第二部・第十四話(第39話) 豊穣の奇跡――聖女の収穫祭
朝日が昇ると同時に、村人たちが畑に集まった。
そこには、見渡す限り青々と茂る作物。
穂は黄金色に垂れ、実は丸々と太り、畝はまるで宝石箱のように輝いていた。
「こ、こんなの見たことがない……!」
「去年の三倍はあるぞ!」
「いや四倍だ!」
村人たちの歓声が爆発する。
――よかった。
マジでホッとした。
(前世の知識+精霊のチートパワー=豊作保証。やればできるんだな俺……!)
村人たちが次々と鎌を入れると、あっという間に山のような収穫物が積み上がった。
「こっちもいっぱいだ!」
「倉庫が足りねえ!」
「子どもたちまで運ぶのを手伝ってるぞ!」
小さな精霊たちも、ふよふよと浮かびながらカゴを押して運んでいる。
「きゃははは!」「まだまだー!」
――なんか運動会みたいになってるな、これ。
収穫の喜びはすぐに宴へと変わった。
巨大なカボチャをくり抜いてスープにし、果実酒を振る舞い、子どもたちは野原で走り回る。
楽師が笛を吹けば、自然と踊りの輪が広がった。
「おい、レティシア様も踊れ!」
「えっ!? 私は……!」
「聖女様が踊らなきゃ祭りは始まらん!」
――いやいや、俺ダンスとか無理だから!
前世は飲み会の余興で腕立て披露するタイプだったんだぞ!?
結局、無理やり手を取られて輪の中へ。
「わ、わぁ……!」
気づけば笑いが止まらなくなっていた。
少し離れたところでは、逆ハーレム要員たちもそれぞれのやり方で楽しんでいた。
カイルは子どもたちに剣舞を教え、
ロイは酒樽の成分を延々と分析し、
クラウスは村人と一緒に力仕事に汗を流し、
ユリウスはちゃっかり即席の市場を開き始め、
エルヴィンは焚き火の前で静かに笛を吹いていた。
「……ほんと、なんで全員キャラ濃いんだろ」
私はカップを片手に、心の中で笑った。
日が沈み、祭りの熱気が最高潮に達したころ。
私は村人たちに向かって声を張った。
「今日の収穫は奇跡ではありません。
皆さんの努力と、森から授かった恵み、そして精霊たちの力のおかげです。
だから――この豊かさを、これからも守っていきましょう!」
大きな拍手と歓声が巻き起こり、夜空に火花が舞い上がる。
精霊たちも星のように輝き、空に散っていった。
私は星空を見上げ、胸の奥で思った。
――俺は、確かに“聖女”って呼ばれてるけど、奇跡を起こしたわけじゃない。
でも、みんなと一緒に努力して、こうして笑える時間を作れた。
これって……前世じゃ得られなかった“豊かさ”なんだな。
私は静かに杯を掲げた。
「さあ、これからが本番だ。領地を、もっともっと豊かにしてみせる」
次回予告
第二部・第十五話(第40話)
「新時代の内政――精霊と植物の力」
大収穫を経て、辺境伯領は次なる段階へ。
エルフの植物と精霊を利用し、前世の知識を組み合わせた“新時代の内政改革”が始まる。
数字と自然が融合した奇跡の領地運営、その第一歩が踏み出される――!




