第二十二話 現実の私服 vs 異世界の青い下着…どっちも地獄
現実世界に戻って三日目。
私は自分の部屋のベッドにうつ伏せになって、
枕に顔を埋めていた。
「……死にたい」
制服のブラウスとチェックのスカートが、
汗で背中に張り付いている。
学校は今日も休んだ。
治験会社の「至急来院してください」というLINEは、
すでに5件溜まっている。
私はゆっくり体を起こして、鏡の前に立つ。
普通の女子高生の姿。
濃い栗色の三つ編み、紫がかった瞳、色白の肌。
制服姿は可愛いと言われるけど、
今はただ「重い」。
「……異世界のビキニのほうが、
実は楽だったかも」
そんな馬鹿なことを考えて、
すぐに頭を振る。
異世界では、あのライトブルーのレース付きビキニが
「青い実りの衣装」として定着している。
胸元と腰、両サイドに付いたピンクのリボンが揺れるたび、
魔力が安定する。
でも、現実世界でそれを着て外を歩くなんて論外だ。
私はクローゼットを開ける。
Tシャツにショートパンツ。
夏はよくこれで過ごしていたけど、
今はそれすら重く感じる。
「……どっちも地獄」
異世界では、
ほとんど下着同然の姿で精霊の前で舞わなければならない。
胸やお尻を強調するような動きをしながら、
肌を自分の手で撫でて魔力を循環させる秘儀。
知らない人が見たら完全に自慰行為に見えるやつ。
現実世界では、
普通の女子高生の格好で「普通」を演じなければならない。
友達に「最近秋の匂いがするよね?」と言われ、
紫の瞳を「照明のせいかな」と笑ってごまかす毎日。
私はベッドに崩れ落ちる。
「……誰か、分かってくれる人」
ふと、異世界で感じた「気配」を思い出す。
精霊の歌が、少し変わっていた。
いつもより高い音階。
切迫した響き。
「何か……来る?」
でも、確信はない。
期待しても、しかたないよね。
私はスマホを手に取る。
治験会社のLINEを開く。
『実 あかしこ様
体調データに異常が見られます。
明日、必ず来院してください』
「……はあ」
私はため息をついて、
制服のままベッドに倒れ込んだ。
現実の私服も、
異世界の青い下着も、
どっちも私を苦しめる。
「……早く、どっちかに戻りたい」
でも、どっちに戻っても、
私は「普通」ではいられない。
私は目を閉じる。
秋の森の紅葉の匂いが、
まだ鼻の奥に残っている気がした。
(第22話・了)




