Ⅱ
「っとっとっと……」
屋根の上できれいに着地した……訳ではないが、何とか足を着けた麻衣。
「いきなりびっくりするじゃねぇか! 頭から落ちてたらどーすんだよ!」
そういう割には体操選手並みに何度か空中でひねりを入れてたような気もするが……。
「麻衣ちゃ~ん。そこから窓を覗いてみてくださ~い」
呼びかけに麻衣は応え、屋根の上から頭だけ下ろし、窓を覗き込む。
数秒後、窓が開き腕伸びて、麻衣を室内へと引き入れた。新太、心の俳句。……なんて、言ってる場合じゃない。
「ら、拉致られたーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー!!」
「ごめんなさいつい出来心で」
彩歌の部屋まで突入し、麻衣を頬に擦りつける彩歌に一発かました。
玄関扉は不用心にも鍵が掛かってなかったため難なくお邪魔することができたのだ。
「まぁでも、そんだけ元気なら心配して損したぞ。本当はただのサボりだったんじゃないか?」
「そんなことないわよ。今の今までホント大変だったんだから」
麻衣が現れたことにより、すっかり体調がよくなったのだと。
そんなバカな話があるわけ……
「ふぁ~麻衣ちゃんかわい~なぁ~……」
……いやむしろ病的になってるだろこれ。
「そういや家の人、誰もいないのか?」
「え、う、うん。みんな忙しいから……」
……? なんか歯切れ悪いな。他人の家庭事情だからそこまで突っ込むのは無粋なんだろうけど。
「何かあったら、力になるからな。ちゃんと頼れよ。僕たちの事」
それくらいはしてもいいと思う。友達……いや、親友なんだから。
「あ、うん……ありがと……」
少し照れた様子で、そして小さく口角を上げてそう返事する。
会話から外れた二人は、何やらニヤニヤしてる。
「碧人さん碧人さん。もう、完全にコレですねぇ~」
「はいはい~。コレ、ですよねぇ~」
麻衣は小指を、碧人は僕に向かって中指を立てて話している。
……え、中指?
「なっ! 私は別に新太なんか何とも思わないわよ!」
全力否定されるのもな。こう……来るものがあるよね。
「むぅ~……いいっ! 私ちょっとお茶菓子取ってくる」
「おい、あんま動き回るなって。元気になったって言ったってまだ病み上がりだろ」
「大丈夫だって。ちょっと待っ――」
立ち上がり、部屋から出ようとした彩歌が……崩れ落ちた。
「――え」
「彩歌っ!!」
倒れた彩歌を抱きかかえる。その体は、人の体温はこんなにも高くなるものなのかと思うほど熱かった。
「あれ……おかしいな……どうして……また……急に……」
「いいからっ! 喋んなくていい!」
脈は速くなり、呼吸も荒い。とてもさっきまで元気でいた身体とは思えなかった。
「大丈夫だって……これくらい……何ともないわよ……」
「何ともないわけないだろ! こんな苦しそうにして。寝てろって!」
僕がベッドに連れて行こうとするも、彩歌がそれを拒む。
「やだよぅ……せっかく……帰ってきたのに……ただ寝てる……だけなんて……」
……僕だって、まだまだ話したいことはたくさんある。
「だけど、彩歌のそんな辛そうな顔はあんまり見たくないよ。元気な彩歌が僕たちは好きなんだ」
「そうだぜ! 早く治して元気になってからまた遊ぼうぜ!」
「そういうことですよ~。今は休んでてくださ~い」
「……うん」
みんなにそう言われた彩歌は、少し悲しそうな表情を浮かべ、素直にベッドで横になってくれた。
枕のそばに置いてあったタオルを、洗面所を借り、絞って額に乗せる。
その後、彩歌の寝息が聞こえるまで僕たちは彩歌を見守り続けた。
「さて……」
帰り道、そう切り出したのは碧人だった。
「ちょっと真面目な話をしましょうか~」
いつもの声よりもトーンが低くなる。
以前幽霊と話していた時にも発していた声と同じものだ。こういう時の碧人は本当に真剣な雰囲気を醸し出す。
「どうした?」




