7機目『サーピア』
ロボットというのは、必ずしも二足ではない。動物に四足や六足、八足がいるように様々なのだ。
当然、足がないように見えるものもあった。
──サーピア。
ラミア型の、蛇の下半身をもつロボットだ。
ハーリンテン少年の頭の中の知識では、ソルブルク大帝国とスカリハ女王国の共同開発と記憶していた。
「おうおうおう! アンタが、アタイらへの慰め品か!?」
少年は、サーピアの操演者であろうスカリハ兵にからまれていた。物理的な意味も含めてだ。スカリハは、ラミアの国なのだ。
蛇身が少年の体に巻きついている。
「違います」
「えぇ……味見くらい……」
「駄目です」
「ブーブー!」
少年の現状は、一言で表せば、大蛇に捕まった子牛だ。
少年は心を殺した。
無抵抗となった。
痛いのは一瞬で、すぐに終わるだろうと。
天井の染みのかわりに考えたのは、サーピア。
女王国のサーピアは、ラミアに似ている。ロボットが作った種族の外見に似るのは、珍しくはない普通のことだった。
ただ少年は蛇が好きくなかった。
ラミアの下半分は蛇であり、サーピアの下半身もまた蛇だ。
スカリハ兵の蛇身が少年の半分を絞りあげているが、サーピアも同じことができる。
女王国の半分は砂漠だが、半分は沼地だ。沼地にはサーピアが十機集まっても囲めない樹が密集している。両手を広げても届かない、太い幹。
そんな大樹をサーピアは『登る』のだが、手ではない、蛇身でだ。
長い尾を巻きつけるのだ。
樹の上は、サーピアの基本だ。樹上から、下界の大型生物を『硬種体射出装置』で狩り仕留める。硬種体射出装置は、女王国の輸出商品である樹を加工した射出装置だ。
黒火教の火の薬や雷の塔の光電体、つまり火薬銃や電気銃なみの初速をもつ。
違いは、硬種体は着弾ではじけ、中で超高圧状態の樹が急速展張することか。
命中すれば四方八方に串刺しだ。
「温かいね。温かい子は好きだよ」
少年の頬を、スカリハ兵の尾の先端がつっついた。
サーピアてきには、衝撃衝角がある部位。
ラミアの重い一撃は三つある。
彼女たちが育てる愛。
彼女たちは作る毒。
彼女たちの尻尾の一撃。
どれも喰らえば明日はない。
そしてそれらは、サーピアにも受けつがれているのだ。
ハーリンテンは体の痺れを覚えていた。
少年に明日はあるのだろうか。
おそらくは──。




