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辺境伯令嬢は内政チートで世界を変える ~そして聖女は大陸を笑顔で包み込む~  作者: 赤井咏紗
第二部 聖女レティシアと世界樹の試練
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第二部・第十五話(第40話) 新時代の内政――精霊と植物の力

 収穫祭の熱気も冷めぬ翌朝。

 私は役人や領民代表を集めて、屋敷の大広間で「農業改革会議」を開いた。


 「まずはこちらを見てください」


 机の上に広げたのは、私が徹夜で作った簡易帳簿――いや、感覚的にはエクセルのシート。

 収穫量、労働力、備蓄量、人口増加率を整然と並べた表だ。


 「今年の収穫は昨年比+340%。備蓄に回せば二年分の食料が確保できます。

  ですが、人口増加予測を加味すると三年後には再び不足に陥る可能性が高い」


 村人たちはぽかんと口を開けていた。

 ――まあ、普通に数字の話されたら驚くよな。





 私は小枝を手に取り、床に大きな円を描いた。

 「この円が領地全体の食料需要です」


 次に石を三つ並べる。

 「①従来農法のみの場合」

 「②精霊の補助をつけた場合」

 「③新植物の導入を組み合わせた場合」


 「①では三年後に需要を満たせず飢饉リスク大。

  ②では十年は持ちますが、人口増加に追いつけない。

  ③なら二十年以上の持続可能性が見込めます」


 会場からどよめきが上がった。





 私はさらに説明を重ねる。

 「エルフ族から託された植物は、土壌改良に効果を発揮します。

  精霊は病害虫を抑制し、収量のブレを平均化できる。

  つまり、これらを組み合わせれば“安定生産”が可能になるのです」


 前世では「肥料・農薬・改良種子」でやっていたことを、この世界では「精霊と聖樹の種」で代替する。

 原理は違えど、発想は同じ。


 ――俺、前世の知識をようやく正しく活かせてる気がする。





 「ただし、問題は労働力の不足です」


 私は人口表を示した。

 「領民の労働時間を可視化すると、農繁期に余裕はほとんどありません。

  ですが、精霊を農業補助に組み込むことで、労働負担は平均30%削減できます。

  その余剰を工芸や交易に回せば、現金収入も増加するでしょう」


 ユリウスが目を輝かせる。

 「つまり……“多角経営モデル”が可能になると!」

 「はい。食料安全保障を確立した上で、経済基盤を広げられるのです」





 私は会議の最後に、領地の未来像を示した。

 「五年後には人口は現在の1.4倍に増加。

  十年後には市場規模が倍増し、周辺諸侯に比べて圧倒的な優位を築けます」


 数字を並べるだけなのに、胸の奥が熱くなる。

 ――これが俺の戦場だ。

 剣じゃなく、笑顔でもなく、数字で未来を切り拓くんだ。





 会議を終えると、重苦しい沈黙が落ちた。

 やがて、一人の年配の役人が立ち上がった。

 「……聖女様。私は農業一筋三十年ですが、これほど先を見据えた話を聞いたのは初めてです」


 次々と声が上がる。

 「私も協力したい!」

 「精霊たちに指導を仰ごう!」

 「未来のために働こう!」


 領民の目が輝き、会場は熱気に包まれていった。





 私は小さく笑みを浮かべた。

 「これが、私のやり方です。数字と知恵、そして皆さんの力で、領地を変えていきましょう」


 ――俺、ようやく“コンサルおっさん”の経験を誇れる時がきたんだな。

次回予告


第二部・第十六話(第41話)

「数字が示す未来――繁栄と影」


農業革命が始まり、領地は確実に豊かさを増していく。

だが繁栄の影には必ず嫉妬と陰謀が潜む。

数字の示す未来は、希望だけでは終わらない――。

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