(4月4日付けの手紙)その3
少し短いですが、日付ごとの方が読みやすいと思うので、ここで切ります。
ところで、購買で教科書を買うとき、ちょっとした事件があったんです。
貴族の皆さま(自分で列に並んで買うのは圧倒的に男爵家の方たちですが、たまに伯爵家の方もいました)が、当然のように順番に割り込んだのです。
入学式の後で、教室で選択授業の説明を受け、必要なものを買いに行くんだけど(この間に私は13人から教科書とノートの購入を依頼されて、プンプンでした)、自分の分を含めて14人分を買いに行こうと、販売予定時間の少し前に売り場へ行くと、エリザベートさまの侍女と思しき人と生徒が2人並んでいました。
で、その後ろに並んだんだけど、後からやってきた貴族が、当然のように私の前に並ぶのです。
あまりにも自然で、あっけにとられているうちに販売が始まり、その時には、私の前に10人ほどの列ができていました。
割り込みが7人……。
最初に抗議しなかったのが、失敗だったようです。
仕方がない。
と、思っていたら、列がはけそうになると、別の人が当然のように割り込むのです。
失礼しちゃう!
さすがにパメラは割り込まなかったけど、情報取集でお世話になってる男爵令嬢の一人と意気投合して盛り上がってたので、面倒になって譲りました。
だって、私は14人分も買うから時間がかかると思ったんです。
最終的に、私は最後になりました。
結局、最初に並んでいた3人以外全員に抜かれたことになります。
購買のおばちゃんは、どの科目を選択するのか、その場合、必要なのはどの本か、と、一人一人確認しながら売っているわけで、たくさんある選択科目が一人一人違うことから、買う教科書も一人一人違うわけで、当然、支払う代金も一人一人違っていて、それを一人ずつ計算するわけで、ものすごく大変で時間がかかってたんです。
しかも、私が買いに行ったのは14人分でした。
おばちゃんが、
「待たせて悪かったね。この学園じゃ、貴族が偉そうにするのが当たり前だから、気にしないで頑張るんだよ」って言って、とびっきりのアドバイスをしてくれたんです。
それは、
「最初の授業は先生と生徒の顔合わせっていうか挨拶みたいな感じで終わることが多いんだけど、本格的な授業が始まる前に、買った教科書に一通り目を通しておいた方が良いよ」
って、ことでした。
貴族は、初等学校や家庭教師のおかげで予習できてるから、そんな連中と同じ授業を受けようと思ったら、最低限教科書は読み終えておく必要があるというのです。
ものすごく説得力があったので、部屋へ帰ってから、必死のパッチで教科書を読みました。
心の支えは、あのおばちゃんの励ましです。
「最初は、お貴族さまの方が成績が良くったって、1年も経ちゃぁ毎日頑張ってる平民の方が成績が良くなるってもんさ。
腐らないで、勉強するんだよ。
ほら、頑張るあんたに、これをあげよう」
何をくれたと、思います?
可愛い袋に入ったレモンキャンディでした。
例年、平民の生徒が苦労しているのを知ってて、買っといてくれたんですって。
とっても、良い人でした。
食べ物に釣られる娘だって、言いっこなしです。本当に良い人だったんですから。
嫌なことも多いけど、良いこともあります。
来て良かったと思います。
4月3日
エヴァは受難続きです。