Ⅲ
「はじめまして! 生前は、津紀と呼ばれていましたので、私の事はそう呼んでください」
「あ、はい、ツノリさん……ですか……」
「まぁでも、人間からは『幸福のお角様』、なんて変な名で呼称されていますが」
「んえぇ!? お角様ってあなただったんですか!」
てっきりお角様って、神様とかそんな類だと思っていたんだが……まさか幽霊だったとは……
津紀と名乗った女性は、その後も自己紹介を続けた。
好きな食べ物、マンガ、趣味……エトセトラ。聞いてもいないのにドンドンと話してきた。
「そういえば、さっき碧人の事呼んでましたね。碧人とは話したことも?」
「そうですね、昨日までずっと相談に乗ってもらったんですけど……」
「……? じゃあなんで僕のところなんかに?」
どう考えても、ずっと相談に乗ってもらってた碧人に続けて相談するのが普通だ。第一、碧人は幽霊が見えるし、今までだって他の幽霊たちの悩みを解決してきた……らしい。
「いや、それがですね……今の碧人さん、どうもいつもの碧人さんの雰囲気じゃないんですよ」
「は? どういうこと?」
「つまりですね。今の碧人さんには私の声も聞こえないし、私自身を目視することもできないみたいなんです。その代わりに、あなた……あの、お名前は?」
「新太です」
「そう、新太さんからいつもの碧人さんの雰囲気を感じ取れたんです」
「……」
待て待て、全然わからない。
僕が碧人の雰囲気を? 一体どういうことなんだ。
「それは私にもわからないですよ。でも、確かにあなたからそれは感じられます」
…………
「まぁいいか。悩み、聞いてあげますよ」
「本当ですか! ありがとうございます」
まぁ、人に頼られるのも悪くはないからな。……幽霊だけど。
「それで、悩みって?」
「はい、私、趣味で男女に素敵な出会いをもたらすために、霊力を使ってあの曲がり角で男女をゴッツンコさせているのですが……」
「え、あれって趣味でやってたのか。つか、霊力ってそんな使い方できんのかい」
「できるんです。霊力は万能なのです」
随分とご都合主義な力だったんだな……
「それでこの前、ちょっと失敗してしまってですね……」
「失敗?」
「はい……霊力のコントロールを誤ってしまって……男性と男性をぶつけてしまったんです」
……ん? そんなシチュエーション、記憶にあるような……
「二人の顔をちゃんと認識できていませんでしたけど、声は学生とおじさんだったと思います」
その組み合わせも記憶にある気がする……というか、気がするどころじゃない。
「確認だけど、それって、起こったのはいつ?」
「え~っと、一昨日……でしょうか?」
確定だ。
「それ、僕だ」
「え……えぇーーーーーーーーーー?!」
「って、あれはお前の仕業なのかーーーーーーーーーーーー!!」
「ごめんなさーーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」




