Initium
私の最も近くに居た存在は人間とは言えない、その概念を超越した存在だった。彼女はこの邦では珍しい銀の嫋やかな髪に全てを見透かしているかのように澄んだ深い深海のような深い群青の瞳、透き通った白い肌を持っていた。彼女はこの邦では神と崇められ、王かのように統治し、それであって国民的トップスターかのように民に慕われていた。悠久の時を生きてきた彼女は人ならざる能力を持ち、物語の脚光を浴びる存在だ。このように宣う私はと言うと、これまた面白いことに凡庸とは程遠かった。私の容姿は常人のそれとは一線を画す醜悪な容姿だった。その見た目はかのフランツ・カフカの著書『変身』に記されるウンゲツィーファかのような風貌……いや、この体は肌が融解し常人の数倍の目が体の至る所に疎らに散らばり羽虫のような羽が右側から背中を穿いて陽の光を受けていた。この気色の悪い体で、私はこの世に堕ちたその日から拒絶の日々を浪費してきた。それ故なのだろうか……他人の身体に須臾の間、乗り移ることが出来る異能を手に入れた。ほんの少しだけだとしても神になれば私の中の何かが変わる。そんな根拠のない予感がし、私は彼女の身体に乗り移ろうと考えた。この思い付きが私を今までの人生以上に苦しめることになるとは考えもしなかった。それほどまでに短絡的な思考になるほど私の人生は詰んでいたと思っていたのだ。




