表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
86/192

第四部・第七話(第77話) 砂行の試練

 星図に示された印を頼りに進むと、果てしない砂丘の真ん中に石碑が立っていた。

 そこには古代語でこう刻まれていた。


 ――「砂を越え、石を動かし、共に進む者に道は開かれる」


 「……つまり、砂行の試練ってことね」私は呟く。


 ライガが腕を組んで頷いた。

 「どんな荒行でも構わん。進むだけだ」


 ルビヤは腰に手を当てて笑った。

 「力仕事なら任せなさい」

 (いやいや、俺は非力なんだから無理ゲーなんだが……)





 試練の一環は、日没までに砂丘を横断すること。

 だが、昼間の砂は足を取る上に、体力を奪う。


 「……ひぃぃ、焼きそばの鉄板みたいに熱い!」

 私は靴底越しに足をばたつかせた。


 ルビヤは肩で笑い、片手で私の腕を引っ張っていく。

 「ほら、頑張れ女親友!」

 「お姫様抱っこに切り替えてもいいのよ!?」

 「それ、余計疲れるわ!」


 ライガは呆れ顔で水袋を差し出す。

 「どっちが姫か分からんな」




 砂丘の頂に辿り着いたとき、進路を塞ぐように巨大な岩石が転がっていた。

 「これを動かせってことか」ライガが剣を突き立てた。


 しかし剣は石に弾かれた。

 「……ただの力押しじゃ無理ね」私は考える。


 岩の下を覗き込むと、砂が不自然に盛り上がっていた。

 「支点がずれてる。テコで押せば……」


 「なるほど!」ルビヤがすぐさま倒木を持ち上げ、私の指示通りに差し込む。

 ライガが渾身の力を加えると――

 ごろろろ……!

 巨石はゆっくりと動き、道が開かれた。




 しかし休む暇もなく、砂の地面が沈み始める。

 「砂流し……!」

 まるで流砂のように地面が崩れ、一行を飲み込もうとしていた。


 「レティシア、しっかり掴まれ!」ライガが私を抱き上げる。

 「わわっ、ちょ、近い!」

 ルビヤも反対側から肩を抱き寄せ、二人がかりで私を引き上げた。


 (いやいやいや、俺を挟んで筋肉サンドイッチはやめろ!)





 砂流しを抜けた先に、また石碑が立っていた。

 そこにはこう刻まれていた。


 ――「力を合わせ、知を尽くし、友を信じよ。されば扉は開かれん」


 石碑が淡く光り、星図に新たな経路が示された。

 大迷宮の入口は、さらに南方の渓谷にあるらしい。


 私は息を整え、仲間たちに微笑んだ。

 「やっぱり一人じゃ無理だった。ありがとう、みんな」


 ルビヤは笑って肩を叩く。

 「アンタは頭脳担当。私たちは筋肉担当。――最高のチームでしょ?」


 ライガも静かに頷いた。

 「親友。これからも支え合おう」

次回予告


第78話「星見の糾弾」

神殿で再び会議が開かれる。

だが巫女長ナービアは、紅眼を“凶兆”と断じ、協力を拒もうとする――。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ