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(4月6日付けの手紙)

学園で授業が始まります。

お母さん


 今日から本格的に授業が始まりました。

 

 購買のおばちゃんが言ったとおり、お貴族さまは予習ができてるようです。

 基本的なことなら、教科書に書いてないことでも知ってます。

 

 私とパメラは、購買のおばちゃんのアドバイスどおり、一通り教科書を読んで授業に臨みました。


 教科書がたくさんあるので、ここ数日、他の生徒がおしゃべりしたり、校内を散歩したりしているのを横目に、部屋にこもって読みまくったんです。消灯時間すぎても、こっそりランプを付けて、睡眠時間を削って頑張ったんですよ。


 でも、頑張った甲斐はありました。

 

 つくづく読んでいて良かった、と思いました。

 多分、読んでなかったら、話に付いて行けなくて目も当てられなかったことでしょう。


 ただ、最低限の予習ができてはいるものの、あの人たちと対等なレベルになるにはまだまだです。

 

 

 見てらっしゃい!そのうち抜いてやるんだから!


 次からは、図書館で関係書籍を借りて、それを読んでから授業に臨もうと思います。

 


 

 ところで、今日の授業で魔物生物学の先生は教科書に書いてないことに言及しました。先生ご本人の研究課題だそうで、通説を批判しての先生の仮説(少数有力説)を説明してくれたのです。

 これは、クラスのほとんどが知らないことだったようです。

 この学園はレベルが高いんです。学園に隣接して国立魔法研究所があって、そこの研究員が授業を行うこともあるからです。

 それで、ときどき、このようなことが起こるのかもしれません。


 ただ、通説にしろ少数有力説にしろ、私には知らないことでした。そもそも、そういう議論があることさえ知りませんでした。

 授業でノートをとるのは、もちろんですが、一度、先生の書かれたご本を読んで、自分なりに考えてみようと思います。


 こういう一つ一つの積み上げが、ステータスを上げてくれるような気がするからです。


 

 周りを見ていると、貴族の生徒みなさまは、ほとんどノートをとらないようです。今はまだ知ってることがほとんどなので、必要ないのでしょう。

 でも、そのうちに知らない知識ことが出て来たら、足元をすくわれかねません。


 

 ま、私にとっては他人事ひとごとですけど。



 授業の中に『セクレド王国史』というのがあって、その中にベネディクト州の歴史に関する記述があるんですが、昔からベネディクト州には、魔力保有量の高い子供が生まれることが多かったようです。

 というのも、そもそもベネディクト州は何世代か前の王弟ウイリアム殿下が臣籍降下してできた州なのですが、そのウイリアム殿下の魔力保有量が無茶苦茶多かったらしいんです。それで、『類は友を呼ぶ』の諺どおり、殿下の周りに魔力保有量の多い人たちが集まったんだそうです。

 で、ウイリアム殿下改めウイリアム公爵閣下が、これも魔力保有量が膨大な娘のマリアンナ嬢のために創ったのが、この学園だということです。


 今回の情報源は、パメラじゃなくて『ベネディクト州史』でした。




 その他、魔力制御のための魔法学の授業もあるのですが、これは、座学と実技の両方あります。

 

 実技の授業は興味深かったです。


 教科書に「自分の中に存在する魔力を感じてみましょう」

って、書いてあったんですが、あれって、森の魔女おばばが子供の手を握って、

「ほうれ、何か感じんか?暖かい流れが見えるじゃろう?

 それが、お前のエネルギーじゃ」

って、やってたのと同じだと思いませんか?


 村では、ほとんどの子が、おばばのおかげで、体の中を流れる何かを意識できていました。

 あれって、魔力の流れの意識だったんですね。



 森の魔女おばばは、結構すごいことをやっていたんだと、今頃知りました。

          

 で、今日、その授業があったんです。ジャジャーン!!!


 

 おばばが教えてくれたことが、学園ここでどのぐらい通用するか、パメラも私もワクワクドキドキでした。


 二人して、顔を見合わせて頷きあい、先生の「じゃあ、やってみなさい」の声で、おばばに言われたことを思い出しながら、慎重に体の中を探りました。

 おばばがいつも両手で見えないボールを作って、ボールの中に念を込めるような感じでフワフワさせていたのを真似てみたんです。



 実は、教科書を読んでから、パメラと一緒に、おばばのやり方を思い出して、あーでもないこーでもないって、やってたんです。


 で、何とか格好がついたね、これってどこまで通用するかなって、言ってたんです。


 できてる生徒を褒めながら生徒の間を見て回っていたトマス・ロックフィールド先生(魔法学の先生で担任です)が、

「パメラもエヴァも良い感じだね。

 ここまでできているんだから、今後は、魔力を練る練習をしてごらん。

 毎朝5分から10分で良いから、体の中で意識的に魔力を回すんだ」

って、言ってくれたんです。


 やったね。って、パメラと喜んでたら、どこからか棘のある言葉が降って来ました。


「どうせ、まぐれだろ?

 ちょっと褒められたぐらいで調子に乗りやがって。平民風情が……。

 みんな、小さいときから練習してるんだ。平民のポッと出が出しゃばるんじゃない」


 驚いて声の方を振り返ると、魔力保有量が多い貴族の中にも魔力の流れを意識できていない生徒が何人かいるのに気が付きました。


「今のは、誰だ?

 心配しなくても、君たちの魔力保有量だったら、毎朝5分も訓練をすれば、2週間程でできるようになる。

 他人ひとのことを貶める前に、自分のレベルを上げる努力をしろ」



 やっぱり、嫌な学園です。

 授業が終わってから、パメラが私の頭を撫でで慰めてくれました。


                            4月5日




エヴァは、貴族が嫌いになりそうです。

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