勇者再び―罠
りおは見た目は男子でも中身は女子です!
「おい・・・起きろ」
うーん・・・・・寝たばかりなのに起こさないでよ・・・・・
目をうっすら開けると目の前に黒髪の若い青年が見えた
何処かで見た事が・・・・・
でも眠い・・・・・ぐーぐー
「こいつ・・・・・いい加減起きろ!犯すぞ!」
その乱暴な言い方にカチンときた私は思いっきり機嫌悪く起きる
「はあ?何よ!人が気持ちよく眠ってたのに!」
目の前にいる男はまるでRPGゲームの中の勇者の様な格好をしていた
勇者?
「あれ?勇者がいる・・・・・?ココドコ?!」
辺りを見回すと私は洞窟の中に寝ていた
勇者が使っていたであろうマントがかけられている
「やっと起きたか・・・・・お前、前に会った事があるリオだろ?」
勇者がため息混じりで私を見て言った
「そういう、勇者も・・・・・あれ?ヒカリくんは?」
周りをキョロキョロ見るが私と勇者しかいない
この勇者は私が初めて夢の番人の代行をした時に出会った事があった
初めて一度見た夢の世界にまた来た
「ヒカリとは魔王を倒して解散した。今は俺ひとりで取り残した宝回収してる所。てか、ヒカリから聞いた・・・・・アイツ中身男だってな・・・・・でお前は・・・・・女だろ?」
「え!」
何でわかるのだろう?
私は自分の身体を触り性別を確かめる
うん、やっぱりこの夢では私は男らしい・・・・・
恐る恐る勇者を見るとニヤッと笑い
「寝相が可愛いかったのと、寝起きの口調で確信した」
「はぁ。で、その何で私ここにいるのでしょうか?」
確か私は家で寝てたはずですが・・・・・
夢の番人みたいに真っ白な世界にも行ってない
これは只の夢?
「・・・・・俺はこのダンジョン攻略してただけで、お前がココで寝てたんだよ」
不機嫌な答える勇者
うーん。全然状況がわからん
「とりあえず、ありがとう?」
と、マントを返した
勇者はマントを受け取り、ダンジョンを出るから付いて来いと言われた
ダンジョンを出ると広い荒野に出た
村までは遠いらしく今日は野宿だという
「魔王倒したけど、まだモンスターいるから気を付けろよ?まあ、ちなみに俺はレベルカンストしてるから平気だけど、お前村人だろ?」
「う・・・・・たぶん村人です」
戦闘能力なんてないですよ
若い男とはいえ、普通の村人がモンスターに襲われたらひとたまりもないだろうな
勇者はそんな私を見て
「仕方がねーなー」
と小さなテントというアイテムを出す
「ふたり寝るのは狭いけど、ガマンしろよ」
どうやらテントで寝てもいいらしい
「あ、ありがとう。えーと、名前なんだっけ?」
そう言えば勇者の名前知らなかった
「・・・・・テル」
と、恥ずかしそうに答える勇者
「テル、ありがとう!」
私は色々良くしてくれるテルに笑顔でお礼を言った
テルは頬を染め視線を逸らした
狭いテントでふたり寝るのはギリギリなサイズだった
それでも私は睡魔が襲ってきて直ぐに寝れた
眠りの中、唇に何か当たる感触がしたが気にせず再び眠りについた
次の日、無事に村に付く事が出来た
私はこの夢で何をしたらいいのかわからないままだったが、村に居れば身の危険はない
「テル、ありがとう!何かお礼がしたいんだけど・・・・・今何も持ってなくて」
私は申し訳なく思ったが勇者テルは別に何も要らないと言って
「しばらくこの村で暮らすのだろう?俺もこの周りのダンジョン攻略してるから、困った事があったら連絡寄こせよ」
と、魔法のメールというアイテムをくれた
なんだかんだで、いい奴だなー
勇者テルと別れ、私は村に住まわせてもらえるよう村長さんに頼みに行き何とか了承を得た
村に住める様になって数日後
勇者テルがお土産たっぷり持ってやって来た
ダンジョンで見つけたらしいお宝が沢山だが、お金にも困っていないテルは全部私にくれるらしい
タダで貰うのも申し訳ないので、手作りご飯をご馳走する事にした
「リクエストは?」
「そうだなー豚汁かな」
と、笑うテル
豚汁ってオカズにならないよね・・・・・と思いながらも作って一緒に食べた
「うま・・・・・」
「でしょー?さ、いっぱい食べて!」
「りおも食べたい・・・・・」
聞こえるか聞こえないか位の声でテルが呟く
「え?なに?」
「いや、りおも食べたらって言った」
「おー!食べる食べる!」
中肉中背の男の体だから代謝もよく、いくら食べても太らないのが嬉しい
ふっと勇者テルを見ると目が合う
勇者テルは目を逸らさず熱の籠った瞳で私を見た
「な・・・・・なにか?」
見つめ合う形になったので恥ずかしくなり目線を少し逸らす
「りお、苗字なんていうの?」
勇者テルは豚汁を置き、頬杖をついた
「え?村中だけど・・・・・」
「・・・・・旧姓は?」
なんでそんな事聞くのだろう?個人情報がっとちょっと思ったが夢だしまぁいいか
「大野・・・・だけど?なに?」
その名前を聞いた勇者テルの顔がニヤけていき最後には声を出して笑い出した
「あははははは!やっぱり!!通りでー」
あまりにひとり爆笑する勇者テルに私は少し引き気味で困惑した
「りお先輩、俺ですよ。中学でひとつ下の中村輝明」
中村輝明・・・・・中学・・・・・うーん。私はあまり記憶力がいい方ではないので中々出てこない
そんな私に少しムッとして
「陸上部の後輩。一緒に県大会の合宿行ったじゃないですか!」
おお!陸上部の!
「ごめんごめん。あまり記憶力良くなくってー」
かれこれ20年前の記憶なんて・・・・泣
「アイツの言った事、本当だったのか・・・・・」
独り言のようにつぶやく勇者テル
アイツ?
私が何か聞こうとしようとしたら、勇者テルは笑みを浮かべ
「せめて、夢で逢えたらって思ってたんですよ。あの時言えなかった事を、俺の初恋を伝えたくて」
私を見る目が鋭く熱がこもる
「アイツ、夢の中だから好きにしていいって言ったんです」
そういうと、勇者テルは静かに立ち上がり私の元に来る
私は言いようのない不安と嫌な予感がして、椅子から立ち上がる準備をした
「ちょ、テル・・・・・じゃなくって中村くん?」
「テルでいいですよ、りお先輩」
どんどん近づく勇者テルに身の危険を感じ、席を立ち後退る
壁際に追いやられ、両腕に囲まれる
勇者テルと私は同じぐらいの身長だ
目の前の鋭く黒い瞳に私は恐怖を感じた
「ずっと後悔してた。中学の時、先輩に告白しなかった事。俺、中学の時先輩好きだったんですよ」
「そ、そうだったんだ。し、知らなかったよー」
ひーーーー誰かこの人を除けて下さい!
近すぎて怖いです!
男同士の壁ドンって、見るのはいいけど体感するのは遠慮します!
怯える私をみて勇者テルは目を細めた
「やっぱ、男じゃ嫌だ・・・・・」
その言葉に私も小さく頷く
そ、そうだろう。ヒカリくんのような可愛い女の子の容姿をした子がいいだろう!
健全な男子はそうだろう!
私からスッと離れていく勇者テルを見て安堵した
こ・・・・・怖かった・・・・・
私は動揺しまくっている自分が少し恥ずかしくなった
「カルロイヤ、なんとかならないのか?」
!!
カルロイヤ!?私はその言葉を聞き、勇者テルの視線の先をみる
そこにはなんと、赤い瞳の黒猫がいた
一体いつから?っていうかカルロイヤ!?
私はその猫を睨むと猫は目を細めゆっくりと勇者テルに近づく
『まったく我儘だねテルは。この夢では無理だよ?いいじゃないか、男だって中身は変わらない。りおを自分の物にしたいのだろう?』
その言葉に勇者テルは苦い顔をした
「テル!カルロイヤのいう事を聞いてはダメ!そいつは悪い奴で、夢の中に囚えようとしているの!」
必死に訴えたが、勇者テルは表情を曇らせる
「現実の世界なんてつまらないモノだよ。周りの目や社会に振り回されて・・・・・夢の世界みたいに自由なんてない、わくわくする事なんてない・・・・りお先輩。俺の物になってよ?一緒に夢の世界で暮らそう・・・・・」
勇者テルの周りをどす黒いオーラが現れ纏う
夢の中に囚われたのだ
赤い瞳の黒猫は満足そうに微笑む
『さあ、テル。りおを囚えるんだ。りお、君の夢はぼくのモノだと言ったよね?素敵な悪夢を見せてあげるよ・・・・・』
勇者テルが私の腕を掴む
私も男なので多少の抵抗は出来るけど、レベルカンストの勇者に適う訳が無い
ピンチです
勇者に纏っているどす黒いオーラが掴まれた腕伝いに私に流れてくる
何とか逃げろうと暴れるが、勇者テルの強い力でグッと引き寄せられ、乱暴に唇を奪われた・・・・・
「んんー!!!」
私は目を見開き離そうとするが背中を壁に押し付けられ離せない
どす黒いオーラがどんどん私を包み込んでいく
意識が遠のいて行く
『ーりお!!・・・・・』
最後に見えたのは紫色の瞳をした白猫が飛び込んできた光景だった
私は夢に囚われたのだ・・・・・
とうとう続きモノになってしまった・・・・・うー。




