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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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番外編 美香ちゃんとウサギさん 1

 それは私、寺島美香が相良家に引き取られた直後のことだった。

 私の両親は氏名不詳の殺人鬼に殺され、相良家に引き取られた。

 誘拐され、北条美沙緒の妹として生活していた……らしい。

 だけど私は事件の前後の記憶が曖昧だ。

 思い出そうとしても、両親の顔すらぼやけていてまるで現実感がない。

 義姉である北条美沙緒のことは多少おぼえているが、それもところどころ抜け落ちている。

 この話をすると、まわりはとても狼狽する。

 お世話になっている相良家のお義父さまもお義母さまも、とても心配をしてカウンセリングに連れて行かれてしまう。

 警察に紹介されたカウンセラーもとても心配をして、大学病院に行くことになる。

 さらに病院で三時間以上待って診察を受けると、偉そうなオーラを出した先生たちに囲まれ、根掘り葉掘り話を聞かれる。

 苦しくない? 怖くない? 寝られる? 家の人は優しい? 何か嫌なことを思い出した?

 義兄の影響で嫌味の一つも言いたくなるが、ここで余計な事を言うと大騒ぎになるので黙っている。


「苦しくないし、怖くないし、寝られるし、家の人は優しい。ただ何も思い出せないだけ」と答える。


 細心の注意を払ったのにこれだけでも大騒ぎだ。

 新しい環境へのストレスがたまっているかもしれないと、カウンセリング大盛り追加。

 心からの善意なのはわかっているが、どうにも困ってしまう。

 本当に何もおぼえていないのが問題なのに。

 カウンセリングで何を言うか困っていると、いつの間にか砂やら、インクたらすやつやら、人形を並べるやつやらをやらされヘトヘトになって一日が終わってしまうのだ。

 なのでおいそれと口にはできない。

 それに、おぼえているのは今の義兄である相良光太郎の中にいた時のことばかりだ。

 義兄は私が困ることはしない。

 毎日遊んでくれるし、お菓子を半分ちょうだいと言ったら半分に割って大きい方をくれる。

 その代わりに、義兄はド変態で下ネタを考えないと死ぬ病気に罹患しているが、誰にでも欠点の一つや二つはあるだろう。

 そんな義兄を私は大好きだ。義兄は遠慮のない性格なので、一緒にいても窮屈な思いをせずにすむ。変態だけど。

 恋愛感情とかはわからないが、一番のなかよしなのである。変態だけど。リアクション芸人だけど。

 そんな私も日中は義兄にくっついているわけにはいかない。

 学校というこれまた面倒なものに行かねばならないのだ。

 私は六年生の中途半端な時期に転校してきた。

 なんとなく親も生徒も察している。

 連続殺人犯に神の裁きを下した義兄は有名人だし、私の顔もネットで画像検索すれば出てくる。

 なので先生も同級生も、その親までも私に親切だ。いや、なにもできない赤ちゃん扱いしている。

 確かにいじめられるよりはマシだろう。

 拳銃を持った殺人鬼を素手で倒した義兄を持つ私をいじめるような根性のある子などいないだろう。

 まわりは私が人気者だと思っているようだが、それは断じて違う。ほんと、しんどい。

 普通の女の子の社会だってしんどいのに、かわいそうな子扱いは本当にキツい。


 その日もそうだった。

 給食を食べながらの談笑。

 ナポリタンと言うには不思議な味の麺料理を食べていると、同じ班の女子でウサギ小屋の話になった。

 私が転校してきたので大慌てで設置したものだ。

 私は小学校という雑な環境で飼育されることになったウサギさんに申し訳ない気持ちでいっぱいだ。

 本来ウサギは繊細で、あんな小屋にぎゅぎゅうにつめこんで飼育する動物ではないのだ。

 だから私は率先して飼育委員をやっている。いや、やらないといけない空気に流された。

 義兄だったら全力で抵抗して最後は笑いに変えてしまうところだが、私にあの変態……いや天賦の才能はない。

 でも凡人には凡人なりのいいこともある。

 こうやって話題には事欠かない。動物の話題は常に正義、鉄板なのだ。


「クロちゃんがスリスリしてくれるようになったんですよ♪ ブチ子もかまってくれないとドンドンしますし」


「美香ちゃん。ウサギ好きなんだねえ」


 私が話題を振ると、スポーティーな格好をした女子が乗ってくれる。

 鈴木由香里(すずきゆかり)ちゃんだ。

 よかった。はずさないで。


「うん。大好き。かわいいよね」


 私は笑顔を作る。もふもふは正義なのだ。


「放課後一緒に見ます? かわいいよ」


 だから私は由香里ちゃんを仲間に誘う。

 こうやってなにげない会話から女子は間合いをはかるのですよ。


「えー、生き物触るの怖い」


 なんということだ。

 もふもふなのに。かわいいのに。


「由香里ちゃん。ダメでしょ!」


 あー……やってしまった……。

 由香里ちゃんを叱ったのは、佐藤乃愛(さとうのあ)ちゃんである。

 彼女は委員長で……なんというか……正義感の塊なのだ。

 ただし人の迷惑かえりみず。自分が満足すればいい。そういうタイプだ。

 今回も私の誘いを断った由香里ちゃんを叱るつもりなのだ。

 乃愛ちゃんがからむと面倒くさい。空気も悪くなる。

 乃愛ちゃんにとって、私は天使のような存在で、守ってあげなければならない対象なのだ。

 もし義兄が私の立場なら、相手がキレるまで下ネタライブを開くところだ。

 ダメだ。義兄の悪い影響を受けている。よく考えるんだ。


「あははは。乃愛ちゃん、いいんだよ。由香里ちゃんには由香里ちゃんの事情があるんだから。もしよかったら、乃愛ちゃんどう?」


 来ない。こういうやつは人にはやらせるが、自分はやらない。

 私は確信していた。

 こうやって人間を誘導するのは義兄譲りだ。嗚呼……人間としての汚さよ。

 日々、義兄に悪影響を受けているような気がする。

 だが私の思惑は思いっきり外れる。


「そう……じゃあ、行くわ」


 ……なん……だと……。

 どうしてこうなった!

 乃愛ちゃんが行く気になってしまったのだ。

 するとまたよくわからない展開が起こる。


「乃愛と一緒だと美香ちゃんが心配だから私も行く」


 由香里ちゃんがそう言った。

 おっと意味がわからない。

 なぜ来る!

 完全にコントロールを失った私はとりあえずムリヤリ笑みを作った。


「うん、楽しみにしてるね」


 お義兄ちゃん! 助けて!

 私は一番あてにならないド変態になぜか心の中で助けを求めた。

 私はメロン味の粉を入れた牛乳を無心になって飲んだ。

 そして残った揚げパンをどうしようか悩むのだった。

 気を使いすぎて味が全然わからない……。


 さてさて、授業が終わり放課後。

 三人でウサギたちを見に行く。

 ウサギ小屋の鍵を開けて、ウサギを外に出す。

 脱走防止のためウサギ小屋を囲む柵にロックをする。

 すまぬ。狭いけど校庭でサッカーをやってる低学年のえじきにされるよりはマシだろう。


「へえ、本当に小さいな」


「抱っこする?」


「怖いから嫌」


 由香里ちゃんは本当に動物が苦手なようだ。

 私はほうきで小屋の中を掃除する。


「うわッ! 汚い! 臭い!」


 乃愛ちゃんが余計な事を口にした。

 少しイラッとしたが我慢した。私、偉い。

 乃愛ちゃんは悪くない。動物の世話なんてしたことがないのだろう。

 ……うん? 待てよ? もしかして私って過去に動物飼ってたのかな?

 今度聞いてみよう。私の過去は私よりもカウンセラーの方が詳しいのだ。

 私はサクサク作業を進める。

 水よし、寝床よし、エサよし。

 最後に遊んでやりながら点呼と。

 クロちゃんが寄ってくる。いい子、いい子。

 ブチ子もかまって欲しくてやって来る。ドンッ! ドンッ!

 なぜか怒っている。はいはい、クロちゃんがウザかったのね……。

 クロちゃんがオスでブチ子がメスだ。

 なぜ学校はオスメス一緒に入れているのだろうか? 増えるのに。

 オスメスを一緒に飼うと増えるから分けた方がいいと言ったのに「かわいそうだから」と却下された。

 後のことは責任を取らないし、知らない。私が卒業するころには大家族になっているだろう。

 モフモフを堪能すると、ウサギを小屋に入れ鍵を閉める。

 ゴミを捨てて職員室に鍵を返せば終了である。


「飼育委員の仕事はこんな感じです。楽しいですよ」


「私はいいや」


「私も汚いの嫌だから遠慮する」


 不評である。かわいいのに。


「鍵返して来るね。一緒に帰る?」


 私は一応聞いた。


「帰る」


「塾だから先帰るね」


 つれない返事をして二人とも帰ってしまった。子どもは忙しいのである。

 実は私もこの後、中学に行って義兄の合気道の練習に参加する予定だ。

 二人とも忙しいのをわかっていて誘ったのだ。

 私も義兄やその同級生の春香ちゃんといた方が楽だ。

 だが少し……少しだけ恐ろしい。私はいわゆる【ぼっち】なのではないか……と。

 サッカーかバレーでもはじめようか。ルールわからないけど。

 私は職員室に鍵を返しに行く。

 職員室の扉の前に行くと何やら声がする。


「不審者だって!? 寺島になにかあったらどうするんですか!」


 若い女性が怒鳴る。その声は担任の安永(やすなが)先生だ。

 おふー……なんてこった!

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