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ステータスが見えるようになった俺は君を絶対に救い出す! ~俺と天使の事件捜査ファイル~  作者: 藤原ゴンザレス
優しい悪魔

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59/66

天罰 1

 結論から言うと菊池は生きていた。

 雷が全身を貫き、背骨に自分の剣が突き刺さって小学生に捕まった夏のカナブンみたいになっていたが、それでも野郎は生きていた。

 雷で溶けたマスクが顔を焼き、もはや親でもわからない姿だ。

 ちなみに雷の巻き添えを食らった俺は肋骨を骨折……したっぽい。

 先ほどから漏らしそうなほど痛い。

 皆川は軽い火傷。

 俺たちの勇姿はどこへやら。

 あくまで事故として片付けられた。

 ところがネットのライブは熱狂。

 みんな悪党の悲惨な末路が大好きなのだ。

 さて俺は救急車で運ばれていく菊池のステータス画面を密かに開いた。

 どうしても確認したいことがあったのだ。



 名前  : 菊池龍一

 ヨミ  : きくちりゅういち

 AGE : 19

 職業  : 大学生

 所属  : テニスサークル

 LV  : 89

 HP  : 24/1024

 MP  : 735/735

 STR : 666

 INT : 666

 DEF : 666

 AGI : 666

 DEX : 666

 LUK : -666666



 スキル :


 絞殺 LV666

 刺殺 LV666

 撲殺 LV666



 魔法  :


 ×優しく殺して LV666



 バッドステータス:


 共感性の欠如

 幼女しか愛せない

 暴力と愛の違いが理解できない

 性的無能力

 悪魔

 宗門堕ち(運にマイナス補正)



 備考  :


 無力化されました。(神様)



 やはりだ……

 皆川の『アナセマ』は運をマイナスにする能力だ。

 つまりだ。

 皆川がいなければ俺は死んでいたと……

 悪魔を助けろ。つまり悪魔がいないと死ぬって事だったのだ。

『パニッシュメントが必要』と神様は言っていた。

 それはパニッシュメント相当のスキルが必要という意味だったのだ。

 もっとわかりやすくしてください。

 指示待ちでいいから!

 自主性とかいらないから!


 ……いまちょっとタマタマがキュッとした。


 皆川は遠藤さんに付き添っていた。

 手を取って目に涙をためているのが見えた。

 ストレッチャーに載せられた遠藤さんは目覚めない。

 なんらかの薬物の影響らしい。

 救急車で搬送される予定だ。

 俺たちも応急処置がされると警察の車で病院に行くことになった。

 なにせ俺の肩には菊池の歯が何本も突き刺さっている。

 ピンセットで出なければ切開して取り出すとか恐ろしい事を言われた。

 死にそうなほど怖い。

 そして問題はパトカーで行くことだった。

 なんでも救急車が足りないらしい。

 法律とか規則的には違反らしいが仕方がないとのことだ。

 なんでだろう?

 なにか起きているのだろうか?

 嫌な予感がする。


 遠藤さんから遅れること数分、俺たちはパトカーで病院に向かった。

 護衛に俺たちの姿を実況中継する連中に……大名行列だった。

 俺のスマホにはオカンのお怒りの着信が数十件入っている。

 メールやメッセージも大量である。

 黙っていたのが悪かったかもしれない。

 病院から出たらしばらく旅に出ようと思う。

 北条に泣きつこう。

 マジで泣きつこう。


 アドレナリン的な物がなくなってくると段々と肩が痛くなる。

 泣くに泣けない。

 だって皆川がいるもの。

 童貞は格好つけたいもの。

 たとえ方向性が間違っていて後に黒歴史になろうとも!

 それを女子にはわかって欲しい!

 世界よ! 俺に優しくしろ!


 皆川はスマートフォンを見ていた。

 なにを見ているのだろう。

 すると皆川が俺にスマートフォンを差し出す。


「これを見てください」


 手が震えていたが俺は我慢して画面を見る。

 それはテレビだった。

 生放送で何かを流すらしい。


「なにこれ?」


「穴戸がネットでライブ映像を流しているらしいです」


「は?」


 俺が間抜けな声を出すと画面が切り替わる。

 俺のサポーターよりもエグい角度の海パン姿の穴戸が画面に映る。

 なにこの放送事故。

 すると穴戸が笑う。


「やあみんな。世界の穴戸だ!」


 ……は?

 極限まで肥大化した自意識の醜悪さよ。


「みんな穴戸劇場を楽しんでもらっているようだね。じゃあ、みんなに今回の真相を語ろうと思う」


 穴戸は醜く顔を歪める。


「あれは……10年前のことだった。僕は……僕たちは子どもを殺した。僕は撮影を担当していた。それはダークウェブで高く売れた」


 ……はい?

 それは俺の予想の遙か上を行っていた。

 ダークウェブだと!

 ダークウェブってのは普通だったら見つけられない特殊なサイトや通信のことだ。

 暗号化通信ソフトなんかを経由して探す。

 弾圧を受けてるようなジャーナリストや、テロリストや犯罪組織なんかも使っている本当にヤバいやつだ。

 なんでも薬物の販売、違法なエロ動画、殺人の依頼までできるらしい。

 そこでスナッフフィルムを販売していたのか!

 どうりで金回りがいいはずだ!

 親の金じゃなかったのか!


「それから僕は最高の映像作品を作ることを目標にしていた。そして彼女に会ったんだ……去年のあの日」


 ……ちょっと、待ってね。

 すいません。

 それ以上はマジでやめてくださいませんか。

 土下座まではするんで。

 いくらでも頭は下げますんで。

 ……いやマジで。

 なにせ俺は穴戸が言いたいことがわかったのだ。


「全身に下品な書き込みをされて踊っていた君に僕は恋をしたんだ!」


「やめてー!」


 俺は叫んだ。

 俺の心に深刻なダメージ!

 らめ、マジでらめ。

 それは一年前の俺の姿。

 裸踊りを強要された俺だったのだ。

 つまりだ……今回の件は俺が余計な事をして死人が出た……という可能性も多少あった。

 ちょっと俺の無能さに問題があった。

 という可能性があった。

 だがそれは違った。

 これは俺が息をしてるだけで人が死にまくる案件だった。

 言えよ神様!


「僕は君を殺すためにこの計画を練った! どうやって君を殺そうか! どうやって君を拉致しようか……そればかり考えていたんだ! 最高の作品を作るために昔の仲間を集めた。どう、楽しんでもらえたかな!?」


 ……ガッデム。

 楽しんでなんかねえよ!


「君を絞め殺したい。焼き殺したい。刺し殺したい。轢き殺したい。殴り殺したい。君が息を引き取るところを撮影したい!」


 吐きそうです。

 俺の心は折れまくった。

 神様……全て俺のためだったのね。

 俺のために事件を解決しろって言ったのね!

 画面の中の穴戸は顔を赤くしていた。

 そして映るのは出てはいけないもの。

 穴戸さん。はみ出してます。超元気です。そして大きいです。


「相良さん。自分の……下を見るのはやめてください!」


 皆川がなにか言ったが俺はそれどころじゃなかった。

 ……負けた。

 テレビはモザイクが間に合わない。

 完全に放送事故だろう。

 もう開き直って放送している。


「はあ、はあ、はあ、はあ……HIKARUちゃん。今から殺しに行くよ~。待っててね~」


 ここでライブは終了した。

 ……俺、これが終わったら引きこもるんだ。

 もうお家から出ないんだ。

 警察に撃ち殺されろゴミ!

 俺が必死に罵倒していると、後方から何かが猛スピードで近づいてくるのが見えた。

 クジ●ックス先生の漫画に出てきそうな車だ。

 それが蛇行運転をしながら近づいてくる。

 それが俺たちの護衛しているパトカーを蹴散らしていく。

 巻き込まれた中継車も事故に巻き込まれる。

 すげえドライビングテクだ!

 おい、ちょっと待て。

 来るのが早すぎだろ!

 なあ、待てよ! おいやめろ!

 パトカーが揺れる。

 追突された!

 視界がグルグルと回る。


 死ぬ!


 今回ばかりは俺も覚悟した。

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