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「それは、とぼけているのか? 本当に知らないのか?」

「だからなんのこと?」

「ジャスミンは知らないって言ってるのよ! もちろん私だって。質問するなら、最初にきちんと説明してよ!」


 これはローズの言葉だった。これでダークエルフたちの動きが止まる。そりゃそうだろう。説明なんかしたらもっと面倒なことになるのだ。困った顔で、ダークエルフのひとりがメアリーのほうをむく。


「どうしますか? こいつら、知らないって態度をとっていますが。信用しますか?」

「それでかまわん。どうせ、山奥からきた田舎の白い連中だ。どこかで何か言いだしても、勝手な思いこみのたわごととでも言って笑い飛ばしていれば、それで済む」


 メアリーがジャスミンたちを眺めながら言う。この調子だとダークエルフ語だな。ありがたい。これならジャスミンたちに危機が及ぶこともないはずだ――と思っていた俺にむかって、あらためてメアリーが視線をむけてきた。


「問題はこっちだな。私たちの言葉を直接聞いている。もちろん、いまもだが」

「「「「あ」」」」


 メアリーの部下の四人も、俺のほうをむいた。なるほどな。俺の立場がヤバいってことは変わっていなかったらしい。


「さて、この場合、どうするかと言うとだな」


 言いながら、メアリーが、ものすごく不自然なつくり笑いを浮かべた。かえって怖い。不気味である。


「確か、Bだったな? ちょっと、話があるんだ」


 不自然な笑顔のまま、俺に近づいてくる。これはまずいぞ。ビビりながら後ずさる俺の腕をメアリーがつかんだ。


「まあ、そう嫌がらずに。ダークエルフ語のわかるもの同士の、ちょっとした会話ではないか」

「待ってくれよ。ちょっとした会話も何も」

「だったら、この町の言葉で会話してもいいんだぞ? まあ、そのときは、少し場所を変えることになると思うが」


 もっとまずいだろが。どこか、人けのない町の通路につれこまれて、そのまま短刀で胸をドスンなんてことになったら、いくら獣人類の生命力でも蘇生できる自信はない。こいつらが口封じ目的で俺に何かするのは間違いなかった。

 だからと言って、本気で反抗して、俺がメアリーたちを傷つけたら、たぶん俺が悪いことになって刑務所送りである。何しろ俺は黄色だ。


「あああ、あのな。さっき聞いただろう? 俺は獣人類だ。強いんだぞ。痛い目に遭いたくなかったら」

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