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第二十話 秋の森への長い道 ~準備不足の代償・後編~


馬車は泥濘を抜け、何度ものトラブルや戦いをくぐり抜けて、

ようやく、秋の森と思われるあたりが視界の端に入るところまで来た。


まだ数時間はかかりそうだが、このあたりでさえ

紅葉が広がり、落ち葉が絨毯のように敷き詰められている。

空気が甘く、ここからでも魔力の匂いが感じられる。


ラセリアが馬を止める。


「村はもうすぐだけど、魔獣の気配が濃い。

全員、警戒しろ」


俺たちは馬車から降り、

護衛客と御者のラセリアだけが馬車に残った。


「……『あかしの巫女』様」


心の中で呟く。


リリーシャが俺を睨む。


「……あんた、ほんとに巫女様に会うの?

こんなボロボロ状態で。それとも死ぬ気?」


俺は答えた。


「でも、会わないといけないんだ……」


ミランダが優しく笑う。


「まっ、がんばってね」


ドルガンが盾を構える。


「巫女様に会うまでは、守ってやるぜ」


ヤミカは無言で、周囲を警戒。


そんな状態で、俺たちは馬車を取り囲んで進んだ。


落ち葉が足元でカサカサ鳴る。

広葉樹のトンネルを抜けたところで、

最初の事件が起きた。


道中、谷を渡る古い木橋があった。

けれど、真っ黒い、巨大な猫のような魔獣が

その上を渡って来るではないか。


ラセリアが舌打ち。


「まずいな……」


俺が馬車の下から


「迂回できないのか?」


と尋ねると


「ここを迂回したらかなり遠回りになる」


その返事にリリーシャは露骨に嫌がった。


「こんなところで消耗するのは不利よ。

迂回しましょう」


俺は橋の向こうを見る。


「……ひょっとすると村が危ないかも」


「?」


「馬車の通れる道にまで魔獣が出てるんだ、

村にだって侵入するかも。」


リリーシャはため息をついた




魔獣退治で手間取ったが、なんとか谷間に叩き落とせた。

致命傷は与えただろう。

けれど……戦いに巻き込まれ、橋が落ちてしまった。


「ごめんなさいね」


ミランダがすまなさうに謝る。

彼女の放った炎魔法で木橋に火が燃え移り、

焼け落ちてしまったのが原因だからだ。

いつもとは逆に、俺がミランダを元気付ける。


「しかたないです。あの場ではベターでした」


ドルガンがつぶやく


「迂回するしかねえか。」


「それじゃ今日中には着かないぞ…」


何か手は無いか……俺は考え続けた。

つり橋を作ろうにも周囲に適当な材料は無い。

木橋の修理も、やってやれないことは無いが

2~3日かかるだろう。


そもそも、木だから燃えちゃったんだ。

石橋や土橋だったらよかったのに……


……土!?


「リリーシャ!」


突然に俺が叫んだから、みんながびっくりしてた。

悪いと思ったけど謝ってる余裕は無い。

俺はまくし立てる。


「土魔法で橋をかけられないか?」


「はし?」


「そう、橋。土の橋。土橋だよ!」


リリーシャと俺が見詰め合う。

しばし沈黙。先に目をそらしたのは彼女だった。


「難しくは無いけど。……だが、断る!」


「なぜ!!?」


「馬車が通れるほど頑丈な土橋を、

通る間、ずっと保持するんでしょ?

そんなに消耗したら、次の戦いに影響が出るもの」


「そんな……」


俺は絶望に力が抜けた。

そこへ、護衛対象の客から助け舟。


「村まであと1~2kmくらいです。

魔獣がまた出たとしてもせいぜい1回、

なんなら走って逃げ切れるかもしれません。」


ありがたい! 拝みたくなるほどありがたい!

お客様大菩薩!!!


いや、生きるものすべてがいずれは菩薩となり

悟りを開くのだから、

この人だっていちおう将来の菩薩ではあるのだけど。


とにかくこんな意見が出たことで、

リリーシャに視線が集まる。


リリーシャはちょっと顔をゆがめて困ってたが


「もう、わかったわよ……

あんたの恋しい巫女様のため、働いてやるわよ!」




こうして土魔法が発動。


谷の下から石がせりあがり、周囲の土が集まってきて、

十秒としないうちに立派な土橋となった。


「よし、急ごう」


「待て、まずは」


ドルガンが一同を制し、慎重に土橋を渡る。

渡りきると、盾を構えて周囲を警戒した。


「大丈夫そうだ」


「……早くして」


リリーシャは苦しそう。


ラセリアが馬に鞭を当て、速足で馬車が

渡っていった。

ミランダたちもそのあとに続く。


「俺たちも急ごう」


しかし魔力消費が激しいのか、

リリーシャの顔が青ざめてきている。


危険を感じた俺は……。


「ちょっ……何するの!」


「急ぐんだ、文句は後で聞く!」


リリーシャを横向きに抱き上げた。


挿絵(By みてみん)


「俺たちが渡るまで、がんばってくれ!」


リリーシャにそう声をかけ、

横抱きにしたまま土橋を駆け抜けようとした。


間一髪!

俺の足が離れた場所から橋が崩れだした。




なんとか走り渡ることはできた。

渡りきったところで橋は完全に崩壊していた。


般若心フリダヤ経の結末部が脳裏をよぎる。


行った(ぎゃーてぃ)行った(ぎゃーてぃ)

完全に行った(はーらーぎゃーてい)

向こう岸へ(はらそう)完全に行った(ぎゃーてい)

到達した者に幸あれ(ぼうじーそわか)……


前世に聞いた、「三行目まで英語で発音しても似た音になる

(gone to, gone to,

 par(fect)ly gone to,

 par(fect)ly (the other) side gone to... )」

という説も頭をよぎった……が、今はあんまり関係ない。


ともあれ、全力疾走した後だから息が荒い。

危機一髪で心臓もバクバク。


気がつくとリリーシャも、走ってないくせんかなり息が乱れていた。

相当に消耗したのか……

心配して顔を覗き込む。


「ち、近い近い近いっ! は、早くおろしなさいよよ!」


「あっ、ごめん」


それでも不思議と自分から降りようとしなかったリリーシャを、

そっと、馬車の荷台にと座らせた。


「リリーシャ……ありがとう。

おかげで助かった」


リリーシャの顔は、青くなったり赤くなったりしている。

そんなに消耗したのかな……

彼女は、ぷいっと顔を横に向けてつぶやいた。


「……べ、別に。あんたのためじゃないんだからっ」


…あれ? なんだこの言い回し?



リリーシャを「お姫様抱っこ」してしまってたことに

気がついたのは、帰り道でのことだった。


(第20話・了)


次は第21話 ついに巫女様の宮殿へ。ところが……その前にあかしこパートなのだ。。。

験子「胸、強調されすぎ!」



本当は道中のトラブルやラブコメが他にも2話分くらいあったのですけど、「しつこい」「早く秋の森に行きなさい」「読者も早くしろよと言ってる」とAIさんに叱られてしまい、省略したのでありました。(^^;

しかしことラブコメ表現に関しては、AIさんに任せておくとあまりに露骨すぎて面白みが減退するので、ところどころ加筆修整が必要となりました、、、

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