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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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天罰 2

「くっそ、もう二度と女装してパトカーなんか乗らねえぞ! バカ野郎が!」


 俺はマク●ーンのように口汚く罵った。


「てめえざっけんな! ぶっ殺してやる!」


 言葉こそ荒いが、もう穴戸をぶっ殺す元気は俺の中になかった。

 俺はひっくり返ったパトカーの中を這った。

 俺は同時に皆川を引き寄せる。

 皆川は意識がないようだ。

 俺の頭が熱い。

 ボタボタと滴った血が手に落ちた。

 皆川も血まみれだった。

 顔からも何カ所か血が出ている。

 女の子の顔に怪我させやがって!

 絶対に許さねえ!

 俺は皆川を抱えて、芋虫のように這っていくとパトカーの窓に到着する。

 ガラスがぐちゃぐちゃに崩れていた。

 俺は細かく崩れたガラスの破片を足でどかすと外に出る。

 すぐに俺は皆川を引っ張って外に出した。

 俺は尻餅をついた。

 膝に力が入らない。


「クソッ! 動きやがれこのバカ野郎!」


 俺は自分の太ももを殴った。

 なんとなく動けるような気がした。

 根拠なんてないがな。

 俺は皆川の脇に手を入れて自分の方へ寄せる。

 抱っこして逃げる体力はもう残っていなかった。

 そんな俺の耳に音が聞こえる。

 エンジン音だ。


「クソッ!」


 俺は足を引きずりながらパトカーから離れる。

 まだ運転してた警官を助けてないのに!

 俺は皆川を引っ張るとバランスを崩して転がった。

 自動車がパトカーを跳ね飛ばした。

 クソ!

 改造でもしているのだろうか。

 それだけやっても突っ込んだ方の自動車は無事だった。

 跳ね飛ばされたパトカーが爆発しアスファルトの破片が飛んでくる。

 俺は皆川に覆い被さって守った。


 痛ってえッ!


 俺の背中に破片が当たった。

 俺の情けない姿は遠くから撮影されていた。

 俺を助けようとしないことには文句は言わねえ。

 誰でも命は惜しいものだ。

 俺はチラリと皆川を一瞥した。

 皆川はまだ動かない。

 俺が失敗すれば皆川も死ぬ。

 逃げる体力は最早ない。

 絶対に失敗は許されない。

 そう思うと緊張で俺の心臓が高鳴った。

 俺は、もう一度太ももを殴る。

 動け!

 動きやがれ!

 俺は息を吸うとムリヤリ立ち上がった。

 本当に最後の力だ。

 膝が震えているが知ったことか!

 前方には穴戸の乗った自動車がエンジンをふかしているのが見えた。

 俺を轢き殺すつもりだ。

 俺は言った。

 穴戸の犯行の一部始終をだ。

 こいつは必要なことだった。


「菊池と組んで10年前から人殺しを繰り返したお前は……武藤には金、菊池にはたぶん……スナッフフィルムの主役を与えると約束して俺を殺させようとした」


 俺の声は安全圏にいたはずのテレビやネット配信者のカメラにもなぜか届いていた。

 そして俺の足下には皆川のスマートフォンが落ちていた。

 ちょうど穴戸のライブの画面になっている。


「そうだよ♪」


 穴戸が画面から返事をした。

 できすぎている。

 どうやら今も俺は神様の手の平にいるらしい。

 俺の声が届いたことに誰も疑問を持たなかった。

 当の宍戸ですらも。


「お前は……たぶん北条と俺が親しいことを知っていた。そしてタケルさんが10年前の事件を告発すると言い出したことをチャンスと思い……イベントの情報を得るためだけにTAKERUさんを拷問した」


「そうだよ! だってムカつくじゃない。あいつだけ成功しやがって! HIKARUちゃんの側にいやがるなんて!」


 この変態野郎が!

 俺は心の中で罵倒すると続けた。


「……追い詰められていたのは俺の方だったんだな。お前らの人生最後の花火に付き合っちまった」


 どう考えても神様の陰謀に違いない。


「いいじゃない♪ 僕と遊ぼうよ! せっかく僕が監督の作品の主役になれたんだからさ!」


「ふざけんな……武藤は邪魔になって殺し、菊池は俺を安心させるための噛ませ犬だ。違うか?」


「あはは! 僕は二人とは違う。いや去年の殺人鬼とだって違う! 僕らは天と地、陰と陽。同じ存在だ! 僕たちしかわかり合えない! 君だって知っているだろ? なあ」


 そうだ。

 それが一番の問題だった。

 俺はごく自然に穴戸のステータスを開いた。



 名前  : 穴戸大地

 ヨミ  : ししどだいち

 AGE : 19

 職業  : 悪魔

 所属  : ウルフズベイン

 LV  : 666

 HP  : 3243/3243

 MP  : 7000/7000

 STR : 1070

 INT : 1560

 DEF : 1056

 AGI : 1063

 DEX : 1180

 LUK : 1012



 スキル :


 アイドル LV99

 殺人 LV666


 魔法  :


 鋼鉄の棺桶



 バッドステータス:


 悪魔

 ダークネットサイト『ウルフズベイン』幹部



 備考  :


 天罰(パニッシュメント)準備ができました。(神様)



 前に見たときとはステータスが違っている。

 つまりだ……

 穴戸はステータスを隠す能力者だ。

 前の殺人鬼は自分の顔を認識させない能力を持っていたのだ。

 俺と相性悪すぎ。

 しかもおそらくステータスの一部……例えば天使か悪魔かの情報を見ることができるんじゃないだろうか?

 言えよ、神様。

 だがこれも終わりだ。

 俺は最後の力を振り絞って静かに構えた。


「それが君の力か……」


 穴戸が言った。

 天罰(パニッシュメント)の発動条件は複雑だ。

 まずは投票制だ。

 世間様。

 グローバルなネットで繋がった広い世間様にこう訴えるのだ。


『こいつぶっ殺していいか?』ってな。


 みんなが『この腐れ外道はぶっ殺せ!』と思ったときに俺の拳を借りて発動する……

 まさにアウトロー。

 実に野蛮な能力だ。

 だから俺と穴戸の会話はとても重要だった。

 穴戸は自分の犯行をペラペラと喋ってしまった。

 世間に自分が如何に悪党であるかを宣伝してしまったのだ。

 だってパトカーにぶつかった程度じゃ『死ね』って思わないだろ?

 もしこいつが死んじゃったら心が痛むだろ?


『10年前から人殺しを繰り返した最凶最悪のクソ野郎』


 これだったらコイツが死んでも大多数の人は心が痛まないはずだ。

 確かに法の適正手続きや、刑法は人が社会作る上で重要だ。

 だが……今、世界はわかりやすい正義に飢えている。

 その正義こそ神様の望むものに違いない。

 俺は言った。


「最後の警告だ。自首すれば殺さないでやる」


「ヒャッハー! ラストシーンだね! 君の頭がトマトみたいに潰れる所を世界に見せつけてやるよ!」


 お前だったらそう言うだろうな。

 風が吹いた。

 ガソリンのにおいが鼻を刺激する。


「じゃあ行くよ!」


 タイヤの摩擦音が聞こえた。

 それと同時だった。

 俺の体に力がみなぎる。

 世界中のみんなが願ったのだ。


『罪人を滅せよ』と。


 俺は拳を握り、力強く踏み込み……ぶん殴った。



「天罰!(パニッシュメント)」



 俺の拳が車体にぶち当たる。

 車体に拳がめり込み、俺に激突した車が空中に投げ出される。

 俺や皆川を飛び越し、一回転すると国道のアスファルトへ落下する。

 地面が揺れるほどの音を立てながら、車は地面に突き刺さった。

 穴戸の悲鳴が聞こえる。


「クソ、ドアが開かない! ガラスも割れない! どうして? なんでこんな!」


 次の瞬間閃光が走る。

 爆発。

 炎上。

 地獄の業火が自動車を包む。

 穴戸が絞め殺された野生動物のような悲鳴をあげた。


「あ、熱い! 熱いいいいいいいいいッ! 助け、助けてえええええええええッ!」


 もう一度爆発する。


「ひいいいいッ! 指が! ゆびがあああああッ!」


 俺が立ち尽くしていると今になって警察や消防がやって来た。

 穴戸を助け出そうとするが、ガソリンに引火して近づけない。

 さらに車が爆発するが、なぜか穴戸の実況は途切れなかった。

 全世界に向けてバーベキューが実況される。


「撮影をしろ! 俺を撮影しろおおおおおおッ! ひいいいいいいッ!」


 穴戸の最後の悲鳴まで実況される。

 そいつは、こいつらが作っていたスナッフフィルムよりも残虐だった。

 でも世界中の人々は映像こそ見なくても結果には満足した。

 暴力と残虐、だがそこには正義があった。

 ……もしかすると穴戸自身も幸せだったのかもしれない。


 俺はその場にへたり込んだ。

 これで終わりだ。

 今度こそ全て終わったのだ。


 俺、今度こそ捕まるんじゃないかな……殺人で。

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