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205 知らない間に魔王軍の四天王になっているんだけどなんで

 私、植物モンスター娘のアルラウネ。

 どうやら知らないうちに魔王軍の四天王になっていたようです。

 しかも、証拠の書類まであるみたいなの。


 う、ウソだって!

 私、そんなの知らないよー!


 というか、魔王軍のハーピーがこの紙を配ったみたいだけど、そのハーピーってパルカさんのこと?

 あの子、なにやっちゃってんのー!!


 ──いいえ、ちょっと待って。冷静になるのよ私。

 パルカさんが勝手に私を魔王軍四天王だと担ぎ上げるはずがない。きっと黒幕がいるはずです。


 それは誰か?

 もちろん、パルカさんの上司である宰相の姉龍だよね。


 先日パルカさんが、宰相閣下が何か計画しているだとか、同胞のハーピーたちが王国の主要な街に何かの紙をばらまいているとか言っていた気がします。

 だからきっと、パルカさんの上司である魔王軍宰相の姉龍の陰謀で間違いないはずだよ。



 でも姉龍は私のことを邪魔だと思っていたはずだけど、それなのになんで四天王にしようとしているんだろう。もしかして、私と仲直りをしようと思ってるのかな……?

 いや、それはないよね。むしろ嫌がらせという線のほうがありそうだよ。

 おかげでこうやって私を討伐しようとする方が現れたわけだし、とても困っています。


 

 炎龍様から魔王軍の四天王にスカウトされて断ったけど、まさか強引に四天王に任命されていたなんて思いもしなかった。

 しかもその本人がその事実を全く知らないのですがー!



「四天王だってことがアタシたちに知られて驚いているみたい。リーダー、今がチャンスだよ!」


 ヴォル兄と一緒にいる女剣士さんが、再び私に風と雷撃で攻撃をしかけてきました。

 これくらいなら致命傷にはなりません。女剣士さんの攻撃を体で受けながら、私が考えます。

 

 話をまとめると、ヴォル兄たちは魔王軍の四天王である私を退治しに来たというわけなのかな。

 つまり、聖女イリスがアルラウネとして生きているから討伐してこいと命令されたわけではないということ。それはそれでひと安心です。


 とはいえ、幼馴染であるヴォル兄は私の顔をよく知っている。

 幼女化した現在の顔は覚えていなくても、成長した本体の私の顔を見たら、一発で私と同じ顔だとわかってしまうはず。

 このまま森を進まれるのはマズいね。


 私は魔女っこたちと一緒に、静かに森で暮らしたいの。

 ヴォル兄にイリスだと知られたら、これまでと同じように過ごせなくなるかもしれない。もしかしたらヴォル兄は口を(つぐ)んでくれるかもしれないけど、さっきから私に攻撃をしかけてきているこの子が黙ってくれるとは限らないからね。

 それでも、一応忠告しておきましょうか。


「これ以上、攻撃するなら、容赦、しません、よ?」


「望むところだよ! アタシはあんたを倒して、じいちゃんみたいに有名になるんだから!」


 どうやら女剣士さんは止まってくれないみたい。

 お祖父さんが誰だか知らないけど、私を倒しても有名にはなりませんよ。

 だって私、本当は四天王じゃないんだから。


 それにしてもこの女の子、どこかで見たことがある気がするんだよね。

 誰かに似ている気がする。誰だろう……?



 とりあえずこのまま攻撃され続けるのはあまりよろしくありません。

 風の刃のせいで葉っぱがボロボロになっちゃったの。ちょっと大人しくしてもらいましょうか。

 それに、女剣士さんにお休みいただいてヴォル兄と二人きりになれば、もしかしたら状況が変わるかもしれないからね。


 私はテッポウウリマシンガンの麻酔種を女剣士さんに発射します。

 電撃と風刃の魔剣では、これは防げないはず。


 そう思った瞬間、ヴォル兄が剣を振りかぶりました。


 突如、大きな爆発音とともに、爆炎が周囲に立ち込めます。


 テッポウウリマシンガンの麻酔種は全て燃え落ち、煙の間から女剣士さんとヴォル兄の姿が見えました。どうやら私の攻撃は全てヴォル兄に防がれてしまったみたい。



「無駄だ、植物モンスターの攻撃はオレには効かない」



 炎魔法を極めたヴォル兄は、炎魔法の派生として爆炎魔法という上位魔法を扱えるようになっていました。

 火が弱点である植物モンスターにとっては天敵のような存在です。

 破壊力抜群のヴォル兄の攻撃は同じ仲間の時は頼もしかったけど、敵になるとこうも厄介になるとは思わなかったね。



「見た目は人間でも、やはり中身はモンスターか。話し合いをしたいというのは、やはり嘘だったようだな」



 ど、どうしましょう。

 いまのでヴォル兄は完全に私のことを敵と認識してしまったようです。

 このままだと、本当にモンスターだと狩られてしまうよ!



「ヴォル兄、待って」


「…………紅花姫アルラウネ、どこでその呼び名を知った?」


 ヴォル兄がギロリと私のことを睨みます。


「まさか、イリスからオレの話を聞いたのか?」



 そういえば私、ついヴォル兄の名前を声に出してしまっていたね。

 なんで森のモンスターが自分の名前を知っているのかと、不信に思っているのかも。



「魔王軍に寝返ったイリスとお前が会ったことがあるなら、それも納得できる。それに、お前のその顔……」



 ヴォル兄はどういうわけか、仲間の女剣士さんに聞こえないよう小さな声で話してきます。


 でも、これで確信できました。

 イリス時代のといまの私が同じ顔だということに、ヴォル兄も気がついているんだ。

 ヴォル兄に私の正体を打ち明ける?

 いや、それはリスクがありすぎるよ。もう少し様子を見てからじゃないと……。



「教えるつもりはないか……なら、こうするしかないな」



 黙っている私に対して、再び剣を向けるヴォル兄。

 やっぱり私がモンスターだという先入観のせいで、イリスそのものだということには思い至らないみたい。

 しかも「リーダー、やっちゃってー!」という女剣士さんの声援を受けて、私に爆炎魔法を打ち込もうとしてきました。

 

 このままヴォル兄と戦ったら、お互いただでは済まないはず。

 返り討ちにすることはできると思うけど、それだと私が魔王軍の四天王だという誤解を解くことはできないしね。


 

 ここで、あらためて考えます。

 ──私の望みはなに?


 それは、森で静かに植物ライフを過ごすことだよ!


 そのためなら、別にヴォル兄に私の正体を知ってもらうことは大事ではないはず。

 むしろ昔の知り合いにアルラウネとなったことを知られたら、私の穏やかな生活は終焉を迎えるといっても過言ではないでしょう。


 聖女がモンスターのアルラウネになったなんて噂が王都で流れでもしたら、気になってしまって森で静かに暮らせる自信がありません。


 それに万が一、ヴォル兄が勇者様やあのクソ後輩と繋がっていることも考えられます。

 特に、ヴォル兄と勇者様は実の兄弟のように仲が良かった。何も知らなかったニーナとは違って、私が国を裏切ったという嘘の情報を教えられているかもしれません。


 裏切り者のイリスがモンスターとなって生き延びていた。

 もしもこのまま森の外に逃げられて王都へそう報告されたら、私は終わりです。

 私は二度と、平和な生活を送ることはできないでしょう。

 そうならないためにも、私の秘密をこれ以上誰かに知られるのは得策ではないはず。


 だから、ヴォル兄と会うのはこれで最後にしましょう。



 四天王である私を討伐に来たみたいだし、成果をあげてもらってこのままお帰りいただけばいいのだ。

 つまり、死んだふり作戦です!


 いまのこの幼女アルラウネの姿は、私の分身です。

 でも、そんなことは目の前の二人は知らないはず。

 私がここで燃えてしまえば、倒したと勘違いしてそのまま王都に戻ってくれるかもしれない。


 ヴォル兄には恨みもなければ戦う理由もないわけだから、それが一番お互いのためになるよね。



 私に大技を繰り出してもらうため、ヴォル兄に向けて茨を伸ばします。

 ヴォル兄は剣で私の茨を切り落としながら、徐々に近づいてきました。


 茨攻撃だけだと、ヴォル兄は私を警戒して大技を出してはくれそうにないからね。

 大技を誘うために、あえてテッポウウリマシンガンを女剣士さんへと向けて隙を作ります。


 私の作り出した隙に反応したヴォル兄は、仲間を守るために必殺の爆炎魔法を繰り出してきます。


 ヴォル兄の魔法によって、目の前で大きな爆発が起こりました。

 周囲の木々が爆発で弾け飛び、私の小さな体も爆炎によって轟々と燃えだしていきます。


 うん、これでヴォル兄とは今生のお別れです。

 私の正体に気がついていない従兄が、従妹である私を退治する雄姿を目に焼き付けながら、転移を発動させました。


 

「さよう、なら……」



 炎によって燃え盛っていた私の言葉が、ヴォル兄にまで届くことはなかったでしょう。

 でも、それでいいのです。

 私は森に住むモンスターで、ヴォル兄は王国の戦士。

 もう生きている場所が、それこそ文字通り違うのだから。




 本体へと戻ります。

 さきほどまで転移していた分身アルラウネが、完全に燃えてしまったことを根の感触で確認しました。


 これでヴォル兄には、私が死んだようにしか見えないはず。

 まさか私が分身することができるなんて、王都の人は知らないはずだからね。

 これであの二人は、大人しく帰ってくれることでしょう。



 さて、一難去ってまた一難。

 どうやら私、なぜか魔王軍の四天王になっているようです。


 

 ねえ、そんなの私、知らないんだけどー!


 いったいなんでそんなことになってしまっているのか。

 いますぐに情報収集をしないと。


 こないだ塔の街にお邪魔したとき、街の人たちは誰も私のことを魔王軍の四天王だなんて言っていなかった。むしろ、そんな情報が入っていたら、領主のマンフレートさんが真っ先に私に教えてくれるはず。

 ということは、塔の街にはまだその情報が来ていないのだ。


 人間側が知らないなら、魔王軍側から訊けばいい。

 手っ取り早いのはハーピーのパルカさんに直接聞くことだけど、こんな時に限ってあの子は森に来ていない。

 いつもは勝手に私のことをストーキングしているくせに、肝心なときにいないんだから。


 だけど、パルカさん以外に魔王軍について知っていそうな人物なんて……そうだ、悪魔メイドさんがいたよ!

 

 

 でも、待って。

 魔女っこも探さないとだったー!

 あぁああああ、どうしようぅうううううう!!



「アルラウネさま、どうかしたの?」



 背後から聞き覚えのある声がします。

 まさかと思いながら振り返ると、そこには妹分のアマゾネストレントと妖精のキーリがいました。

 森の見回りから帰ってきたみたい。



「不安そうな顔をしてるけど、なにか悩みごとでもできたのー?」


 そう言いながら、キーリが私の花冠の上まで飛んできます。


「悩みがあるなら言ってよね。これでもあたしは、アルラウネさまの妖精なんだから!」



 キーリだけでなく、妹分アマゾネストレントも枝をゆさゆさと振っています。まるで私に任せてと言っているみたい。


 そうだ、いまの私はもう一人じゃない。

 森で寂しく一人泣いていたあの時の私とはもう違う。

 いまの私には、頼れる仲間がいるのだ。



「二人に、お願いが、あります」



 私は魔女っこが行方不明になったこと、森に侵入者が出て、私のことを魔王軍の四天王だと言ったことを二人に伝えました。

 

 これからやるべきことは明確です。

 魔女っこを探しに隣町に行くこと。

 そして悪魔メイドさんから情報を聞き出すことです。



 こうしてキーリとアマゾネストレント、そして私は、それぞれの問題に対処するべく行動に出るのでした。

更新お待たせいたしました。申し訳ないことに少し体調を崩してしまいまして、少し時間がかかってしまいました。本当に申し訳ないですm(_ _)m


それとですが、たくさんの購入報告と感想ありがとうございます!

おかげさまで無事に書籍を発売することができました。

書籍版もお楽しみいただければ幸いです。

まだの方は、書籍版もお手に取っていただけると嬉しいです((。´_ _))ペコリ


次回、新米聖女見習いは森のダンジョン攻略に臨むです。

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― 新着の感想 ―
[一言] そういえばふと。 「主人公の行動範囲限定されてても人の手を借りられるなら使えるのはアイテムだけでなく文字もつかえるよね?」 と。手紙、活用すればもっと上手くコトを運べるのでは…… 領主なんて…
[一言] >「見た目は人間でも、やはり中身はモンスターか。話し合いをしたいというのは、やはり嘘だったようだな」 いやいや、警告したのに攻撃してきたのはそっちでしょうに。 なんでこんな結論に達したのか…
[一言] 楽しみにしてるので毎秒投稿お願いします(゜ω゜)o0(体に気をつけてゆっくり更新してください)
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