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第三部・第二十四話(第67話) 闇の奥へ

 禁忌の海域から撤退した翌日。

 仲間たちは疲労を隠せずにいたが、それでも撤退は一時の猶予にすぎないことを理解していた。


 「もう一度潜るのか……?」

 ライガが渋い顔をする。

 私は頷いた。

 「黒幕の正体に迫るには、あそこを調べるしかない」


 魚人族の学者も震える声で同意した。

 「確かに……遺跡の文字を解読すれば、呪具の由来が分かるかもしれません」





 光石の明かりに照らされながら、調査隊は再び遺跡へと潜った。

 祭壇の影は前回よりも薄れ、呪具の残骸が散乱している。


 「……護符が効いたのかもしれない」

 私は胸元の光を見つめ、小さく呟いた。


 蜥蜴人族の鍛冶師が壁を調べ、声を上げた。

 「見ろ、この刻印……」





 壁面に刻まれた文字は、陸でも海でも使われない古代語だった。

 魚人族の学者が必死に読み取っていく。


 「……“封”……“供物”……“門”……」


 鳥人族の斥候が息を呑む。

 「門……? 何かを封じていたのか?」


 私は背筋に冷たいものを感じた。

 ――呪具は精霊を縛るためのものではなく、封印を維持するために存在していたのかもしれない。





 突如、遺跡が震えた。

 石柱が崩れ、砂が舞い上がる。

 「退け!」ライガが叫ぶ。


 だがその瞬間、祭壇の奥に亀裂が走り、黒い霧が漏れ出した。

 「……まただ!」

 魚人族の戦士が槍を構える。


 黒い霧は形を取り始め、魚とも人ともつかぬ影がゆらゆらと揺らめく。

 その存在に、精霊たちの気配が一斉に震えた。





 耳に、かすかな声が届いた。

 「……封じられしもの……目覚めさせるな……」


 「封じられしもの……?」

 私は呟いた。


 ――黒幕とは、人ではなく、この遺跡に眠る「何か」なのか。





 影が完全な姿を取る前に、ライガが剣で霧を裂いた。

 魚人族の学者が慌てて叫ぶ。

 「急いで記録を取る! ここに答えがある!」


 私は全員を見渡し、強く言った。

 「この真実を掴まなければ、陸も海も滅ぶ。危険でも進もう!」


 仲間たちは頷き、再び奥へ進む覚悟を固めた。

次回予告


第三部・第二十五話(第68話)

「封印の真実」

遺跡の核心にたどり着いた調査隊。

そこに刻まれていたのは、世界樹と海を結ぶ禁断の歴史だった――。

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