↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
少女コンプレックス  作者: 小野寺 大河
PR
15/29

十五話

 放課後、結ノ介と翠と夜子は、屋上に集まっていた。

 夜子が切り出す。

「そろそろ、ミスコン当日の衣装と自己PR決めないとね」

 結ノ介は軽く頷き、

「衣装とPRか、重要な問題だな。写真は制服だったけど、コンテスト当日の衣装は各々が誂えるんだよな。衣装って普通どんなのなんだ?」

「基本的には何でもいいんだよ。あ、でも過度な露出とか、過激なものはダメ。あくまで学生らしくね」

 そりゃそうか、と納得する。

「扇情的だったり、グロテスクだったりするものはダメってことだな」

 翠に視線を移し、どんな格好が似合うだろうかと何気なく考える。

 すると、翠は両手で体を隠すようにして、

「あなた、……その、えっちなこと考えてなかった?」

「は? 考えてねーよ」

「うそ、いやらしい目で見てた」

「いやいや、見てないって、自意識過剰だ」

 灰半の前で、なんてこと言うんだ。

「見てたじゃない」

「どんな衣装がいいかなって考えてたんだよ。冤罪だ」

 夜子が仲裁に入る。

「もう翠ったらダメでしょ。五野くんは年頃の男の子なんだから、そういうことだって考えるよ。それが当たり前なんだから」

 結ノ介が「そこをフォローするの?」と慌てると、翠は釈然としないながらも、

「夜子ちゃんがそう言うなら……、あなたが妄想してたことを許すわ」

「おいおい、事実が捻じ曲げられてるぞ。俺は妄想を許してほしくて怒ってたんじゃない。そもそも妄想してないんだよ」

「でも、夜子ちゃんが妄想されるなんて、私耐えられないよ」

「俺は別に……!」

 言葉に詰まる。

 夜子で妄想なんて、もう数えきれないくらいしている。

「やっぱり妄想してたんじゃない」

「だから違うって、」

 と抗うが、もはや何の説得力もない。

 勝機がなくなったため、話を戻す。

「PRって、具体的には何がいいんだろ」

 夜子が答える。

「簡単な自己紹介とアピールする時間が与えられるの。持ち時間は前にも言ったけど一人五分、特技とかが多いかな。学校のホームページに少しだけ去年のミスコンの写真があって、それを見た感じだけど。PRも危険だったり、公序良俗に反していたりするとダメ」

「衣装もそうだけど、過度な露出とか過激、危険なものって、判断基準が難しくないか」

「ミスコンの委員会の人皆で話し合われるんだよ。二週間前までに衣装とPRですることを写真と書類で委員会に提出して、それから会議で話し合われるんだと思う。そこで引っかかった人は、委員会から連絡があって、再度考え直さなきゃいけない」

「二週間前には衣装は考えるだけじゃなく、用意しとかないといけないわけか」

 どちらかというとそっちを優先しないといけない。

「クラブやってる子は、どっちも決まりやすいかもね」

「見てる方も分かりやすいしな。黒凍は帰宅部だよな。何か人前でできる特技ある? 例えば習い事とか」

 思い当らないのか、長い時間考え込んでいる。

 それからようやく、

「……一発芸みたいなものなら。校長先生の『えー』っていう口癖の真似」

「学校で一番偉い人をイジるんじゃないよ」

「じゃあ日本史の先生が近代の話をするときに、ちょっとだけテンションが上がる瞬間」

「誰が分かるんだよ」

 ダメだ、独特過ぎると、結ノ介は嘆息し、

「他の参加者が何やるか気になるよな。聞いたら教えてくれるかな」

 夜子は少し難しそうな顔をする。

「人によるかも知れないね。教えてくれる人もいるだろうけど、皆基本的には敵同士だから教えないかも」

「敵に塩を送るような真似はしないか。でも、できれば被るのは避けたいし」

 被った時点で、後の方が二番煎じの様相を呈する。

「PRの順番ってどうなるんだ?」

「抽選会があるの、一週間前だったと思う」

 抽選ばっかりはどうにもならない。運次第だ。

「過去の資料とかないのかな」

「委員会室とかに保管してるかも。皆で行ってみる?」

「そうだな。ここでこうしてても仕方ないし、そうするか」

 夜子の提案に、結ノ介と翠は首肯した。

 三人でミスコンの委員会室に行く。

 生徒会室の隣にあり、結ノ介とは普段縁のない場所だ。

 何となく少し緊張する。

 翠はかなり緊張しているようだが、夜子は来たことがあるようだった。

「この辺りに来たことあるみたいだな」

「クラス委員会が、この階の大教室で行われるから」

「そうなのか。その委員会って頻繁にあるの?」

「一週間に一回だよ」

「大変そうだな」

「全然そんなことないよ」

 目的地に着き、結ノ介がノックすると、中から「はい」という声が聞こえた。

 パタパタという足音が近づいてきて、ドアが開く。

 おとなしそうな女の子が、顔を出した。

 夜子が自己紹介をし、

「過去の資料を見せてもらえませんか」

「少々お待ちください」

 と、片側の壁に設置されたステンレスの棚に駆け寄った。

 いろいろな色のファイルや大きな茶封筒が並んでいる。

 資料や必要書類が、まとめられているようだ。

 他に誰もおらず、彼女一人のようだ。

 室内は狭く、隅にたくさんの段ボールが積まれている。

 その段ボールから何かの飾りや、用途がよく分からないものが雑多に溢れている。

 とにかく物が多く、また雑然としているせいか圧迫感を覚える。

 倉庫という印象だ。

 委員の女の子は、随分手間取っている。

「すいません。私一年で、まだここのことを把握仕切れてないんです」

 彼女はもう一度、すいませんと謝った。

 結ノ介は「全然いいよ、ゆっくり探してよ」と言い、夜子も、

「無理を言っているのはこちらですから。どうか気にしないで下さい」

 翠も頷くと、委員の女の子は頭を下げた。

「でも一人で大変だね。上級生の人とかは来ないの?」

「時間を決めて、委員が持ち回りで業務の当番をしているんです。放課後は皆さんやはり忙しいですし、業務と言っても必要種類を受理したり、質問に回答したりするくらいなので。扱いきれない問題の場合は、一旦預かって会議になります。あ、ありました」 

 ようやく、過去の資料を見つけた。

 ファイリングされていて、十冊ほどある。

 資料は過去十年分のミスコンの氏名の一覧、出場者の学年、順位、獲得票数、他にはタイムテーブルもある。

 肝心の衣装とPRについても書かれていた。

 不許可のものも書かれていて、再考し、許可されたものが横に書かれている。

「どうですか? 役に立ちそうですか」

「うん、ありがとう」

 結ノ介と夜子はお礼を言ったが、翠はあまり喜んでいないようだった。

「どうした?」

 翠はおずおずと委員の女の子を見て、

「資料ってこれだけですか?」

「そうですけど、もしかして不十分ですか?」

 結ノ介はわずかに、眉をひそめた。

「これだけあれば、充分だろ」

「そうね。これより前のものはないのかなって、思っただけだから」

 翠はそう言ったが、何か心残りがあるようだった。

 ここにあるのは過去十年分の資料で、翠はそれ以前の資料のことを言っているらしい。

 委員の女の子は申し訳なさそうに、

「もう少しお時間いただけますか、探してみますね」

 再び資料を探し始めた。

 夜子は資料に目を通しながら、

「これって持ち帰ったり、コピーしたりできるんですか?」

「それはちょっと……、私の一存では。他に見たい人がいるかもしれませんし」

「そうですか。無理言って、ごめんなさい」

 夜子はにこやかに謝った。

 三人で、必要に応じてメモをとり、資料をチェックしていく。

 衣装はやはり、ドレスが多い。

 明るい色で瀟洒なものだ。

 仮装大会のようなものもあるが、結果を見ると奇をてらうのは、良くないようだ。

 その他にも衣装はさまざまで、市販と自作に関わらず、自由度の高さが窺える。

 中には、ウエディングドレスもあった。

 お金はあまりかけられないから、大規模なアパレルショップで多くの種類を見て、金銭的に見合うもので、かつデザインも良さそうなものを選ぶことにする。

 PRは分かりやすいものが、好まれるようだった。

 特にダンスやお芝居など、見栄えがするものが良いらしい。

 マニアックなものや、地味なものは評価されにくそうだ。

 その後結局、ここにあるもの以上の資料は見つからなかった。

「すみません、お役にたてなくて」

「いやいや、手間かけさせちゃって、ごめんね」

「そんなとんでもないです、本当にすみません。資料は責任を持って探しておきます」

 翠はお礼を言うが、依然として浮かない顔だ。

「そんなに古い資料が見たいのか?」

「そういうわけじゃないけど、」

「歯切れが悪いな。何だよ、考えてることがあるなら教えてくれよ」

 翠はなかなか切り出さない。

「何でもないの。本当に、気にしないで」

 追及しようとして、結ノ介はやめた。

 自分だって、黒凍に言ってないことがあるだろ。

 委員の子は夜子を見て、

「ミスコン、頑張って下さい」

 作業の不慣れさから、出場者の把握もしていないと考えられる。

 出場者同士が仲良くしているとは考えにくいから、片方は付き添いだと思ったのだろう。

 結ノ介が小声で「気にするなよ」と言うと、翠は「だいじょうぶ」と笑った。

 三人はお礼を言って、委員会室を後にする。

 歩きながら夜子が、

「衣装のことなんだけど、明日三人で見に行かない? 大きなショッピングモールに行けば洋服屋さんがあるし、衣装になりそうなものあるんじゃないかな」

 結ノ介は首肯によって快諾を示したが、翠は「そうだね……」と力なく頷いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。