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未来への道

ちょっとだけ、ラスト編集しました!

 ギラギラと太陽が照らし出していた八月はようやく過ぎ去り、秋の匂いを思わせる物悲しさを含んだ風が教会の入り口から天井へと優しく吹き抜けて行く。


 花は今日という日が来ることを、桜の咲く頃は想像もしていなかった。


 本物の純白のドレスに包まれた花は、タキシードでしっかりと決めた陸の隣で微笑む。

 陸の目にはこれから人生の終わりまで添い遂げるであろう美しく変身を遂げた花の姿に完全に心を奪われていた。


「花ちゃん、すっっごい綺麗!!」

 楓は興奮しながら花と一緒に写真を撮りまくっている。


「次は楓ちゃんの番だね。」

 そういう花の横でたくさん着飾って出席する女性陣達に鼻の下を伸ばしている浩介を楓は睨みつける。


「ホラ!こうちゃん!!主役はこっちでしょ!」

 引きずられる様に戻ってくる浩介と楓を見て、

「これはかかあ天下だな。」

 そう陸がこっそり花に耳打ちして笑いあう。


 沢山の部下や同僚たちに祝福されながら、父親にエスコートされバージンロードを歩く花。

 新郎へと引き渡された花は陸とじっと見つめ合う。


 とてつもなく長い時が流れたように感じたこの数ヶ月、花は最高に真剣に人を愛した時間だと振り返りながら陸の横顔に視線を送る。


 二十年間ずっと花は自分の運命を悲観し続けてきたが、陸に出逢って目の前の世界は大きく拓け一変した。

 どんなに運が悪い星に生まれようとも、出会い、共に歩む人の力で人生は大きく変わっていく。

 花はこれからどんな試練が訪れようとも、きっと乗り越えられると陸の隣で誓いを立てた。


 数日後陸は遠い国へ旅立ってしまう。

 二人が立ち向かわなければならない最初の試練だ。

 でもきっと乗り越えられる…。

 あのオルゴールとともに…。







 一年後…季節は再び残暑の厳しい九月を迎える。


 花の家のベランダでは秋を迎える穏やかな風に乗って沢山の花々が揺れている。

 明るいリビングには陸がお腹を空かせて帰ってきても、すぐに美味しい食事が出来るように準備がしてある。


 ベランダの花を少しばかり切り花にしてテーブルに飾る。


 花は上着を着ながら空港に向かった。


 一年ぶりに会う陸はどんな顔をするだろう…?

 太っていないかな?

 痩せていないかな…?

 元気ならそれが何より…!

 花は一人で思いを巡らせ陸を待つ。


 時間が近づくにつれて、まるで初めてデートをするような緊張感が襲う。


 私はもう奥さんなんだから…。

 しっかりしないと!!


 そう気合いを入れる。


 そんな花を陸はずっと物陰から眺めていた。

「何百面相してんだよ!」

 クククと笑いを堪えながら花の前に現れる陸。


「…陸さん…?!」

 花は夢なのではないかと錯覚を起こして、一瞬時が止まる。


「花…!ただいま!!」

 ギュッと抱きしめる懐かしい陸の腕は花の心を陽だまりのような暖かさで溶かし、一年間離れていて伝えきれなかった陸への募った愛情を、まるで枯れた土が久しぶりの雨を吸収するかのように吸い込み、陸の心に満ち溢れていく。


「おかえりなさい…!」

 瞳に溜まった涙が堰を切ったように流れ落ちる。


「もう泣くな…。これからはずっと一緒だ!」

 陸は優しい眼差しで見つめ、花の柔らかな頬を伝う涙を拭う。


「ずっと愛してるよ…。」

 二人はこれからの未来を誓うように微笑み合い、静かに優しく唇を重ねた…。






今まで読んでいただきありがとうございました。後半怒涛のように更新しましたが、お付き合い頂き感謝してます。読み手側の方がどのように感じているかいつも考えながらは書いているのですが、感想、評価等で教えていただけると本当に励みになります。


この作品にどっぷり浸かっていたので次作まだ考えていませんが、またいつかお会いできたら嬉しいです。



追伸 ブックマークしてくださった方、ありがとうございます!!

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