第一話 あなたが勇者様ですか?
僕のPCモニターには推しのVチューバーがフルスクリーンモードで映し出されている。
今日も推しは、精一杯頑張って配信を行っていた。
『この配信を何人の人が観ているかわからない。そして私もあとどれくらい配信ができるかわからない。でも頑張って最後まで配信するね。みんな、こんな時でも配信を観てくれてありがとう。
いつお別れになるかわからないから今のうちに私の正体を明かしておくね。本当の私は女の子じゃなく、四十二歳のオジサンでした。今まで騙していてごめんね───』
この言葉を最後に配信はプッツリと途切れ、PCモニターは真っ黒になった。
僕が推していたVチューバーが、最後にとんでもないカミングアウトをして黒い画面の向こうに消えていった。
「できれば最後まで嘘をつき通して欲しかったな……」
中身が女の子じゃないことぐらい最初からわかっていたけど、その事実を確定させられると、さすがに少し胸がチクッとした。
僕は貴重な推しを失った喪失感でゲーミングチェアに深く沈む。
そして、しばらく感傷に浸り、それが済んだら別のVチューバーがまだ配信をしていないか巡回に行こうと思ったが、そうしていると僕は爽やかな微風に頬を撫でられた。
微風には暖かなお日様の香り、そして瑞々しい草花の芳香も添えられている。
汚部屋に引き籠りっぱなしの僕にとっては、久しぶりに味わう清々しい微風だった。
この微風はどこから来たんだろう……?
窓を開けっ放しにしたかな?
……いや、そんなことはない。僕は窓を開けたりなんかしない。
それに窓を開けたって、もうこんな爽やかな微風は吹き込んでくるはずがないんだ……。
「……あれ? じゃあ、この風はどこから……?」
気になった僕は、ゲーミングチェアから上体を起こす。
するとPCモニターに長閑な草原の風景が映し出されていた。
僕は違和感を覚え───そして驚いた。
「これはスクリーンセーバーかな……? でもこんなスクリーンセーバーを設定した覚えはないけど……。それにやたらとリアルで風や草の芳香、小鳥のさえずり、それに暖かさも感じるぞ……」
僕は思わず手を伸ばす。そして伸ばした手はすぐにPCモニターの画面に当たるはずだった。
でもそこにPCモニターの画面はなく、宙を掴むように手が彷徨うだけだった。
PCモニターがまるで開け放たれた窓のようになっていて、その先に本当に草原が広がっていたのだ。
僕は思わず手を引っ込める。
「なんだ、これ……?」
顔を近づけ、僕は注意深く様子を窺った。
そしてもう一度、手を伸ばして事態を確かめようと思ったが、その時───誰かがPCモニターの向こう側から顔を覗かせた。
まさに窓から顔を出して覗かれたような感じだった。
僕は驚いて固まってしまったが、覗いてきた相手───それは同い年くらいの女の子だったが───も同じく驚いた様子で固まり、僕たちはお互いにしばらく見つめ合った。
先に口を開いたのは女の子の方だった。
「あ、あの……あなたが勇者様ですか……?」
お世話になっております。柳アトムです。
この度は私の小説を読んでいただきまして本当にありがとうございます。
( ᵕᴗᵕ )
本作は「PCモニターが異世界と繋がったら面白いだろうな~」という思い付きから話を膨らませてみました。
この点がフックとなり、皆さまに興味を持っていただければ幸甚と存じます。
さてさて、冒頭のお話はどうでしたでしょうか?
(,,•﹏•,,)ドキドキ
本作は物語の核が「謎解き」ですので、冒頭で既に幾つかの「謎」を仕込んでおります(ニヤリ
・主人公がなぜ引き籠りなのか?
・主人公の部屋がなぜ汚部屋なのか?
・窓を開けない理由
・微風が吹き込まない理由
・Vチューバーがカミングアウトをした理由
などなど。
これらの「謎」は、この世界ならではの秘密の解明に深く結びつき、引き籠りだった主人公が異世界に赴き、冒険を行う理由となっています。
この「謎」が解き明かされた時、皆さまに「面白い!」と思っていただければ幸いです。
また、そう思っていただけるよう頑張ります。
୧(˃◡˂)୨
それでは二話目以降も、どうぞ宜しくお願い致します。
( ᵕᴗᵕ )




