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ギラギラしたお守り

 ご飯を食べながら考えた。

 我が家のガキィちゃんにとって大切なのは何だろうかと。幸いにも我が家には食料と水と体温を維持する寝床があるので、これより先は人間性を維持するための行動が取れる。

 そうしなければ我々は欲しいものを力で奪われ、弱いものが泣きをみるように生きるようになる。


 仲間には、俺のような体格がないので、身を守るのにそれなりの道具が必要となる。


 倉庫をあさって目的の物を探すのに一時間ほど。銀色の細身のナイフを見つけてきた。


 その瞬間大きな地震があって、家中がグラグラと揺れる!どうなってるんだ畜生!


「農家さん生きてる!?」

「机の下に入ってろ!」


 やがて地震は収まった。家の外の電柱にとまったカラスが警戒音で鳴いて仲間に異常を知らせている。


 これだから身を守る術を身に付けなければならないのだ。


 嫌だが。しょうがない。


 人に襲われるのは、災害にあったと思うのが近しいと思う。こちらの言葉を聞いていただけず、そればかりか、自分の不利益を押し付けられるのだ。


 故に、自分の身を守る手段が必要となる。

 間違わないで欲しいのだが、日本では護身用としてナイフを携帯することはそれだけで違法となる。逮捕される原因となりうるのだった。


 家の階段を上がって、薄暗い六畳間のほうに入る。

 カーテンは締め切られていて埃っぽい。足元に折り重なったぬいぐるみの山から、漫画が埋もれるようにして顔を出している。


 最近のガキィちゃんの居場所はクローゼットの上、蜜柑箱のそのまた奥のわずかな隙間に身体を隠して、目だけをこちらに向けているのだった。


 昔、一時を共に過ごした猫がそうしていたのを思い出す。


 手のなかで、銀色の刃物をちらつかせると、瞳の正体が、ドスンと飛び下りて目の前にやってくる。


「これは、スパイダルコのポリスって言うナイフだよ。ハンドルはステンレス。刃もステンレスだけど凄く切れるから気をつけて。背中のロックをはずすと刃が仕舞える。」


 実際にやって見せ、握らせる。

 俺が自分のナイフを持ったのは14歳の時だった。もうガキイちゃんも大丈夫だろうと思う。少し早いがクリスマスということにして、まずは持たせることが大事なのだった。


 自分で使ってみて、手を血だらけにしながらナイフで刺すと痛いってことを覚えてもらう。ちゃんとした使い方は本人が見つけるか、聞いてくるまで待てばいい。

自分の事を思い返せば勉強もそうだ。宿題を押し付けられてもやらない人はやらない。


 振り替えると、引戸にしがみついたダンゴムシ君がギリリと奥歯を噛みしめこちらを見ている。

 何だ君も欲しいのか。だが、俺は、あんまり折り畳みナイフを持っていないのでデカイのしかないのだが。


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