105
こいつらまでこの調子か。まあ、部分的には正解なんだけど。それに、いまは怒るときではない。
「あのな。偏見はやめてくれ。とりあえず自己紹介するけど、俺はBってもんだ。よろしく。それからドラゴンがきてるんだよな?」
俺が確認したら、ドワーフたちが顔色を変えた。
「おまえ、我らの言葉までわかるのか!?」
「いや、それよりも、こいつ、とんでもないことを言ったぞ。ドラゴンだと!?」
「あの、いきなりの魔力探知はドラゴンだったのか!?」
ドワーフたちが口々に言いだす。こいつらも、自国の言葉でひそひそ話をする手合いだったらしい。いや、それは置いといて。
「さっき、ここにいるダークエルフたちから聞いたんだ。この魔力はドラゴンだってさ。どうすればいいんだ? ここは地下だろう。隠れていればいいのか? それとも地上にでればいいのか? ずっとここにいて、爆撃食らったみたいになって生き埋めにされちまう、なんてことにはならないのか?」
確認も兼ねて俺が訊いたら、視界の隅にいたメアリーが妙な顔をした。
「B、いま言ったバクゲキというのはなんだ?」
あ、そうか。こっちではないんだよな。こういう、存在しない概念は通訳してくれないらしい。
「えーとな。なかに火薬のたっぷり詰まった大砲の玉がどんどん落ちてくることだ。地下にいたら天井が崩れて俺たちはここで死ぬ」
こんな説明してる場合でもないのに。面倒なのでものすごく簡単に説明したらメアリーたちが顔色を変えた。ついでに言うとドワーフたちもである。
「ドラゴンとはそんなに恐ろしいものだったのか!?」
「私たちも知らなかったぞ!」
「おいドワーフども、この地下はそんなに脆いものだったのか!? 屑みたいな基地をつくりおって。恥を知れ!」
「我らのつくった整備工場に無断で侵入しておいて。恥を知るのは貴様たち寄生虫どもだろうが!!」
「言わせておけば、この肉団子どもが――」
もうつかみ合い寸前の状態のメアリーたちダークエルフとドワーフたちだった。つか、ドラゴンのことを知らなかったのかこいつら。サーバナイトの住人なのに。
「おまえたち、ドラゴンを見たことがなかったのか?」
さすがに不思議に思って質問したら、メアリーたちダークエルフもドワーフたちも殺気だった顔でこっちを見た。




