22 雌花とクマ夫人による華麗なるお茶会
クマパパが夫人を連れて私に会いに来てくれた。
久しぶりだね、クマパパ。
でもね、二匹揃って殺気が駄々洩れだから私怖いのですけど。
完全に私をヤル気です。
ペロリにきています。
以前クマパパに襲われたときに与えたあの特別製の蜜玉。
きっと、クマパパはもう蜜玉を舐め終わってしまったのだろう。
それで蜜の味が忘れられなくて、再び私の元へと訪れた。
目的は蜜なんだろうけど、問題はクマパパが私をどうするかだよね。
ペロペロだけして満足したらお帰り願いたいのだけれど、きっとそうはいかないよね。
だってクマママもいるから。
まさかクマママまで変態とかはないよね。夫婦で変態とか救いようがないよ。
だが悲しいことに、この二匹は似た者夫婦だった。
私に近づいてくるにつれて、段々とクマママの目がイっちゃっていったのだ。
クマママも私の蜜が目当てか―。
さすがに二匹からペロペロされたら、私の体が持たない。
こないだだって、クマパパに何時間も舐められるという地獄を味わったからね。
もしそれにクマママまで加われれば、交代で私を舐めてくることになってしまう。そうなれば私が休まる時間は消え去るだろう。
多分私、蜜を吸われすぎて栄養不足で枯れちゃうね。
ひからびたアルラウネが森に残される光景を想像する。
そのまま枯れて、土に返るのだ。
そうしたら私の女騎士であるハチさんとも地面の中で会えるかもしれないね。お互い肥料になっているから会って気がつけるかは不安だけど。
ラオブベーアのメスの角は二本ある。その代わり、オスのような長さはないため、武器に使ってくることはないだろうね。
クマママの大きさはおよそ7、8メートルくらい。
10メートルもあるクマパパと比べれば少し小ぶりだ。
でかいのには変わりないけどね。
だから二匹同時にかかってこられれば対処などできない。
少なくとも、一匹ずつ相手をしないと。
まずは小ぶりでクマパパよりも俊敏そうなクマママを狙おうか。
クマ夫人、私とお茶会でもいたしましょう。
もちろん殿方は抜きでしてよ。
雌花とメス熊、二人でゆっくりと仲良くしましょう。
美味しい蜜のお飲物を用意して待っていますよ。
まずは招待状をお送りしないとね。
そうしないと夫人だってクマパパと相談もできないし困るよね。
今、作るから少々お待ちくださいな。
私は蔓の先端にかぶりつく。
蜜をしっかりと舐めつけて、蜜まみれの蔓を作り出した。そう、これが招待状になるのだ。
その蜜蔓を、夫人の前へと投擲する。
私の招待状の内容に気にいってくれたのか、クマママが私の蜜に反応した。
クマママが横にいるクマパパよりも前に出る。
蜜がついている蔓を捕まえようとしているのだ。
よし、かかった!
釣りをする気分で蔓を私のほうへと戻していく。
蔓に誘われて走り出すクマママ。
クマパパも追いかけるが、体重が重いクマパパよりも小柄なクマママの方が速い。
まだだよ。
ひきつけて、もっと私の傍までひきつけてから。
ハイ、今です!
クマママをお茶会のテーブルにご招待。
蜜に目が夢中になっているクマママに、茨の壁がぶち当たる。
腐生植物化させていた茨を罠として地中に潜ませていたのだ。
クマママが通る瞬間に、地上へと茨を伸ばすという簡単な罠です。
茨の網でクマママを包み込む。
強制的に、私お手製の椅子に着席です。
さて、お茶会を始めましょうか。
同時に、クマママが何かわめきだした。
あれ、もしかして毒は初めてですか?
これが当お茶会の流行の一品でしてよ。
茨には私お手製の毒を染み込ませているの。夫人も気に入ってくださるかしら。
これまで挨拶に来てくれたお客様だって、泡を吹くほど喜んでくれたんだからね。
自慢の茨です。
クマママは逃げ出そうと暴れるが、動けば動くほど茨の棘が刺さってしまう。
茨をどけるのにも棘が刺さる始末。
棘はただでさえ刺されば痛いのに、そこから毒が流れてくるとか嫌だよね。
じゃあそろそろ紅茶をいただきましょうか。
開いているお口に毒花粉を入れちゃいましょうねー。
はい、あーんして。
クマママの口を蔓で広げて、毒花粉を吸入させちゃいます。
おいしいおいしいというように、クマママが何かを泣き叫んでいるね。
お気に召してくれたようだ。
じゃあ、もう一杯おかわりしましょうか。
これもごくごくと飲み込みましょうねと、クマママの喉へと毒花粉を流し込む。
かわいそうに。
デザートに入るまえに、お腹がいっぱいになっちゃったみたいだね。
クマママが目を白目にして、口から泡を吹きだしちゃったよ。
レディーとして、はしたないね。
それじゃ森の主であるクマ夫人としてやっていけなくてよ。
まあ、大丈夫だよ。
私が栄養にしてあげるから、もう夫人としての役目はしなくても良いんだよ。
だから安心してよね、クマママ。
さてと。
クマママは葬った。
残るはあなただけですね、クマパパ。
でも、旦那のほうは夫人のように簡単にはやられてくれないだろう。
なんといっても森の主、ラオブベーアだから。
四天王(仮)である戦大好きトラさんことクリークティーガー、地獄の狼ヘルヴォルフや、そしてアナコンダことヴァーンシュランゲとも格が違う。
対面しただけでわかるね。
威圧感がそれまでの四天王たちとは比べ物にならない。
圧倒的強者である余裕と、これまでの実戦経験からくる戦いにおける自信がクマパパから感じられた。
前にクマパパと対峙したときはクマパパの実力は全くわからなかった。
けれども、この一ヵ月数々の魔物を捕食してきた私にも、かなりの経験値が積まれているんだよね。クマパパの力くらい、今ならよく理解できる。
うん、今でもはっきりと言えるよ。
クマパパは私より強い。
まともに戦っても、きっと負けるでしょう。クマママのようにはいかない。
でもね、私もあの日、決めたのだ。
もうクマパパに体を舐められ続けるという屈辱は、できれば二度と味わいたくないの。
ペロられたくない。
クマ臭くなるし、よだれは汚いし、ベッタリとして気持ち悪い。
身も心も穢されてしまった私は、クマに慰みものにされたのだ。
だって、あんなにペロペロするんだもん。
もう二度とクマパパに舐められたくない。そう思うのは仕方のないことでしょう。
だからね、今度は私もただではやられないよ。
あの時の私とは違うということを証明してあげる。
さあ、クマパパ。
決着をつけましょう。
明日も二回更新を予定しております。
次回、対クマパパ作戦開始です。







