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(10月7日付けの手紙)

生徒会雑用係の現在の仕事の話です。

最初、日付を3日にしてたんですが、申し少し後の方が良いようです。7日に変えさせていただきました。申し訳ありません。

お母さん


 私たち生徒会雑用係は、印刷業務だけ担当することになってたんですが、印刷そのものが例の『分身魔法』の魔法陣を使うことで超簡単になってしまったので、他の仕事も請け負うことになりました。


 最初は、印刷が簡単になったから、雑用係は要らないんじゃないかと言われたんですが、男爵令嬢ズが、生徒会との縁を切りたくないから、と頑張ったんです。


 あのインクまみれの状態で頑張ったのに、作業が簡単になったとたん、お払い箱になるなんて許せなかったみたいです。


「エヴァも不当だと思うでしょ?」って言われても、別に生徒会に未練がある訳でもないから、「どっちでも良いよ」って答えたら、「どっちでも良いなら、私たちの味方になって」って言われて、今日に至ってます。


 つまり、生徒会雑用係は、新学期に入って、『生徒会だより』の印刷以外もするようになったんです。



 何をしているかと言うと、簡単に言うと『文化祭準備のお手伝い』です。



 今までの生徒会は、文化祭の準備で、あちこち走り回っていたそうです。


 というのも、催し物を計画するとき、何時、どこで、誰の許可が必要か調べて、その許可を取って来るよう指導してたらしいんですが、催し物の責任者は、大抵どんくさくて、結局、仕事を頼まれることになったそうです。


 例えば、魔法実技の発表会だったら、訓練場の使用許可が必要ですし、立ち会ってくれる教師も必要です。それで、校舎の管理係に使用許可を取りに行ったり、魔法学の先生に立ち合いをお願いしに行ったりしたそうです。その上、発表会を宣伝するビラの印刷や配布といった雑用を頼まれたり、もろもろにかかる費用について生徒会へ予算を請求するんですが、その事務処理も頼まれてたんですって。


「何で、自分たちへの予算請求を代行しなけりゃならないんだ?自分のことは、自分でしろ!」

って、会計のネイサンさまが怒ってたくらいです。

 だから、ネイサンさまは、今年は、絶対、予算の請求にかかる事務は、催し物の責任者にやってもらうって、息まいてたんです。



 でも、やってもできないことを強いるのは、無茶で無謀です。

 

 そんな人の代わりに生徒会雑用係が代行してあげた方が早くて正確なんです。



 だって、そういう雑務を催し物の責任者に任せても時間がかかるだけです。結局、生徒会役員が逐一指導しなけりゃならないことになるからです。

 却って、手間と時間がかるんです。



 例年の悲惨な状況を聞いて、最初にマニュアルを作って、責任者を集めた説明会を開き、後は、生徒会雑用係が些末な事務の代行をすることを提案したんですが、皆さま、目から鱗だったみたいで、今年は、説明会とマニュアルと代行のおかげで、生徒会役員にかかる負担がかなり少なくなりました。



 我々雑用係は、個々の生徒会役員に聞き取りをして、マニュアルにまとめたんですが、驚いたことに、役員の皆さまは、自分の担当した仕事については熟知していても、他のメンバーの仕事についてはお手上げの状態だったのです。


 生徒会役員がこのていたらくですから、文化祭で責任者に抜擢された方たちの実力は推して知るべしです。


 

 ということで、私たち生徒会雑用係は、生徒の皆さまが気持ち良く文化祭の準備に邁進できるよう、裏から支える仕事をしているんです。


 いろんな催し物があって、それぞれの責任者の相談にのり、用事を頼まれることで親しくなれることから、男爵令嬢ズは大喜びで走り回っています。



 だから、そういう仕事は彼女たちに任せて、私は彼女たちが引き受けて来た印刷物の印刷や必要な道具なんかの購入といった孫請けに徹することにしています。


 その方が彼女たちの恋のチャンスが増えると思うからですが、私が出歩くと、ご令嬢たちのやっかみがひどいからでもあります。



 男爵令嬢ズが生徒会の指導の下、さまざまな催し物のお手伝いをしてるおかげで、例年より、作業が円滑に進んでいると好評なんですよ。



 生徒会役員にとっては、いろんなことに振り回されなくなったので、例年よりかなり楽になったと、ケント会長からお礼を言われました。




 まさに、瓢箪から駒です。

 別に、そんなことを意図したわけじゃないんですが、喜んでもらえるなら、OKです。



 ところで、クラスで文化祭の出し物を決めるときも思ったんですが、どうやら、ほとんどの生徒が入学前に学園の文化祭に来てるんです。


 初等学校のとき、進学先として見学がてら遊びに来たようで、今年も、学園を進学先に望む子供たちが大勢来るだろうとのことです。


 そんなこと言われても、それはお貴族さまの話であって、平民には、そもそも学園へ進学するという気はないわけで、私のように、突然、何かの都合によって入学するってのが、ほとんどなのです。

 

 

 ジークはどうかと訊いたら、ジークも病気がちだったので来たことがないんですって。

 他の貴族が当たり前のように文化祭のことを話すのが分からないと言ってました。



 まあ、子供が志望校の見学として来るなら、ほどほどに接待しておきましょう。


 



 

 みんなが忙しそうに文化祭の準備をしている今日この頃、ジークは、相変わらず、理事長室で執務をしています。


 彼は、とりあえず授業は出てるんですが、放課後は、晩餐の時間まで理事長室に囚われています。


 マーサが、「どこかのお姫さまみたいね」って言ってました。


 その言い方が、あんまりおかしかったんで、男爵令嬢ズと一緒に大笑いしました。

 

 ゴメン、ジーク。あなたが置かれている状況・・を笑ったんで、あなたを笑ったんじゃないんです。



 

 そうそう、今日、放課後、シールド侯爵にお会いしました。

 

 管理棟に応接室というのがあって、来客があるとそこで応対するんですが、担任のロックフィールド先生に呼ばれて行ったら、待っていたのが、ケント会長のお父さまのシールド侯爵さまだったんです。


 侯爵は、ジークが私に懐いていることをケント会長から聞いているようで、私の品定めに来たんです。


 とりあえず、自己紹介をしたんですが、私が生っ粋の平民だと知ると、真面目な顔で言ったんです。



「ジークフリートさまは、ベネディクト家にとって大切なお方だ。

 今は、気安くお付き合いできるかもしれんが、身の程を弁えて、失礼のないようにな」


 まあ、これが普通の貴族の反応なんでしょう。


 パメラ風に翻訳すると、


『ジークフリードさまは、ベネディクト家の当主だ。

 お前ごとき平民が付き合える相手じゃない。身の程を弁えて、お付き合いを差し控えろ』


ってことになるんでしょうか。



 だから、言ってやったんです。


「ジークさまの寛大なお心のおかげで、平民の私でも対等にお付き合いさせていただいています。

 卒業したら、そういうことはないと思いますので、今現在を楽しく過ごさせていただこうと思ってます」と。


 翻訳すると、


『知ってるよ。ジークは、私が平民だって気にしないで付き合ってくれるんだ。

 卒業後のことは分からないけど、今現在は、邪魔しないでくれる?』


って感じでしょうか。


 


 母さん、私だって、お貴族さまの言葉を使えるんです。

 伊達に半年も学園にいたわけじゃないんです。


 

 一瞬、憮然とした表情になったんですが、すぐに平然と取り繕ったのは、さすがお貴族さまでした。


 でも、侯爵もケント会長の親だけあって、真面目で、融通の利かない人でした。



 しかも、ジークがベネディクト家当主として、同家創設以来のミッションに挑んでいるのに、それを知らないせいで、彼を普通の領主に育てようとしてるみたいでした。


 侯爵は、悪いお人じゃないんですが、ベネディクト家の野望をご存じないんです。

 だから、ジークの安全を配慮するあまり、自分の行動が彼の手足を縛ることに気付かないんです。


 ケント会長と同じです。




 真面目で良い人なだけ、このボタンの掛け違いのような関係が悲しくなります。


 これから、誰かが傷つくことになるんでしょうか。



 あんまり巻き込まれたくない話です。



                        10月7日


        シールド侯爵と喧嘩するかもしれない エヴァ   







今のところ、ジークはシールド侯爵の指導を受け入れていますが、そのうち反抗期が来るんでしょうか?

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