第四部・第六話(第76話) 星図の断片
翌朝、首都の市で耳にした。
「砂丘の奥にある廃墟で、夜になると星が輝くんだと」
好奇心半分で近づいた者は、皆“奇妙な幻”を見て逃げ帰ったらしい。
「星図片の可能性が高い」
私は仲間たちに告げた。
「秘宝の在り処を示す“断片”かもしれない」
ライガは短く頷く。
「なら行こう。罠なら俺が守る」
ルビヤは紅い瞳をわずかに伏せて、でも力強く言った。
「……私も行く。これは、きっと私の役目だから」
砂丘を越えた先に、石造りの小さな廃墟があった。
半ば砂に埋もれ、壁にはかすれた星図のような模様が刻まれている。
私は星図盤を取り出し、壁の模様に重ねてみせた。
「やっぱり……一致する部分がある」
だが、その瞬間。
模様が淡く光り、広間の床に光の線が浮かび上がった。
まるで星座のように点と線が繋がっていく。
「な、何だ……?」ライガが剣を構える。
「大丈夫、攻撃じゃない」私は制止する。
線が途切れかけた瞬間、ルビヤが前に出た。
紅い瞳が光を反射し、欠けていた部分を補うように輝いた。
――星図が完成した。
壁一面に浮かび上がったのは、砂漠全土を貫く巨大な経路。
そして中央に刻まれた印は、秘宝「星譜の心臓」を示していた。
「……やっぱり、私の目のせいだったんだ」
ルビヤは拳を握り、俯いた。
私はそっと彼女の肩に手を置いた。
「“せい”じゃない。あなたの“おかげ”よ。
この瞳があったから、星図は完成したの」
「……ほんと、アンタはそうやってズルいこと言うんだから」
ルビヤは顔を赤らめて笑った。
(……やばい、また惚れられてる気がする。でも“親友”って言ったし……!)
星図はやがて消えたが、印だけが床に刻まれたまま残った。
「ここが、大迷宮の入口を示している」
私は指でなぞり、決意を固める。
「秘宝への道は、まだ始まったばかり」
ライガが剣を肩に担ぎ、低く笑った。
「どんな試練が待とうと進むだけだ。親友、そして仲間としてな」
「……ありがと」私は微笑んだ。
その傍らで、ルビヤが紅い瞳を星に向けていた。
その光はもう、孤独ではなく未来を照らす希望だった。
次回予告
第77話「砂行の試練」
大迷宮へ至る前に、“砂行の試練”を受けることになる一行。
灼熱の砂漠を越え、重石を動かす力と、仲間との連携が試される――。




