三、マザーボード
マザーボード一式を買いに行った。
ママが僕のために積み立ててくれたお年玉を解約して買った。
せっかく積み立ててくれたものを遣うのは後ろ暗かったが、
僕の家庭事情では、それしかお金がなかったんだ。
ママは「システムをやりだすとハード、基盤にまで興味が拡がることは初めから分かっていた」と言った。
「そのうち基盤まで作りたくなるよ」
パパは仕事があるので、僕とママで買いに行った。
僕んちは車がないから(これもパパの収入が少ないせい)、自転車で買いに行く。
パパは稼働所得がほんの少ししかなく、ママも今ではパートのおばさん並みしかないから、
貧困家庭の部類に入っていると思う。
そんな中、ママはできる限りのことをしてくれているんだ。
ママは、自転車の後ろ籠にパソコンケース以外が入った大きな紙袋をゴムバンドで留めた。
パソコンケースは前籠に乗せたが、留めるゴムバンドがない。
ママは「ちょっと待って」と言って、ショルダーバッグの中を探り、ショルダーから黒ゴムを外した。
それは自宅キーが括り付けられているゴム。
ママは、パソコンケースの取っ手と自転車ハンドルをゴムで結び付けた。
「これで何とか固定できたけど、大きくて視界が見えないから押して行くよ。ユウ君、先に帰って」
「うん。帰る。ママありがとう」
でも、親って大変だね。
大変って言ったら自転車を押しながら
「ユウ君が親になった時、同じようにしてくれたら」
僕はママが好き、
ママも僕が好き。
ふたりはカルガモの親子みたいだ☆




