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こんな声が背後から飛んだ。振りむくと、昨日、騎士寮で会ったダークエルフとそっくりな女性たちがスタスタ近づいてきていた。たぶん同じダークエルフだろうとは思うが、断言はできない。美しい顔立ちというのは、大体が似通るからな。
「「あ」」
ジャスミンとローズが、同時に小さく言った。横眼で見ると、ジャスミンは嫌悪の顔で、ローズは恐怖の表情である。驚いたな。そこまで仲が悪いものなのか。
「「「「「あ」」」」」
今度はダークエルフたちもだ。ちっ、などと舌打ちを打つ者もいる。
「こらえろ。昨日と同じで子供がいる」
先頭に立っていたダークエルフの女性が、舌打ちしたダークエルフの女性に声をかけた。あ、やっぱり昨日のダークエルフか。先頭に立っているのは、たぶんリーダーだな。子供が見ている前で喧嘩をするべきではないという判断はありがたい。それはいいけど、それとはべつに、このダークエルフたちはどうするのかと思いながら見ていたら、そのリーダーが、俺のことをちらっと見た。
「まだいたんだな。まあ、いいか」
言葉の通じない――ということになっている――俺のことはどうでもいいらしい。リーダーが俺から目を逸らし、アーバイルのほうをむいた。
「昨日、こいつらが、ナイトゴーレムの具合がおかしいって言ってたそうだな? 騎士寮で聞いたんだが。それで検査はしたのか?」
「あ、まあ、したはしたんだが」
アーバイルも、このダークエルフたちは知った仲らしい。で、なんとなく、ジャスミンとダークエルフを交互に見ながら説明をはじめた。アーバイルはアーバイルで、エルフとダークエルフの不仲を知っているって感じだった。そこまで有名なのか。これは面倒臭いぞ。
「一応、昨夜のうちに、近郊に配備されたナイトゴーレムに招集をかけてた。しばらくしたら、ここにくる。それから、待っている間、ここにいるナイトゴーレムで、いろいろとシミュレートしてみたんだ」
「ふむ」
ダークエルフのリーダーがうなずく。――気がついたら、ジャスミンとローズは俺の背後に移動していた。当然か。むこうは5人だから、多勢に無勢である。
「それで判明したんだが――というか、まったく判明できなかったと言うべきかもしれんが、ナイトゴーレムが魔力切れになっても、エルフたちを襲うことは絶対にないということがわかってな」
「お、そうなのか。問題なしか」
ダークエルフのリーダーが意外そうな顔をした。またうまいこと演技するものである。




