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「――まあ、そうだろうな」
あたりまえの説明である。突然変異で、本来の戦闘民族よりも、はるかに高い戦闘力を持った個体というのは、漫画で何度も見たことがあった。うなずく俺を見て、マーガレットが話をつづける。
「ところが、自らの強靭な魔力に気づかず、魔導士としての教育を受けてこなかったものはどうなるでしょう?」
いたずらっぽい顔をしながら、マーガレットが俺に質問した。ちょっと想像してみたが、見当がつかない。
「どうなるんだ?」
「あなたのようになるのです」
マーガレットの表情は、冗談を言っているような感じではなかった。
「全身にみなぎる魔力を周囲に放出させる方法を、あなた方は知らないのです。そのため、魔導士としての魔力の行使ではなく、体内に宿っている魔力が、自らの肉体の強化という形で具現化するのです」
ちょっと意外な説明だった。驚く俺をマーガレットが見据える。
「それが獣化症の正体です」
「へえ」
なんとなく、俺は自分の両手を見た。そうだったのか。そういえば、遺伝子にはなんの問題もないとか、日本の医者も言ってたしな。それに、日本に魔力探知機なんてあるわけがない。獣化症の原因が解明できないわけだ。
俺は、魔法の使い方を知らない魔法使いだったのである。
「ただ、ちょっと質問」
俺は手をあげた。マーガレットが微笑む。
「なんでしょう?」
「こっちの世界――サーバナイトだったな。ここには、俺以外の獣人類はいないのか?」
「います。それが何か?」
「だったら、なんで俺を珍しそうな目で見たんだ?」
「彼らとは、基本的に交流がありませんので。どこに住んでいるかもわかりませんし」
マーガレットの微笑が苦笑になった。
「それに、彼らには彼らの部族の教えがあり、誇りがあります。会うことがあっても、わたくしたちの話など聞いてくれませんし、もちろん協力を願いでても、うまく行くはずもないでしょう」
「それに、都の人間って、獣人類を怖がるから。同じ人間なのに」
ジャスミンが追加で説明してきた。




