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「グラスの中で氷がカランと響いた。」

知り合いからお題を頂き、それにそってショートストーリーを書くっていうもので書かせて頂いた作品です。

随分前の作品ですが楽しんでいただけると幸いです。

グラスの中で氷がカランと響いた。

気怠げに瞼を開ける。硬いソファーに沈んだ体が重く、ため息を吐き出した。

変わらない仕事、変わらない交友関係、変わらない毎日から抜け出したくて、普段行かないような高そうなホテルのBARに足を踏み入れた。

かといってカウンターで飲む気にもなれず、適当に酒を注文してボックス席でちびちびとグラスの中身をあおっていた。

いつの間にかソファーに身を預けてぼんやりしていたらしい。

飲み干したグラスの氷が溶けだして、水に変わっている。

もうそろそろ次を頼まないと怪しまれるな。

バーテンに声をかけようとした所で、店の照明が落とされ、店の中央にあるステージにスポットライトが当てられた。

アマプロのジャズミュージシャンが演奏を始めた。

黒いスーツを着こなした男性奏者の心地のいいサックスの音色に合わせて、真紅のタイトドレスを着た女性ヴォーカルの低音が伸びやかに響きわたる。

BARの客も、店員も手を止めてミュージシャンの演奏に聞き入っている。

シックな雰囲気の中、ジャズが終演を迎えた。

割れんばかりの拍手が響いた。私も申し訳程度に拍手を送る。

一瞬、女性ヴォーカルと目があったような気がしたが、気のせいだったろうか。

そして、目があった瞬間、私の内側で何かが音を立てたような気がした。

それから私はこのBARに通いだした

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