第十五話‐後編 迫りくる闇――必殺の笑顔
混乱の中、暗殺者の一人が俺の前に飛び出した。
鋭い刃が月明かりを反射し、喉元に迫る。
「終わりだ、令嬢……!」
カイルもロイもクラウスもユリウスも手が回らない。
全員がドタバタしすぎて、俺の正面は完全にがら空き。
……終わった。
その瞬間、俺は全力で顔を上げた。
心臓は爆音のように鳴っている。
でも――やるしかない。
「にぱぁぁぁぁぁぁ!!!」
必殺、赤子時代から鍛え抜いたスマイル。
暗殺者は刃を振り下ろそうとして――止まった。
「……な、なんだ、この……尊さ……」
瞳が潤み、手が震え、やがて刃を落とす。
「俺は……何をしていたんだ……」
背後の暗殺者たちまでもが膝をつき、同時に呻いた。
「天使だ……」
「刺すなんて、できるわけがない……」
カイルは剣を構えながら絶叫。
「令嬢様は俺が守る!」
ロイは冷や汗をかきながら分析。
「……あれは魔術すら凌駕する力です」
クラウスは感極まって宣言。
「やはり彼女こそ王妃にふさわしい!」
ユリウスは暗殺者に金貨を握らせた。
「今日からうちで働け。給料は日払いだ」
――なんだこの収拾の仕方。
こうして暗殺計画は未然に防がれた。
いや、正確には「俺のにぱぁスマイルで暗殺者が浄化された」。
護衛たちは口々に「令嬢様すごい!」と騒ぎ立てる。
俺はベッドに沈み込み、枕に顔を押し付けながらつぶやいた。
「……誰かKPIに“暗殺阻止:笑顔で解決”なんて入れた?」
この世界、本当に予定調和が仕事してくれない。
次回予告
第十六話 王都からの召集――神童令嬢、宮廷へ
暗殺未遂事件を経て、レティシアの名声はさらに王都に広まった。ついに王から召集が下され、彼女は宮廷という新たな舞台へ――そこは権謀術数とモテ騒動がさらに渦巻く修羅場だった!?




