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(10月12日付けの手紙)

たまには、勉強の話も書こうと思います。

お母さん


 今日は、勉強のことを書きますね。



 後期のセクレド語の授業は、戯曲です。

 

 リンダ先生が、有名な劇作家のワーズリーのいくつかの作品を、あちこちつついて分析してくださるんです。


 お話自体は、有名なのが多いから、旅芝居の一座で見たことあるのもありますし(ユーグレンのお祭りでお母さんと一緒に見たあれです)、絵本になってるのもありますから、セクレド人ならみんな知ってる内容です。


 ただ、ワーズリーが書いた戯曲は、言葉遊びと言うか、声に出して読むと音の響きが美しいテクニックが多用されていて、言い回し自体が独り歩きしていることを、授業を聞いて知りました。


 例えば、戯曲の中の台詞で「韻を踏む」とか、「対比」を使うとか、「反復する」とか、季節感を出すためのキーワード(植物、鳥、動物等です)を使うといったテクニックを延々と説明してくださるんですが、私にすれば、そんなテクニックなんかどうでも良くて、要は、報われない恋に悩む男性が、月に向かって、相手の女性のつれなさを嘆いているだけなんです。


 軟弱な男だ、そんなに好きなら、告白して玉砕すれば良いのにって、思うんです。

 そりゃ、失恋するでしょうが、きっと、その後で、別の恋ができると思うんです。


「新しい恋ができなかったら、どうするの?」って、パメラに訊かれたけど、「その時はその時よ」って、答えておきました。


 

 そんなもんでしょ?

 

 

 貴族の令嬢は、総じて、恋愛に積極的なわりに、失恋を恐れます。

 

 エリザベートさまが、失敗を恐れて、不得手なことに手を出さなくなってるって、前に書きましたが、他の令嬢も似たようなものです。


 

 ワーズリーの戯曲に出て来る登場人物の多くは、ただただ、家の事情や、相手の事情を口実に、悶々と悩んでいるだけで、何もしません。

 時たま勢いで無茶苦茶する人が出て来ますが、破滅するか、ものすごく変わった人物として描かれたりしているんです。

 

 そんなんで、恋が成就するはずがないのです。



 

 でも、そんな優柔不断な男の話が、我が国の超有名な戯曲となると、話は変わって来ます。



 話の中味はさておいて(ここ、大事なところです。あくまでも中味は気にしないんです)、皆さまの平素の会話の端々に、ワーズリーの台詞が引用されるんです。

 

 私もこの半年で、皆さまがワーズリーの台詞を引用するのを何度も耳にしました。

 

 

 今回、リンダ先生が講義してくださるおかげで、「あの時〇〇さまが使ってたのは、この台詞ことだったのか」と、腑に落ちるんです。




 正直言って、学園に来るまで、ワーズリーは子供用の簡易版で読んだだけで、本物(古文で書いたもの)を読んだことがありませんでした。

 

 初めて読んだんですが、あらすじは、たわいもないんですが、言葉の流れが美しいんです。全編、劇が詩でできているみたいなんです。

 

 エリザベートさま辺りが読まれると、本当に音の流れがキレイでうっとりします。



 今回の授業で分かったのですが、どうやら、ワーズリーの台詞を臨機応変に使いこなすことが、貴族の方たちの教養を測るメルクマールになってるようです。


 

 良い勉強になりました。



 リンダ先生が、この時期、ワーズリーの作品を教えるのは、文化祭で演劇部がワーズリーをるからです。


 どの劇にするかは、年によって違うそうですが、貴族のたしなみとして、ワーズリーの台詞を日常生活の中で空で言えることが求められている以上、どうせるならワーズリーをってことになって、リンダ先生がワーズリーをレクチャーしてくれているんですって。


 ちなみに、演劇部の顧問はリンダ先生で、先生の指導のおかげで、文化祭の劇は毎年好評なんだそうです。


 

 

 次に、数学ですが、前期は関数だったんですが、後期は図形になりました。


 平面は分かるんですが、立体(三次元)になると、かなり難しくて苦労してます。

 

 ハドソン先生によれば、センスの良い生徒はピンと来るそうですが、私はあんまりセンスが良くないみたいです。

 でも、センスが良くなくても、訓練すれば、学園の授業には十分付いていけるそうなので、頑張ります。



 フォード先生の保健の時間は、後期は、薬学の基礎に入りました。


 この授業で良い成績を取らないと、2年の選択授業で薬学を取れないそうなので、頑張って勉強しようと思います。


 ただ、薬学の基礎って、よくある疾病やケガとその対応策と基本的な薬の説明なんです。


 薬草なんか、知ってることもあって、ちょっと得した気分です。



 パメラなんか、「エヴァ、ずるい!」って言うんです。

 テレサは、「怪我なら詳しいんだけど、疾病はな……」って、心細そうですし、

 マーサは、「エリクサーがあれば、何でも治せますわ」って、他力本願なんですが、ちょっとした風邪でそんなものに頼るなんて、おかしいんです。

 スーザンは、「主治医が何とかしてくれますので、大丈夫」って、こっちもマーサ同様他人ひと任せなんです。



 周りを見ると、ご令嬢ご令息の皆さまは、町を歩くときは護衛を連れて歩くそうですし、同様に、病気やケガに対しても、お医者や薬師にお願いするだけのようです。


 だから、フォード先生の保健の単位をとるのは、結構大変そうです。



 ホルムハウト語の時間は、前期で読み書きができるようになったので、授業は免除になりました。

『ホルムハウト王国の地理と歴史』というレポートの提出で、単位をもらえるそうです。

 そういう扱いになったのは、エリザベートさまとジークと私の3人だけです。


 これも、行商のおばちゃんたちのおかげです。

 今度会ったら、おばちゃんたちによろしくお伝えください。 



 


 肝心の魔法学の時間なんですが、座学では、着々と魔法に関する知識を増やしています。

 

 私は、例の三つの魔法陣をギルドに登録したので、座学では、プラス評価が付くそうです。

 

 ラッキー!

 

 あの三つの魔法陣で、手紙がタダで送れる(しかも早いんです)し、マジックリュックもタダで作れたし、印刷も超簡単になった上、ギルドに独占的に売ってもらうことで、結構儲かってるんです。

 その上、成績まで配慮してもらえるなんて、超ラッキーです。



 男爵令嬢ズが、羨ましがること羨ましがること。


 でも、「頑張ったのは、エヴァだから」って言ってくれるんです。


 良い友達です。



 ケント会長は超ブラックな人です。


 ギルドで儲けてるんだから、生徒会のためにタダで使ってくれ、ですって。



 いろいろあるけど、学園は文化祭に向けてまっしぐらです。

 

 勉強もしてるけど、皆さま、どっちかというと、上の空です。

 先生方も文化祭が終わるまでは仕方がないと諦めているようです。


 私は、男爵令嬢ズのお手伝いぐらいで、通常営業なんですが……。 


 

 村が近かったらお母さんを文化祭に招待できるのに、遠いから残念です。



                     10月12日


            文化祭より勉強に精を出す エヴァ











他の皆さんは、勉強そっちのけで文化祭に生きてるんです。

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