上編
新章突入
出会いと別れは突然で、もしも予知することができたなら
少しはマシな反応が出来たのかもしれない
あの場所で会った時、お前は無言だった。相談してくれれば、一緒に悩んだのに
ここで消える時、俺は無言でお前は「ゴメン」と笑った
俺には何かできたはずで、お前を救えたはずで、自分を許せたはずで・・・
10月30日 ~~マフレの作り出した異空間~~
「さぁ!思い浮かんだ名を叫べ!」
銀髪の戦士風の男は2つの扉の前に立つ若者に言った
紫の光が漏れ出す、灰色の扉の前には女の子らしき影が
薄緑色の光が漏れ出す、青色の扉の前には男の子らしき影が
それぞれ立っている
「ティターニア!!」
「ミトラ!!」
最初に現れたのは、灰色の扉からだった
西洋の貴族が身に纏っていそうな緑色のドレスに薄く虹色に輝く透明な羽が4枚
金のロングウェーブが服装とよく合い、気品を醸し出していた
ティ「あら?私の番なのね、貴方がパートナーかしら?よろしくね」
「よ、よろしくお願いします!お姉さん!」
ティターニアは少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔に変わった
女の子の傍まで飛んでくると、背中に触れる
ティ「気に入ったわ♪凛々しい男性を希望していたけど、窮屈なとこから出られたし
可愛い女の子にも出会えたし良い事づくめね~アナタお名前は?」
フワフワと飛び回るティターニアに圧倒されながら答える
「霜月 潤曖です!」
ウルアは元気良く答えた。ティターニアもそれが気に入った様で、また傍まで降りてくる
ティ「ねぇウルア?お散歩しない?そろそろ、あっちの扉から怖~い動物出てくるから」
ティターニアは青い扉を指差した
潤「え?タル君大丈夫かなぁ…?」
ティ「あら?あの子は貴方の彼氏?」
潤「ちっ違います!ただの友達ですっ!」
ティ「ふ~ん。まぁいいわ、男なんだから大丈夫よ!ホラっ行きましょう!」
潤「あ、はい…ふえっ!?ええええええええぇぇぇぇ!?」
ウルアの身体がティターニアと同様、宙に浮いている
潤「凄い!ナニコレ!」
樽「え?浮いてる!スゲェ!」
扉を見つめていたタルも、ウルア達が気になるようで
チラッと見ていた
「よそ見、せし者よ」
樽「うおっ!びっくりした。」
いつの間にか横に何かが居た
赤い肌のライオンで、胴体には黄と黒の縞模様の蛇が巻き付いている
両後ろ足に杖の様な鉤爪にも見えるモノが付いている
ミ「汝何を求め、我を呼び出す?」
タルは「う~ん」と少し唸ると、答えを告げた
樽「俺の平和な日常を守りたいから」
パッと浮かんだにしては、上手く言えた。タルは確信した。
ミトラはタルの目を見つめて言った
ミ「その心に偽りが無いなら、我は汝が平和の為に力を振るう契約を交そう」
タルは、「いや、思いつきで」と言いかけて止めた
樽「ヨロシク」
ミトラは蛇を動かし、右足の鉤爪を取った
更に、蛇はミトラの鬣を少し切り、口から息を吐く。すると鬣は紙となった
スラスラと文字を書いていく。タルはその様子を見つめていたが、あることに気づく
樽「チョット待て。俺読めない」
書いてある文字が、英語以外の文字である事は分かるが
どこの国のものなのかも判断がつけられない
書き終わると、蛇がミトラを噛む。そしてミトラの血でサインをする
ミ「次は汝の番だ」
サインを促すが、タルは動かない
見兼ねたマフレが契約書の内容を読み上げる
マ「要約すると、『ここに交す契約とは、
契約者の心の平和を守る為に
契約神ミトラの力を振るう
と言うものであり、
万一、契約にない力の使い方をすれば
その場で契約は破棄され、
代償として貴方は命を失います。
なお、
この契約書が、契約条項第二条の規定の液体で塗りつぶされた場合
再契約を求める事があります。
状況によっては、自分の意思で動き回ります。』
と、まぁこんな内容だ。お前が間違った指示を出さなければいい話だ」
樽「ちょっ!死ぬって事か?そんな契約…」
マ「ここで『契約止める』とか言いだしたら、『破棄』と看做され殺されるからな?」
樽「…サインは日本語でいいのか?」
自分の親指にマフレの短剣で傷をつけ、そこから出た血で自分の名前を書く
蛇「契約を承認する」
蛇がそう告げると、契約書は燃えて灰になる
樽「あっつ!アチチチチ!!」
タルは右手をブンブンと降っている
右手の甲には獅子座のマークが刻まれていた
ミ「契約の証だ」
「それならそうと先に言っといてくれ」
樽は不満を口にした
11月1日某所
「何処で発生した!?」
けたたましいサイレンが鳴り響く中、狭い室内を数人が動き回る
「分かりません!」
モニターにはセンドアルミナーの地図が表示されており、赤い点が幾つかあった
「反応多数!」
リーダーと思われる男が、動き回る数人に告げる
「トライとツヴァイは新人を連れて現場へ!クラムは私と一緒に回収に回れ!」
了解!!3チームに分かれ、それぞれ行動を始めた
ここは『特務潜行機関』通称『Void』
昨年の12月から、この街では不可解な事件が多発していた
「神隠し」「惨殺」「古代の疫病」
人外によるものと思われる事件が増える一方で、市民がソレを知らないのは彼等のおかげである
Voidとは「何もない」を意味するものであり、
文字通り一般市民に知られる前に、情報の改ざん及び、事態の収拾を図る。
最初から何も無かった事にされるわけだ
リーダーの幾嶋は11月1日で38になった。
今年の誕生日は、家族と過ごせると思っていたのに…
彼は元々、警備会社の人間だったが、
今年の1月に派遣先のビル内にある駐車場で
自分の目の前で同僚が巨大な蜘蛛に食われた
蜘蛛の上半身は綺麗な女性だったが、恐怖しか感じなかった
「俺は食われるのか…」そう諦め、覚悟を決めた時
蜘蛛は十字に切り裂かれ、跡形もなく消え去った。
幾嶋はその場に座り込み呆然としていた
ソコに近づいてきたのは、一人の女性。いや、女の子だった
カーキ色のカーゴパンツに茶色の革ジャン、ハンチング帽をかぶっていたが
胸があり、声も高かったから間違いないだろう
「貴方は幸運ですよ。オレが居なかったら存在が消えていたんだから」
女の子は蜘蛛の居た場所から何かを拾うと、持っていた鍵にソレを重ねる
「鐡が承認する」何処からか低く太い声がした
紅い光が辺りを照らしたかと思うと、直ぐに消えた
「女郎蜘蛛って事は、何か使えるようになるの?」
独り言を言っている。幾嶋は少し怖くなった、さっきの声といい光といい
(コイツは何なんだ!?)
「ん?まだ居たんですか?そう言えば…アナタには彼女が見えたんですよね?」
(彼女?何を言っているんだ?)
「もしも~し。あぁ、恐怖で声が出せないんですね?ふむ」
女の子は携帯を取り出すと、どこかに電話をかけている様だ
「あ~どうも。えぇ、うまくいきましたよ。生存者は1名です、素質ありなので生かしてます
これから必要になってくるでしょう?えぇ、はい。連れていけばいいですか?…了解」
持っていた携帯をしまう。話は終わったようだ
「これからアナタをある機関に連れて行きます。これからはそこで働くことになると思いますので。
あー、あともう一つ、その機関がチョット遠い所にあるから飛んで行くんだけど…鳥苦手?」
幾嶋は驚愕した。抜けていた腰を更に抜かす程の出来事だ
頭に王冠をつけた緋色の巨大な鳥が現れたのだ
「こ・・・コイツはどこから・・・」
鳥が出てきたのは、普通の扉からだった。駐車場とビルとを繋ぐ通用口だ
女の子が通用口の鍵穴に何かを挿したとこまでは普通だったのに
そこから出てこられるわけもないサイズの鳥が目の前にいる・・・
「ギャー!」緋色の鳥が急かすように鳴く
「はいはい。わかってるって、ホラ、えーっと…何とか嶋さん。行くよ!オレに掴まって」
鳥に乗ると、鳥の周りが青色の膜に包まれた。当時は分からなかったが、今なら分かる。
アレは鳥の持つ、魔法の様なモノらしい。
その場で2・3回羽ばたき、勢いをつけて飛び上がる。
天井に衝突!・・・はせず、幽霊のようにすり抜けていく
そうして俺は、機関とやらに連れて行かれ此処で働くことになった
今では主任にまで登り詰め、チームのリーダーになっている
「回収」とは俺の様な人間を指す、厳密に言えば、当時の俺。だ
化物は誰にでも見えるわけでは無いらしく、見える人間は大変貴重だそうだ
なるべく多く回収し、仲間を増やし、原因となる怪物を排除する。
上層部は、それが最大の目標と詠っているが、どうにも信用ならん
俺にはどうにも、「あの女の子の為に化物を探している」様にしか思えない
彼女は言っていた「オレは力をつけなきゃいけないんだ~。え?あぁ、王様を守るんだってさ」
上の者に聞いても、「君は知る必要がない」の一点張り
挙句には彼女へのコンタクトすらも取らせてもらえなくなった
一体何が起きているというんだ・・・
…ザザッ
「こちザザッ…トラ…!主に…聞こえ…か?ザーッ」
無線に連絡が入った。音声が上手く届かない
「どうしたっ!音が途切れてよく聞こえないぞ!?何があった!?」
「ザザザッ…急…!女が…ザザッ…こっちに…ピー」
無線が途絶えた
「おいっ!どうした!トライ!ツヴァイ!応答しろ!おいっ!」
「ピーーーーーーーーザッ」
無線に反応があった
「おい!どうしっ」
「キャハハハハハはははハハハハハハはははははハハ!!!!アハハハハハハハハ!!!!
楽しいなぁ~!!!!美味しいなぁ~!!!!アッハハハハハハはハハハハハハは!!!!」
突如無線から聞こえてきたのは、女の笑い声だった
・・・・彼女の声に似ている気がする
「テッサ!テッサなのか!?」
呼びかけてみるが返答はない。彼女はまだ笑っていた
無線からは水分の含まれた何かが弾ける音や、人の断末魔が聞こえる
「…じゅっ…じゅにん!逃げで…ぎゃあああああああああああああああああああああ」
「キャハハハハハ!!!!」
「ピー-ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」
「全員退避!!」
同様していたクラムのメンバーだったが、幾嶋の怒号にハッとし撤退の準備をする
幾嶋達の居る場所に影が射す、メンバーの一人が上を見て「あっ」と声を上げるが
皆が上を向く前に、彼の首は地面に転がった
「きゃあああああああああああああ」
メンバーの一人が転がった生首を見て悲鳴をあげた
それを皮切りに他のメンバーがその場から逃げ出した
「キャハハハ!!!」
頭上から彼女の声がした
上を見ると、あの巨大な緋色の鳥がいた
幾嶋の目の前に降りてくると、幾嶋には目もくれず
逃げ出したメンバーを次々と殺していく
鳥の翼から十字の閃光が走り、地面が抉られていく
人だったものが肉塊に変わっていく中、あることに気がついた
テッサが肉塊を拾い、…ソレを貪っていた
「うえっ!」
幾嶋は吐いた。吐いてからやっと気がついた、
この場に漂う血の匂いと、足元に転がる肉片
クラムは一人も残っていなかった
「あれぇ~?もう居ないのぉ~?」
左手で口を拭いながら、女の子が呟く
「グァーー!」
緋色の鳥がコチラを見て鳴いた
「ジャターユ駄目だよぉ~、その人は殺しちゃあ駄目なの☆」
女の子は近づいてくる
「テッサ!一体どうしたと言うんだ!説明しろ!」
「だーいじょうぶ♪直ぐにキモチよくなるから♪」
女の子の首が外れた。外れた首の口・鼻・耳から蛇が何匹も這い出て来る
それは鳥にも寄生しているらしく、動く度に周囲に飛び散っていた
「やめろ!よ、寄るな!こ、こっちに来るなァーーーーーッ!」
幾嶋の抵抗も虚しく、あとに残ったのは肉塊だけだった
時間は遡り、10月29日
「・・・まだ、目覚めないんですか?」
若い男の声が聞こえる。聴いた事のある声だ
「最善は尽くしました。後はご本人次第です」
今度はさっきよりも低い声で、聴いたことはない
「かなり高い所から落ちたと聞いていますが…何かご存知ですか?」
「いえ、俺は何も。ただ、一人で屋上になんて行くようなヤツじゃないんですけど・・・」
「そうですか。では、何かありましたらナースコールで呼んでください」
「はい。ありがとうございました」
足音が遠ざかっていく・・・
ベッドに寝ていた男が目を覚ます
「何処だよここは・・・」
「!!アキラ!」
彰「ん?ショウだったのか。ってかドコよ此処」
正「病院だよ!お前何してたんだよ!?ビルの屋上から飛び降りるなんてさぁ」
彰「はぁ!?」
アキラには、何が何だか分からなかった
(待て待て待て!どうなってる?確か、必死で逃げ回って…そうだ!モスマンだ!
アイツを出して、そんで・・・)
正「何か悩み事でもあるのかよ?何で言ってくれないんだよ・・・」
彰「ちょっと待て!屋上から落ちたって何だ?」
アキラは起き上がろうとするが、身体に力が入らない
正「俺もよくは知らないけど、アキラが屋上に登って行って飛び降りたって
目撃者が言ったらしいんだ」
ショウは上着のポケットから紙を取り出す
カランッ
何かが落ちた ゲームセンターで渡された鍵だ
彰「おい、何か落ち…」
(似てる…俺の持ってるAFと似てる!まさかショウもキーナイトってやつなのか!?)
正「あぁ、これか。何かゲーセンで女の子に渡されたんだけどさ、
何の鍵なのかわっかんないんだよね~
気のせいかもしれないんだけどさ…これ持ってから体調悪いんだよね」
ショウは翡翠色の古めかしい鍵をアキラに見せた
彰「・・・鍵穴に挿してみたか?」
正「はぁ?」
彰「動物に渡されたのか?」
正「あぁ、人間にな」
やっぱり頭を強く打ったんじゃ・・・・心配するショウを尻目に、アキラは考えを巡らせていた
(俺のと色が違うって事は、敵同士ってことなのか!?
ショウと戦えってのかよ!チクショー!)
アキラはベッドから立ち上がると、脇に置いてあった自分の服に着替える
正「おいおい、どこ行くんだよ!?安静にしてなきゃダメだって!」
彰「ショウ!ちょっと一緒に来てくれ!」
正「は?いや、待てって!お前に相談が…」
ショウはアキラの腕を掴み、引き止めた
ガラガラガラッ
病室のドアが勢いよく開けられた
「アキラ!」
ソコに立っていたのは、アキラの兄『蒼一』だった
蒼「お前!大丈夫なのか?怪我は?先生は!?」
蒼一はアキラを見るやいなや、機関銃のごとく質問を浴びせた
そして言い終わると、やっとショウに気づく
蒼「ショウ君!いつも弟がお世話になってます!」
正「いえいえ、じゃ、僕はこれで帰りますね。お大事に…」
ショウは引きつった笑顔で足早に病室を後にした
アキラの手に握られていたハズの鍵は、
いつの間にかショウのポケットに入っていた
10月30日
翌日、彰は学校に居た。怪我も大したことはなく、
退院も認められたため、翌日から登校することができた
本来ならば登校する気分でもないのだが、ショウの持っていたアノ鍵が気になっていた
ハプスに聞くのが一番手っとり早いが、肝心な時にアイツは現れない
しかし、現れなかったのはハプスだけではなかった。
ショウが学校を休んだ。
遅刻・欠席をしたことのない彼が何故、学校を休むのか
アキラには思いつかなかった
携帯にも出ない・・・
アキラは学校を早退し街中を探して回ったが、ショウは見つからなかった
10月31日
今日もまたショウは学校に来なかった。
流石に教師達も不信がり、「続橋!何か知らないか?」と尋ねるが
こっちが教えて欲しいくらいだった。
昼休み。午後はサボろうと決意し、仮眠を取りに中庭に行くとショウの姿があった
彰「おい!ショウ!!」
声を掛けると、ショウはこちらに近づいてきた
彰「2日も休むなんてお前らしくないなwwwどうしたってんだよ?」
ショウは答えない
彰「いつもはお前が怒られんのに、俺が怒られたんだぜ?ナゴヤンにww
高岡は今日もこねぇのか!ってさwww」
ショウは黙って彰を見つめている。心なしか淋しそうな顔をしていた
彰「?どうしたんだ?顔に何か付いてるか?ってか…お前顔真っ白」
ドンッ
不意にアキラはショウに突き飛ばされる
彰「!?何すん…!」
正「アキラ!早く逃げてくれ!!」
そう叫んだショウの背後から、白い百足の様な生物がズルズルと這い出てきた
「ガハハ!次はアイツを食ってやろう!」
百足の様な生物は、顔に目や鼻が無く、あるのはドデカイ犬歯のみ
足とみられる部分には、人の腕に似たものが生えている
彰「ショウ!お前もキーナイトなのか!?」
ショウは答えない
百足は口をパックリ開けて彰に襲いかかる
反射的に目を閉じた彰の耳に声が聞こえてきた
「アキラ。目を開けよ」
目を開けると、そこは中庭ではなく屋上で
目の前にはハプスが立っていた
ハ「このままでは陣を敷きにくいな。人型に戻るか…」
プローチから光が溢れる。さっきまでハプスが居た場所に見知らぬ男が立っている
彰「誰だアンタ?ハプスは何処いった?」
男はシルクハットにタキシード、おまけにモノクルまでかけている
如何にも漫画に出てきそうな紳士の出で立ちだ
「失礼な奴だな。今の今までお前の目の前に居ただろうが」
アキラは半信半疑で尋ねる
彰「…ハプスか?」
ハ「そうに決まっているだろう?」
なんでもアリかよ・・・そう呟くアキラをよそに、ハプスは何か図形を書いている
ハ「今は時間が無いから姿についての説明は省く。君が先程出会ったのは、
ニーズホッグと言う蛇龍だ」
彰「あれ蛇なのか!?」
ハ「更に言えば、この間戦ったニスロク同様、人を喰らう」
アキラは絶句した。やはりこの間見たものは幻では無かったのだから
ハ「見たところ、既に数人食っている様だな」
彰「食ってるって…人をか?」
ハ「それ以外にあるまいさ。時にアキラよ、君に『堕ちた紋章』の話はしただろうか?」
彰「クレストってなんだ?」
ハ「ふむ」
「何処へ行った!!!!!俺の生き餌はぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」
中庭の方で、ニーズホッグの喚き声と、暴れまわる轟音が聞こえる
ハプスはソレを気にもとめず、話を続ける
ハ「クレストとは元々は君に渡したようなAFだったモノだ。
AFを使用すると神魔が召喚され、使用者と行動を共にする楔で繋がれる
召喚している最中に使用者が死ぬと召喚された者の楔は砕かれ自由になる。
しかし動き回れる期間はわずかでしかない数分でまた元のAFの様な鍵状のモノに戻る。
これが『堕ちた紋章』だ
その後、ソレをAFの様に使おうとすると先程召喚されていた神魔が自由な状態で召喚される
化物が野に放たれる訳だ。」
彰「召喚したやつが還す事は出来ないのか?」
ハ「残念だがそれは出来ない。自由になった神魔が再び召喚されると、
クレストは神魔の中に溶けて無くなり、取り出せなくなる。
召喚者も同様に、自分の意思では動けなくなり強制的に連れ回される」
彰「何で連れ回されるんだ?」
ハ「先程も話した通り、召喚者と神魔の間には見えないが楔が打ち込まれる。
これはクレストで召喚した場合にも当てはまり、切っても切れない関係になる。
つまり召喚者が死ねば、神魔も死に。神魔が死ねば、召喚者も死ぬ。」
彰「俺に人を殺せって言うのかよ!」
ハ「……AFには各々の種族の力が宿っている。その力を借りて、神魔を召喚しているんだ。
クレストで召喚する場合、使用者は自らの命を代賞に召喚する。
つまり、クレストを使用した時点で彼等は死んでいるのだよ。救う方法は無い。
利用され続けるくらいなら、いっそ楽にしてやった方が彼等の為なんだ」
彰「じゃあ、下の百足を消すには使用者を探さなきゃなんねぇのか?
学校中を探すのか!?百足から逃げながら?」
やってらんねーよ。と天を仰ぐアキラに、ハプスが冷徹な口調で言った
ハ「現実を見据えろ。もう気づいているのだろう?召喚者はキミの親友だと」
彰「んなわけねーだろうが!アイツは、ショウは・・・」
ハ「何者に持たされたかは判らないが、クレストの影響力は強大だ。
触れてから数日で、無意識の内に鍵穴へと導かれる。対処方があるとすれば、
まだ影響が薄いうちにクレスト自体を破壊するか、AFに取り込むしかない」
アキラは固まっていた。気がついてしまった。気づきたくない事に
病院に居た時点で、アキラがこの事を知っていれば・・・
自分がキーナイトとやらに選ばれたとショウに言っていれば良かったのではないか。と
後悔の念がアキラをその場に留まらせた。
ハ「やらないのならキミが死ぬだけだ。」
彰「・・・・・」
ハ「はぁ、情けない」
深く溜息をつくと足元に図形を書き終えた
地面から扉が現れる。扉にはやはり鍵穴が付いていた
準備が出来たら呼び出すといい。だが時間はあまり無いようだぞ?
ガガガガガガガガッ
校舎が酷く揺れる。ニーズホッグが校舎の壁を登ってきている
「餌の匂いがするぅううううううううう!!!!!!!」
アキラはAFを挿し込むと「モスマン!」と声を荒げた
モ「話は聞いてた。どうする?俺は生きる為に戦うぞ?」
彰「俺は…俺は…ッ」
ドサッ
アキラの目の前にショウが降ってきた
二「特等席で拝ませてやるぅぅぅうう!!!!!
親友のぉ首が撥ねられぇるのをソコで見ていろぉぉぉぉぉ!!!!」
呼吸が荒い、ショウはかなり衰弱している様だった
二「ギャハハハハハハハハ!!!親友を殺すのか?できるか!?できないよなぁ?
人間なんていつもそうだぁ!貧弱な存在で我らの餌でしか無い!!」
ニーズホッグが笑い声を上げながら飛びかかって来る
モスマンはアキラの横に飛び退く
彰「くそっ!なんでだよ!なんでショウなんだよぉ!」
正「…アキラ…」
微かにショウが声を発している
彰「ショウ!」
ショウの傍まで駆け寄り抱き起こす
正「…アキラ…殺してくれ…もう嫌だ…」
ショウは力なく泣いていた
ニーズホッグはすぐそこまで来ている
1秒が10分に感じられる、彰はショウとの約束を思い出した。
彰「モスマン!」
アキラの意思を察したモスマンは、鱗粉から短刀を作り出しアキラに渡す
彰「くっそぉーーーーーーー!!!!!!!!」
ズブッ
ショウの心臓に短刀が突き刺さる
パキンッ 何かが折れる音がした
ショウの身体が砂になっていく…
正「アキラ…ゴメン」
崩れ去る直前ショウはそう言って笑った。
同時にニーズホッグも砂になり消えていった
カランッとあの翡翠色の鍵が落ちる
彰はソレを拾い上げ、天を仰ぐ
空は相変わらず晴天で、俺の気持ちなんて汲み取ってくれない様だった
樽は学校で起きている不可解な出来事を調査することになる。
それも、自分が最も苦手なタイプの一人である鴇祥と共に。
同じ時を過ごすにつれて、二人の距離は縮まって行く…
この日を堺に、二人のラヴラヴな一時が始まる!?
悠「キャーー♪いい!そういうのイイッ!」
樽「よくねぇよ!苦手って書いてあんだろうが!!」
叶「タル君、{吊り橋効果}というものがあってだな…」
颯「不可解な出来事だからなぁ~相乗効果で…」
樽「お前らチョット黙ってろ!!」
一方、潤曖はDS猫丸で、ある人物と出くわす。
その人物とは一体誰なのか・・・!?
樽「いやwこれ完全に店員さんでしょwww」
寝「君、こっちにも出張ってくんの?」
樽「・・・・・・・」
叶「タル君は嫉妬しているんですよ」
潤「…ふぇッ!?」
颯「罪な男だなぁ…店員さん」
樽「ホント黙ってろよマジで!!」
寝「若い子は元気がいいナー」