第十五話‐中編 迫りくる闇――ドタバタ護衛作戦
夜。
暗殺者が迫ると聞いた屋敷は、一瞬でドタバタ戦場と化した。
「一歩でも近づけば斬る!」カイルが玄関前で仁王立ち。
「廊下一面に結界を!」ロイが魔方陣を描きまくる。
「兵を百人増やせ!」クラウスが号令をかけて屋敷がギュウギュウ。
「倍の金貨を渡せば味方にできる!」ユリウスが財布を振り回す。
――お前ら、方向性バラバラにもほどがあるだろ!?
ガシャーン!
窓ガラスが割れ、黒装束の暗殺者が飛び込んできた。
「標的は辺境伯令嬢だ!」
「させるかぁ!」カイルが剣を振るい、
「炎よ!」ロイが火の壁を展開、
「兵よ、守れ!」クラウスが怒鳴り、
「交渉の余地は!?」ユリウスが叫ぶ。
――だめだ、このチームまとまらない。
カイルと暗殺者の剣戟は火花を散らし、
ロイの炎は廊下を灼熱地獄に変え、
クラウスは兵を動かしすぎて通路が詰まり、
ユリウスは「三倍払う!」と叫んで財布を投げつける。
暗殺者ですら「お前ら何なんだ」と困惑気味だ。
そして肝心の俺は――。
「え、俺の目の前だけ手薄じゃない!?」
次回予告
第十五話‐後編 迫りくる闇――必殺の笑顔
ついに暗殺者がレティシアの目の前に! 護衛たちが大混戦する中、最後の切り札「にぱぁスマイル」が炸裂する――!




