらない方がいい」
そうしたいのは山々だけどね。ケイゴさんの問題を解決しないと夢から帰れない以上私もケジュンを倒すことに協力するしかない。その為にはあの大男達を利用するか…… それとも、自分でどうにかするか。
「また来るわ。じゃ!」
「え?」
私は梯子を下りてそそくさと帰って行った。
次の日、マリガーナさんの食堂の手伝いをしながらケジュンの事を聞いてみた。
ケジュンはこの島で一番強く大型な野獣らしく、いわゆるボス的な感じらしい。気まぐれな性格でどこに出没するかも予測できず、出会ったら逃げるしかないといわれるほど強い。そんな相手に挑んで死んでいった冒険者は数知れず、最近では倒したものはいない。
そんな相手をどうやって倒せっていうんだよぉ……
「マリガーナさん、私でも冒険者ってなれるの?」
「え?りおが??無理無理ー冒険者の称号を得るには試練ってのがあってね、それをこなせないといけないんだけど、あんたみたいなヒョロヒョロには絶対無理よーあはははは」
豪快に笑うマリガーナさんに私は口を尖らせてブーブー言った。街の片隅に依頼所があり、そこで試練を受けてソレをこなせば冒険者として認めてもらえるらしい。私は冒険者の称号がないから、今の所ただの村娘といった所かな?とりあえずお昼後の休憩時間にどんな試練かだけでも聞いてみようと依頼所を訪ねてみた。依頼所の中ではゴツイ冒険者が数人いて雑談したり、依頼をうけたり、換金したりしており、私が中に入ると一気に視線が私に集まる。
「マリガーナの所の看板娘じゃねーか」
「ここはあんたがくるような所じゃねーぜ?がはは!」
やじの様な茶化される声を聞き流しぐるりと見回すとカウンター越しに座て居る若い男の人がどうやらここで案内してくれる人らしい。
「おや?噂では聞いているよ。食堂に若い娘が来たって。会ってみたかったんだー」
「冒険者の話ってここで聞いてもいいのですか?」
「はい。なんでしょう?」
「冒険者になる為の試練ってどんなのですか?」
「……?どうして?」
「冒険者になれたらなろうかと……」
私の言葉に周りがドッと大笑いを始めた。もうバカにされて笑われているのはわかるが不愉快極まりない。私はムッとして周りの奴らを無視して若い男の人を見た。すると、その人は笑っておらず目を細め真剣な顔をしていた。
「なれたらなろうなんて生半端な気持ちじゃすぐに死ぬだけだ。そんなに冒険者は甘くない」
私は周りに自分をバカにされた事と案内人に責められた事で決意が固まった。生半端な気持ちじゃダメだ。その通り!
「……じゃ、なります。試練教えて下さい!!」
案内人は私の言葉に目を開き驚き、笑っていた周りも笑いを停めてジッと私を見ていた。
「ロロルという小型の野獣の角を10個、納品出来れば冒険者認定される。ただ、ロロルが小型だが肉食で人間を襲って食べる事もある狂暴な奴だ。そんな奴位倒せないと冒険者にはなれない」
「ロロル、どのあたりに生息していますか?」
「……それも自分で探すんだ。いいかい?命は一つしかない。無駄にすることはないんじゃないか?」
夢の世界で死んだらどうなるのだろう…… 普通の夢だったらアー悪夢だった…… で終わるのだけど、この場合もそんな感じかもしれない。だけど、私は夢に囚われたケイゴさんを置いて目覚めるつもりはない!あんなゲスガロンたちに力を借りなくても私が冒険者になってケイゴさんを手伝おうと決めたのだ。
私はとりあえずロロルの情報が欲しかったので一旦食堂に戻りマリガーナさんに聞いてみる事にした。朝の時点で大爆笑していたマリガーナさんは私が冒険者の試練を受けることを告げると依頼所の案内人と同じように真剣な顔になった。
「なんだって冒険者なんかに……」
「色々事情があって…… 私は見ての通りヒョロヒョロなので腕力では絶対無理だと思っています。だから、弓矢と罠で何とか出来ないかと」
「弓と罠ね…… 本当は危険な事して欲しくないんだけど、あんたの眼マジだからね。私は好きよその眼」
そういうと物置の奥から古い弓を取り出して私に差し出す。ほこりと汚れでくすんでいる弓に弦は張っていない。
「これ、私が若い頃使ってた奴。弦はお店で買いな。出来るだけ高いのがいい、あと矢は自分で作りな。作り方は後で教えてあげる。罠は旦那が専門分野だから後で教えてもらうといいよ」
「マリガーナさんも冒険者だったの?」
「まぁね、若い頃の話さ。さ、食堂の下準備もあるから急いでやるよ!!」
そして、ここ数日はマリガーナさんに弓の手入れと矢の作り方を教わり、旦那さんに野獣に効く罠を教えてもらった。簡単な装備を買おうと思ったのだが食堂で働いたお金だけでは足らないのでマリガーナさんが前貸をしてくれて何とかロロルに噛まれても多少大丈夫な装備も手に入った。その間、私が冒険者を目指しているという噂を聞いて手助けしたいと言い寄って来る冒険者たちがわらわらとやって来たが私は全部お断りをした。だって、これくらい私一人で何とか出来ないとこの先絶対無理だ。
ロロルは小型の野獣でゴッツい鹿のような姿をしていた。街はずれの草原で繁殖しており、普段人が通らない草むらで集団で生息している。私はマリガーナ旦那さん直伝の罠を仕掛けてロロルに向けて矢を放つ。すると私の方に突進してくる足元の罠で捕えて角を狩る。それを繰り返せば、案外あっけなく10個集まった。慎重にかつ、油断しなければこのくらい素人でも出来る。マリガーナさんはそう言っていた。ただ、野獣相手は予想外の出来事が多く…… 角を持って帰ろうとしていた私の目の前に大型のロロルが姿を現した。
おそらくこの群れのボスなのだろう。私は急いで近くにあった大きな石の裏に身を隠したが、物凄い勢いでロロルボスがその石に突進して石を粉砕する。
その威力に私も軽く体が飛ばされるが受け身を取って別の石の後ろに隠れた。
まともに戦ったら間違いなく殺されるなぁ……
あーゲームの中の主人公ってこんな大変なんだねー
苦笑いを浮かべ、カバンの中に入っている閃光丸という罠をロロルボスに投げると強い光で野獣の眼がくらむ。その間に野獣の背後に回り込み、急いで罠を仕掛けて出来るだけ遠くに走って逃げた。この罠はマリガーナ旦那さんのとっておきの罠と言っていた物で目が見えるようになったロロルボスが私に突進しようと追いかけてくると罠が発動し連続的にロロルボスの周りで爆破が起こる。これで倒せなかったら逃げるしかない。遠目で様子を見ていると煙の中からロロルボスは私の方に突進してくる姿が見え、とっさに弓を構えてその眼を狙う。一本額に当たっても尚、突進してくるロロルボスに私は次の行動を無意識に取っていた。もう一本、マリガーナさんに作ってもらったとっておきの矢を構え狙いをつける。
逃げればよかったかも……いや……
放たれた矢は炎を纏ってロロルボスの目を貫いた。炎を出す矢なんて、これはマリガーナさんのオマケ付きって言って作って矢だ。
すごい!!
ロロルボスがゆっくりと倒れる姿が見えて私は助かったっと胸を撫で下ろす。
初めての野獣との闘いを終えてロロルボスの超貴重な素材を手にして街に戻り依頼所に角とオマケの超貴重素材を納品した。依頼所の案内人はそんな私を見て微笑み
「おめでとう。君は今から冒険者だよ。私の名前はティティ、よろしくね。それにしてもロロルボス倒したのか……たった一人で?」
「まぁね!あ、その顔信じてないでしょ!?」
「ははは。そんなことーないかな?」
ティティはなかなか食えない奴らしい。しかし、これで私は冒険者となったのだから、今度はあのガロンたちよりも強い野獣を倒せる冒険者を目指すことにした。ティティは実はなかなか良い人だったらしく、私にあった依頼を適切に案内してくれるので、食堂の手伝いの合間で着実に冒険者としての実績を上げていくことが出来た。依頼をこなし素材を売って新しい罠や矢の材料を買う。コレを繰り返していると、意外と早く名の知れた冒険者に成り上がっていた。
この辺、やっぱり夢だから?
そんなある日、食堂でご飯を食べていた冒険者達の噂話が聞こえた。
「聞いたか?ガロンたちケジュンに出くわして一人囮にして逃げ帰ったらしいぜ」
「まぁ相手がケジュンじゃなぁー」
ひとり囮?
私は運んでいた定食を持つ手に力が入り小さく震えた。ガロン達の事だ、囮は間違いなくケイゴさんだろう。無事なのだろうか?心配で居ても立っても居られないのでマリガーナさんにお願いして早めに手伝いを終えてガロン達の家に向かった。
窓からこっそりと覗き込むとガロン達は留守のようだったので、二階に忍び込み屋根裏部屋に向かった。すると薄っぺらい布団に横たわっているケイゴさんの姿が見えて急いで駆け寄る。
「大丈夫!?」
服は破れて傷だらけになり横たわっているケイゴさんは近くに行かないと息をしているか確認できない程衰弱していた。私はマリガーナさんおススメの万能回復薬(超高級品)を無理やりケイゴさんの口に当てて飲ませようとするが中々口を開けてくれない。
ケイゴさんは薄らと瞳を開けて私の存在を確認すると弱弱しく笑いを浮かべた。
「まったく。こういうシーンで優しく口移しで薬を飲ませてあげるのは漫画の世界だけよ」
私の言葉に少し顔を赤くして驚いた顔をしたケイゴさんの口を無理やり開けて薬を投げ込み持ってきていたお茶を無理やり流し込んで飲ませる。
ごほっごほっ!!
むせながらも薬を飲んで横たわるケイゴさんの背中をさすり
「この薬高かったんだからね!一晩もたてば元気になるだろうってマリガーナさんが言ってた。ケイゴさん、ガロン達と一緒に居てもケジュンは倒せない。私と一緒に来ない?」
「……」
「聞いてるでしょ?私の噂。これでも一人前?の冒険者よ!食堂の看板娘兼任だけどね」
ニッと笑う私にケイゴさんは目を逸らして布団に潜ったので私は小さくため息をついてケイゴさんをゆっくり休ませるためにも屋根裏部屋から帰る事にした。
その次の日の朝、食堂の下準備をしていると裏口の扉から小さくノックが聞こえマリガーナさんが扉を開けるとそこには小さな荷物を持ったケイゴさんがバツの悪そうな表情を浮かべて立っていた。
「あら、本当に来たねーりお、あんたの言う通りだ」
「ふっふっふ、いらっしゃい!ケイゴさん」
正直自信がなかったけど、ま、結果良ければ全て良し!
こうして、ケイゴさんもマリガーナさんの所でお世話になりながら私と冒険者としての依頼をこなして着々と経験を積んでいった。その間、ガロン達から何度もいちゃもんを付けられたがマリガーナさんの力は絶大な上に他の冒険者さんも何かと庇ってくれたので事無く終えた。
ケイゴさんは男なだけあって私よりも力があるがそれでも大剣を振り回す事は出来ないので双剣を使う事をマリガーナさんに勧められた。しかも頭がいいのか罠を仕掛けるタイミングや設置場所はいつも的確で私のように数内当たる作戦ではないので材料も節約出来て助かった。
中級依頼を終えて依頼所に納品に行くと最近仲良くなったティティが気さくに話しかけてくれ色々な情報をくれる。
「お、今日はノノンゼルガの羽根が追加納品かい?運がいいねーなかなか落とさないレアじゃないか」
「乱射した私の矢がたまたま当たってねーラッキーラッキー」
自慢げに話しているとケイゴさんがゲンナリした顔をして
「その矢の一本が俺の尻に刺さったけどね……」
ははは。ごめん……
そんなほのぼのした会話をしていると、ティティが少し真剣な顔をして一枚の紙を取り出してスッと私に差し出した。そして小声で
「りおが探しているケジュンの出没場所のマップ。極秘事項だからね」
「ティティ…… ありがとう。今度食堂の定食奢るよ」
「大盛りだよ。それよりも本気なのか?ケジュンに挑むって」
私とケイゴさんは視線を合わせて頷いた。ケジュンの出没場所をこまめにチェックして回り、罠を仕掛けてみるとあるパターンで巡回している事にケイゴさんが気が付く。私たちはそのパターンを元にある個所に多量の罠を仕掛けてケジュンに挑むことにした。私とケイゴさんは出来るだけの装備を準備してそのポイントに行くとあらかじめ設置していた罠が全て発動していている事に気が付く。
「これ全部ケジュンにダメージが当たってたらいいんだけどねー」
「りお…… 何度も言うけど無理だと思ったらすぐに逃げるんだ。俺を置いてでもね」
両腰に掛けている双剣を握りケイゴさんが目を細め警戒する先に大きな黒い虎に何本も角が生えた禍々しい野獣が姿を現した。私はこんなにデカい野獣を見たことがなく一瞬呼吸をするのも忘れて凝視して固まってしまった。
「来るぞ!!」
ケイゴさんの怒鳴り声でハッと気が付き急いで走って木の陰に隠れてケイゴさんと二手に別れる。ケジュンは私よりもケイゴさんを狙って飛びかかって行ったので、私は急いで新しい罠を張り巡らせる。ケイゴさんが数発のケジュンの攻撃を交わしつつ罠に引き付けるが鋭い爪がケイゴさんの肩をかすめ吹っ飛ばされた。
「ケイゴさん!」
「だ、大丈夫!!」
私はケジュンの二発目がケイゴさんに当たる前に弓を構えてケジュンの気をこちらに向けるため矢を放つ。正直あんな化け物に襲われたら多分無事ではすまないのだが、罠がこちら側にある以上こっちに来てもらわないと困る。自分が仕掛けた罠の爆風で死ぬ冒険者もいるぐらい強力な爆弾入り罠なので私にケジュンが飛びかかると同時に横に飛びのき大木の後ろに急いで隠れ罠を発動させた。連鎖的に発動する罠は大きな爆音と共にケジュンの周りに火柱が上がる。この一回の罠で倒せるとは思ってないけど、出来れば瀕死ぐらいにはなってほしい……
グヴぁーーーー!!!
大きく力強い雄たけびが響き私の隠れていた大木がなぎ倒され、伏せていた私の上をかすめて飛んでいった。
うわーめっちゃ元気……
急いで起き上がり横の岩の後ろに隠れたがケジュンはそれを見逃さず口元からヨダレを垂らしながら私に嚙みつこうと凄い勢いで突進してきた。
ヤバい!!
噛みつかれる瞬間ケイゴさんの方から閃光丸が投げ込まれ、ケジュンは一瞬目がくらむ。私も眩しくて目がチカチカするが何とか岩の後ろに隠れると腕を強引にひかれて違うところに連れて行かれる。
「ケイゴさん?どうするの!?」
「りおは目が治ったら罠をもう一回張って!それまで俺が何とか食い止める」
肩から赤いシミが広がっているケイゴさんの傷は決して浅くはないだろう。しかし、罠を仕掛けるのには必ず時間が必要で私は頷くとチカチカする目を無理やりこじ開けて次の罠を仕掛けるポイントに走った。マリガーナ旦那直伝の最高クラスの罠を出し惜しみなく使ってやる!
ケイゴさんが何とか時間稼ぎをしてくれたおかげで最後の罠を設置し終わった瞬間鈍い音が響く。私は嫌な予感がしてその音の方向を見るとケジュンがケイゴさんを踏みつけている。
サッと血の気が引いて私は急いで弓を構えてケジュンの目を狙って矢を放つとケジュンは矢に気が付き飛び退いた。そして私めがけて飛びかかって来るので煙玉を使って視界を遮り横の岩場に隠れた。ケイゴさんが気になるが今はこの罠をケジュンに当てることが先決だと判断して、罠のポイントにケジュンが足を踏み入れると同時に最後の罠を発動させる。その瞬間私はケイゴさんも元に駆け寄り体を抱きかかえ引きずりながら別の岩場に身を隠した。
「ちょっと!しっかりして!!」
「う、うう」
あんなバカでかい野獣に踏まれたのだから骨は数本折れているだろう…… 傷だらけでボロボロなケイゴさんの意識は朦朧としており私はほっぺたをペチペチと叩いた。
「とりあえずコレ飲んで!強力な鎮痛剤だから、一時的に体が動かせる。逃げるよ!」
私はポーチから赤い玉の薬をケイゴさんの口に落ち着けると意識がハッキリしてきたケイゴさんは苦痛な表情を浮かべて飲み込んだ。そして、私の肩を掴みギュっと抱き寄せる。
「……俺が片をつける」
ケイゴさんは身に付けていた上衣装備を脱ぐとベストに爆弾を縫いつけていた。
私はケイゴさんが自爆するつもりだとすぐにわかり、毛が逆立つぐらいの怒りを感じ、よろめきながら立ち上がろうとするケイゴさんの胸ぐらを両手で掴み睨んだ。
「っふざけんな!!生きて最後の一分一秒まで死ぬ気で頑張れ!!」
私の怒鳴り声に驚き目を見開き固まっているケイゴさんのベストを私は乱暴に引き裂き脱がすと岩の上に駆け上る。ケジュンは最後の罠でかなりダメージを受けて半狂乱状態になって私に突進してきた。私は持っていた爆弾付きベストを思いっきり投げ炎の矢をつがえて放つとケジュンの顔の前で爆破する。それでもケジュンの突進は止まらず私の頭めがけて大きな口を開けて飛びついて来た。
食われる!!
……グギュ
目の前にケジュンの大きな口の中にケイゴさんが右手で双剣を突き刺さしていた。ケジュンは白目をむいてドシンっとゆっくり倒れ込む。
「た、倒した?」
「……ああ」
腰が抜けてペタンと岩の上に座り込む私にケイゴさんは振り向き曇りひとつ無い笑顔を見せてくれた。黒く纏っていたオーラが消えていくのがわかり、これで夢から解放された事がわかる。
「りお、ありがとう」
私はへらっと笑って手を振った。
いつものパターン通り世界がぐにゃりと歪み真っ白な世界に強制的に戻される。
『お疲れさまです。りお』
ふわふわと私の周りを飛んでいるスナレティムに私は目を細めて睨む
「マジで疲れた……肉体的疲労感半端ない」
『そうですね。また次は半年後位だと思うのでゆっくり休んで下さい』
……おい、勘弁して下さいよぉ~ボランティアじゃ割に合わない!
ふと目を覚ますと自分の家のリビングで眠っていた事を思い出す。起き上がろうとすると体の節々が痛い……気がする。気のせいとわかりながらも重たい腰を上げて買い物に行くことにした。
そして、その数日後……
小学生5年の二男、春馬が友達の家にゲーム機を持って遊びに行って帰って来た。
「母さん、母さん!見てこれ!すれ違い通信に面白いメッセージがついてたよ」
私はそのメッセージを見てクスリと微笑んだ。
KEIGO『りお、おれはじゅけんにかつ!!』
~おしまい~
久しぶりに夢の番人代行中を読み直して、衝動的に書いたオマケです。恋愛要素がないってのが寂しいですが許して下さい~戦いのシーンも全然ダメダメで……言葉で伝えるって難しいですね(>_<)また、ある日突然気が向いたらおまけの話書きたいです!!
最後まで読んで頂きありがとうございます!




