20.お父様に会いたい
エドウィンとリリー2人は、私のそばに常につく形となった。
お父様は王宮での仕事が忙しいらしく、しばらく帰ってこないので、夜ご飯は1人で食べる。
(お父様が野心家じゃない事を祈るわ。でないと、あっという間に殿下の婚約者よ。)
事前に殿下と結婚したくない旨を伝えたいのに、なかなか会う機会がない。
(いつ帰ってくるか分からない人を待つより、王宮に行って直接直談判した方が早い気がするわ……)
「リリー。お父様に会うために王宮に行きたいのだけど、準備しといてもらえない?」
「はい。かしこまりました。」
少しでも有利に話を進めたい。
「エドウィン。お父様の好きなもの知らない?」
「え?なんで俺が野郎の好きなもの、把握してるの思ってんの?」
「………聞く相手を間違えたわ……」
冷めた目でエドウィンを見る。
本当に使えない男である。ゲームの知識の一つとして覚えておけよ。
「はぁーーー」
大きなため息が出る。
「なになに、そんな考えこんで」
エドウィンが私の顔を覗き込む。
「いや……お父様にも殿下との婚約、結婚は避けたい事を事前に伝えておかないと……」
「あーーそっか……普通に考えたら栄誉な事だもんな…普通なら根回しして、周り固めて……ってするもんな」
「そうなのよ!……はっ!もしかして、今王宮からお父様が帰ってこれないのって……」
「可能性は否定できねぇーな……」
私の顔が青ざめる。
「一刻でも早く伝えないと……結婚させられちゃう!!」
気持ちが焦る。
「落ち着けって!」
「お嬢様。まず旦那様がどう考えていても、婚約させられない様に、ある程度対策を考えた方がよろしいかと。」
2人が慌てる私を止めて、宥める。
「お父様がどう考えてるかなんて、今分からないじゃない!!今すぐ行かないと!!」
「お嬢様落ち着いてください!!」
「王宮に行って人に会うためには、それなりの理由がいるぞ!まさか殿下と結婚したくないからって理由で取り次いでもらうつもりか!?」
エドウィンの言葉でハッとする。
「いいか。王宮では緊急性の低いと判断された場合、すぐ取り次いでもらえない場合がある。ただでさえ、沢山の人が集まるんだ。色んな輩がやってくる。王宮で仕事している以上、旦那様が何か重要な仕事をしている可能性が高い。旦那様の仕事の手を、止めてまで取り次ぐ、緊急性の高い理由が必要だ。」
「家族が寂しくて会いに来たって理由じゃダメなの……?」
「ダメじゃないが、旦那様の仕事内容次第だ。仕事内容によっては取り次いでもらえないぞ。平気で数日またされる。それが王宮だ。」
拳をギュッと握りしめる。
ただ、父親に会いたいだけなのに……
「緊急性の高い……用事……」